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リアクション
「あたしがすっごい雪だるま作るからね」
セレンフィリティ・シャーレット(せれんふぃりてぃ・しゃーれっと)はまだ帰って来ない友達のことで少し暗くなっている子供達に陽気に言って大きな雪だるまを作り始めた。
「大雑把で壊し屋なのに大丈夫なの」
転がして雪玉を大きくしているセレンフィリティにセレアナ・ミアキス(せれあな・みあきす)が聞いた。
「作れるって雪だるまぐらい。簡単簡単」
相棒のツッコミに負けず嫌いな彼女は雪だるま作りに全力を注ぎ、セレアナは雪だるまに入れる物とシロップを用意する。ちなみに今日の彼女達はいつもの刺激的な服装ではなくごく普通の服装をしている。
そして、立派な雪だるまが出来上がった。
「ほら、出来たって……あぁぁ」
「そりゃ、落ちるわよ。頭が大き過ぎなんだから」
自慢げに言うも突然、頭が落下し、「壊し屋セレン」の名に恥じない様子にセレアナは呆れたように言った。
「……そんなことないわよ。これは昼寝をしてる雪だるまよ。失敗したわけじゃないんだから。大丈夫だからね。ほら、セレアナ、おいしくしてよ」
作り直せばいいものを負けず嫌いが顔を出してセレアナに言い返してから落ちた頭を寂しそうに見ている子供達に気付いた。
「……すぐに甘いお昼寝雪だるまにするからね」
子供達の様子に戸惑いながらも優しいお姉さんの笑顔で言い、素早くかき氷用のシロップでカラフルにして中にお菓子や果物を入れていく。子供達の表情が少しずつ明るくなっていった。
「……バナナにチョコレートにマシュマロも入れるんだ」
セレンフィリティは、雪だるまの中に入っていくお菓子や果物を食べたそうにじっと見ている。
「……実は自分が甘い雪だるまを食べたいだけなんじゃないの?」
「ち、違うわよ! 子供達が元気になって欲しいから作ったんであって」
セレアナは子供達にスプーンと容器を配りながら熱い視線で雪だるまを見ているセレンフィリティに言うも激しく否定されるが、目は明らかに食べたそうにしている。
「お姉ちゃん達も一緒に食べようよ。甘くておいしいよ。ありがとう」
獣人の女の子が嬉しそうに二人を誘う。他の子供達も同じように言う。すっかり、場は和んでいた。
「うん、食べるよ。ね、セレアナ」
「そうね」
二人も一緒に甘いお昼寝雪だるまを食べ尽くした。
「姉ちゃん、かっこいいな」
「一緒に遊ぼう」
エリセル・アトラナート(えりせる・あとらなーと)はすっかり男の子達のアイドルになっていた。女の子が怖がる蜘蛛な見た目でも男の子には格好良く見えるのだ。
「……はい、遊びましょう。甘い雪だるまを作ります。見てて下さい」
エリセルは錬金術でミニ雪だるまを作った。
「ミニ雪だるま?」
いきなり現れたミニ雪だるまに子供達は驚くばかり。
「これをみんなで大きくして元の大きさになるまで食べるんです。おいしいですよ」
やり方を示すため、少しばかり雪だるまを大きくする。
「うん、やるやる」
「姉ちゃん、かっこいいしすごいなぁ」
子供達はやる気満々でますますエリセルを憧れの目で見る。
そこに思わぬ参加者が現れた。
「……おいしそう」
「誰ですか」
後ろからの声に振り向くと先ほどまで子供達と雪だるまを食べていたセレンフィリティとセレンがいた。雪だるまを食べ尽くした後、エリセルが面白そうなことをしているのを見て思わず、言葉を洩らしたのだ。
「ごめん、ごめん。何か面白そうでおいしそうだったから」
「さっき、たっぷりと食べたのにまだ食べるの」
びっくりしているエリセルに謝るセレンフィリティとそんな彼女にツッコミを入れるセレアナ。
「一緒に食べようよ。きれいなお姉ちゃん」
「参加してもいい?」
子供達の言葉に嬉しくなりながらセレンフィリティはエリセルに訊ねた。
「……いいですよ。子供達も言ってますから」
子供達が楽しそうなのに断る理由はないので参加を認めた。
「ありがとう。よーし、お姉ちゃんと一緒にたくさん食べよう!」
「セレンが迷惑をかけてごめんね」
セレンフィリティは礼を言い、嬉しいことを言った子供の横に移動し、セレアナは邪魔をしたことを相棒の代わりに謝った。
そして、雪だるまをみんなで大きくして食べてあっという間に元に戻った。
そこでセレアナがエリセルに言葉をかけた。
「ごちそうさま。エリセル、ありがとう。ほら、セレン行くよ」
「分かってる。ありがとう、エリセル」
これ以上、エリセルの邪魔をしないために二人は移動することにした。
「いえ、楽しかったです」
引っ込み思案なため場を賑やかにしてくれて良かったと思っていた。
二人を見送った後、再び雪だるまに目を向けると食べ足りない子供が元の大きさになった雪だるまにスプーンを入れようとしていた。
「だめですよ。雪だるまがかわいそうです。雪だるまは私達の友達なんですよ」
エリセルは急いで止めた。
「友達?」
「そうですよ。だから、大事にしないといけないです」
エリセルの言葉に首をかしげる子供に雪だるまの大切さを語り始めた。
「姉ちゃんは雪だるまの友達?」
「友達ですよ。私は雪だるま王国の一員ですから」
好奇心に満ちた目で訊ねる少年にエリセルは胸を張って答えた。ここに来たもう一つの目的を果たし始めた。王国の知名度を上げるという目的を。
「へぇ、すごーい」
子供達はますます感心する。少年達の目にはエリセルは格好良くて雪だるまを作るすごい人で雪だるまのお友達という風に映ったのだ。
「みんなも雪だるまとお友達になって下さい」
「うん、なるよ。お姉ちゃんともお友達だよ」
ミニ雪だるまを手に取りながら言うと子供達はこくりとうなずき、エリセルの手を握って笑った。
「ありがとうございます」
嬉しくて礼を言った。
「キャインッ!?」
狼姿の白銀 昶(しろがね・あきら)はあまりの仕打ちに声を上げていた。
北都が大量に作った動く雪兎を自分の頭の上に乗せて行ったのだ。乗せられた雪兎は背中を滑り台のように滑って巻いた尻尾でくるりと華麗に回転して地面に着地する。
「あいつ、オレの頭の上に乗せやがって!」
昶は文句を言うも子供達は喜び、北都が行った後は、
「すごぉい。もう一回」
そう言ってもう一回は何度も続いて数十回となっているにも関わらず、子供達は飽きずに雪兎を北都がしていたように昶の頭に乗せていく。
「……雪だるまのくせに」
雪の塊の生意気さに腹が立つも壊してしまえば、子供達は泣くだろう。そうなればまた面倒なことになる。どんな冒険よりも厳しい試練を今受けているのだ。
そんな時、
「……ねぇ、水穂おねえちゃんと一緒においしい宝探ししませんかー」
尻尾のもふもふが終わって再び宝探しを再開した水穂は苦労している昶を見かけ、助け船を出した。
「する!する」
あっという間に子供達は水穂の方に行ってしまった。
「……助かったぜ」
子供を連れて行く水穂を見送ってから人の姿に戻り、雪の上に座って一息ついた。
「ん? 何だおまえ、行かないのか?」
ふと側に一人子供がいることに気付き、訊ねた。
「行かない。僕、お兄ちゃんといる。お兄ちゃんすごいね」
獣人の男の子はそう言って彼の隣に座った。
「……まぁな」
羨望の目でみる少年に頷きながら園庭を走る汽車を眺めていた。
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