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リアクション
「落とさないようにゆっくりゆっくり」
清泉 北都(いずみ・ほくと)は男の子達と一緒に大きな雪だるまを作っていた。
ちょうど、今は最後の段階。みんなで体を支えて頭を載せるところ。
「よいしょ〜」
無事に体と合体し、一段落。
「ほら、完成。最後に……」
子供達が持って来た顔のパーツを埋め込んで完成。
目は苺で口はバナナで鼻はオレンジ。腕代わりの枝を刺して用意した手袋を嵌めてやる。
しかし、完全に終わりではなく、北都は何かを作り出した。子供達は興味津々で見守っている。
「お兄ちゃん、すごぉい!!」
完成した物を見た子供達は一斉に歓声を上げた。
目の前には車両が三つ付いた小さな汽車があった。
「……ほら、出発だよ。順番に」
褒められるのが苦手な北都は反応に困りながらも『魔法の粉』を汽車にふりかけて子供達を順番に並ばせた。
大きな雪だるまはちょっとした駅代わりとなった。
子供達は次々に車両の上に座っていく。
出発した汽車は園庭をぐるりと走った。
「はい、可愛がってあげてね」
ミリア・アンドレッティ(みりあ・あんどれってぃ)はアリス・ウィリス(ありす・うぃりす)と一緒に動く雪の子犬を作って魔女の女の子にあげていた。
「ありがとう!! おいでシロちゃん」
家の事情で犬を飼うことができない女の子はすごく喜び、名前までつけて子犬と走っていった。
「ミリアさん、良かったねぇ」
アリスは嬉しそうに女の子を見送っていたが、その視線はすぐに面白いものを発見した。
「ミリアさん、見て見て汽車だよ。汽車! 大きい雪だるまもあるよ」
園庭をゆっくりと走る小さな汽車を発見。子供達を乗せた汽車は駅と思われる大きな雪だるまがある場所で止まっていた。
「ちょっと、アリス」
すっかり楽しんでいるアリスを保護者役のミリアは急いで後を追った。
「すごぉい。これ、あなたが作ったの? 私も乗りたい」
目的地に着くなり、アリスは子供達の相手をしている北都に興奮の混じった声で言葉をかけた。すっかり乗ることで頭がいっぱいのアリスは小さな汽車を楽しそうに眺めている。
「……あの、乗っても大丈夫?」
すっかり汽車に夢中になっているアリスの代わりに男性が苦手なミリアが乗車を訊ねた。
「大丈夫だよ。順番に並んでね」
北都は乗車禁止の理由は何も無いのであっさりと許可をした。
「分かった。ね、ミリアさんも乗ろうね」
いつの間にか答えを聞いていたアリスは最後尾に並んで、ミリアを手招きした。
「はいはい。翠は……」
アリスの所に行きながら、及川 翠(おいかわ・みどり)の様子を見た。先ほどまで子供達と動く雪だるまで遊んでいた彼女は今、イリア・ヘラー(いりあ・へらー)と何かしていたが、暴走は無いのでアリスに付き合うことにした。
「イリアさん、私にもたくさん鳥さんを作って欲しいの」
先ほどまで動く雪だるまで遊んでいた翠は、様々な動物を作っているイリアが気になり、声をかけた。
「鳥?」
「一緒にみんなと飛ぶの。絶対に楽しいの」
何に使うのか不思議に思ったイリアに楽しそうに翠は答えた。
「お任せあれ。たくさん作るよ。イリアの作る鳥は本物の鳥より可愛いんだよ。見ててよ」
イリアは早速、愛らしい小鳥を一羽作り上げた。
「うわぁ、かわいいの。もっと欲しいの」
「よーし」
翠の要望に応えてどんどん小鳥を作っていく。何人かの園児達も好奇心の目で見守っている。
「ありがとう、イリアさん」
出来上がった小鳥を満足そうに眺め、イリアに礼を言った後、『空飛ぶ魔法↑↑』で雪の小鳥は空を飛んで行く。
空を飛ぶ小鳥に子供達は興味津々。
「ほら、みんなも一緒に空を飛ぶの。シュウヤ君も」
翠はルファンに励まされたシュウヤが鳥に興味を示しているの察して呼んだ。
「……うん」
呼ばれたシュウヤは翠の側に来た。
「それじゃ、行くの」
翠とシュウヤ達は小鳥と一緒に空を飛んだ。
子供達はすっかり楽しんでいる。
「……すごい」
シュウヤも楽しむが、感嘆の声は他の子より小さかった。
「うわぁ、汽車だよ。あ、お姉ちゃんにアリスちゃん」
翠は園庭を走る汽車を発見し、子供達と接近し、汽車に乗っているアリスとミリアを発見し手を振った。
「あ、翠ちゃん」
翠に気付いたアリスはあっという間に空へ。
「翠、アリス、遠くに飛んで行っちゃだめよ。二人ともはしゃいじゃって……」
ミリアも急いで空へ。はしゃぐ二人を見張って遠くに行かないように誘導するために。
「ありがとう、お姉ちゃん」
ヴァルキリーの女の子は自分をかたどった小さな氷像を抱きながら礼を言った。
「どういたしまして。他に作って欲しい人はいないかな?」
イリアは女の子を見送った後、他の子供達にも声をかけた。空飛ぶ翠を見送ってから『氷術』で子供達のリクエストでいろんな氷像を作っていた。
「これ作ってよ」
今度は地球人の男の子が五人組のヒーローの図鑑を持ってやって来た。
「ちょっと、待ってね」
図鑑を確認してからあっという間にかっこいいポーズをする五人組を作り上げた。
「どーぞ」
「うわぁ、かっこいい。ありがとう」
渡された男の子は嬉しそうに受け取って友達に自慢しに行った。
「転んじゃだめだよ」
男の子を見送ってから次々にリクエストが入り、たくさん氷像を作ることになった。
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