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リアクション
「???」
雪の色に沈む、林道の奥の番小屋。そこで何やら、先客である祭り実行委員会の男性たちがあたふたと忙しなく動き回っているのを見て、ようやく辿りついたルカルカ、カルキノス、セレンフィリティ、セレアナの四人は訝しげに足を止めて見やる。
「……何かあったのかしら」
ルカルカが首を傾げる。男たちの表情は皆一様に、動揺を湛えている。カルキノスも怪訝そうに、彼らの様子を見る。
「呪術師とやらが、何か問題を起こしたのだろうか」
「いえ……逆ですわ」
突然飛んできたのは、小屋の中から出てきた『妖蛆の秘密』の声だった。四人の視線が彼女に集中する。
「逆、とは」
「呪術師グローシオ氏は……亡くなっておられました」
「ええっ!?」
全員の驚きの声が同時に、山の雪景色を揺るがさんばかりに響き渡った。
山奥で隠者同然の生活をしていた老呪術師は、訪ねてくる者もない番小屋で、看取る者もなくひっそりと亡くなっていた。それがついさっき、祭りの実行委員たちの訪問で発見されたのだ。
小屋の奥の粗末な木の寝台の上に、そこにあったぼろぼろの毛布に委員たちによって包まれて、老呪術師は眠っている。運び出すのもすぐには無理な話だ。
「取り敢えずわたくしがHCで、雪像展示場の衛様に事態をお伝えしました。展示場の戦況にもよりましょうが、手の空いているどなたかによって、街の方々にこの報を伝えていただけるはずです」
そう話す『妖蛆の秘密』に、ルカルカが尋ねる。
「その……死因とかは、何か、分かってるの……かな」
「いえ。見たところ、何か月か前に亡くなったようですので、調べてみないと分からないのではないでしょうか」
「何か月か前!? 本当に!?」
セレンフィリティが驚いて尋ねると、えぇ、と『妖蛆の秘密』は頷いた。
「ということは、街の騒ぎは……」
「彼の仕業ではない、ということ……?」
カルキノスの独白を引き継ぐような形で、セレアナも呆然と呟く。
後発隊の四人は、この怪現象の黒幕はわが子を失った老呪術師ではないかという疑いを、多少の程度の差こそあれ、それぞれに持っていた。その推測がいきなりぽんっと消えてしまった。
雪をふぶかせ森を吹き抜ける冷たい風の音が、突然はっきりと耳に聞こえてきたような気がした。
扉が突然、ばたんっと音を立てて開いた。
「なぁ、ミレリちゃんゆう子、戻ってきてる!?」
ネージュや小さい女の子たちと一緒にトイレに行った、瑠璃羽だった。ただならぬ雰囲気に、水穂と紫蘭、椿と吹雪までもそちらを見た。
「どうしたんですか、瑠璃羽さん?」
水穂の問いかけに、瑠璃羽は表情を硬くして答えた。
「トイレで大勢わちゃわちゃしてるうちに、いつの間にか一人見えなくなってしもて……まさか、出ていってしもたんと違いますやろか……」
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