空京

校長室

建国の絆 最終回

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建国の絆 最終回
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リアクション



空京――シャンバラ宮殿地下

 そこにあったのは喧噪だった。
「違うッ、そいつァこっちじゃねぇ! 馬鹿は体動かす前に三回確かめろ!」
「あ、あー、あ、ちょっと、それはねぇ、すごーくデリケートなのよ。もっともぉーっと大事に――」
「組み上がったヤツから搬入してってください! 同期化なんて艦内でも出来ますから!」
「つか、間に合うのか、これ……。最悪、丸腰で放り出したりしてな」
「はは、したら相撲でもとってきてもらうか」
「――困るなぁ、聞いてたのと規格が違う。これじゃ……」
「阿呆ッ、文句垂れてる間にてめぇの歯でも使え! 時間がねぇんだよ!」
 だだっ広い地下ハンガーだ。
 空母クラスの飛空挺の下を、大きなコンテナや巨大な何かの部位と共に作業着を着たスタッフが慌ただしく行き交っている。
 御神楽環菜(みかぐら・かんな)は、その風景の端で風森 巽(かぜもり・たつみ)から受け取ったレポートに目を通していた。ナラカ城を襲った黒い機体に関するものだ。
「海京で目撃されたのとも同じ機体のようね。だとすれば、やはりエース機と見て間違いないわ」
「偵察隊の話ではこの黒い機体を見なかった、と。まさか、出し惜しみしてるわけではないでしょう
が……」
 巽の言葉を聞きながら、環菜は携帯電話へと目を落とし、
「居ないなら、居ないで好都合よ。連中が油断しているのか、あるいは――」
 と、向こうの方で『新兵器』を見ていたティア・ユースティ(てぃあ・ゆーすてぃ)たちが駆け戻って来て、
「ねえねえ、こーちょーセンセ! あれって、やっぱりボクたちじゃ駄目なの?」
「専門の知識と訓練が必要みたいですから」
 後に続いていた影野 陽太(かげの・ようた)が言う。陽太たちも巽たちも環菜の護衛として、この場に居た。可能なら、新兵器の運用の手伝いをと考えていたのだが――
「現物を見せて頂いて、殊更に分かりました。あれは、とても”特殊”なものです」
「どう足掻いても俺たちにゃ扱えねぇってことか」
 猫井 又吉(ねこい・またきち)が吐き捨てるように言って、
「ごたくはいらねぇ」
 国頭 武尊(くにがみ・たける)が鼻を鳴らした。
「無茶でも無理でもオレは絶対に乗りこなしてみせる。だから、オレにアレをひとつ貸してくれ。世界の事情など知ったことじゃないが――オレにはパラ実S級四天王として、舎弟やその家族を守る義務と責任があるんだよ」
 彼の声はいつになく真剣で、切羽詰っているように感じられた。そちらの方を見やる。
 又吉と武尊……二人は、共に拘束具でガッチリ拘束されていた。
 先刻、武尊はパワードスーツに身を包んで、環菜へと襲撃をしかけて来たのだ。しかし、施設の警
備システムや警備兵、そして、環菜の護衛についていた巽や陽太の手によって割とあっさり拘束されてしまい、現状に至っている。彼らの目的は、自分たちが新兵器を扱うに相応しいことをアピールすることにあったらしい。
「土下座しろって言うならするし、アンタのパンツを被れって言うなら喜んで被る。だからオレに――」
「訓練無しで動かせるモノじゃない。なにより、今はあなたに動かせるかどうか試している時間は無いの」
 環菜は言い捨てて、少し間を置いてから、
「パラ実でも”こういったもの”を開発しているという話を聞いたことがあるわ」
「……なに?」
「ドージェの力を利用した機体、だとか――実現するのが、いつになるか知らないけれど」
 言って、環菜は飛空挺の方へと振り返った。
 飛空挺へと機体が搬入されている。これらは軌道エレベーター天沼矛を使い、地球から搬入されてきたものだった。
 そばに居たエリシア・ボック(えりしあ・ぼっく)が小さく溜息をつく。
「にしても――まさか、地球でこんなものを進めていたなんて驚きですわ」
「パラミタでの運用も、部隊単位での実戦も、市街戦もほとんど初めて――」
 携帯を操作する指を止めず、環菜は、飛空挺へ乗り込むパイロットたちの方へと視線を向けた。
「それでも、最低限の仕事はしてもらうわよ」