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学園鬼ごっこ!!

リアクション公開中!

学園鬼ごっこ!!

リアクション

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「千鳥ちゃん恋してるでしょ!……ふふふ〜、何となく見てたらわかっちゃうよ。良い機会だし、あたしも手伝うからここで告白しちゃお!」
 七瀬 歩(ななせ・あゆむ)がそんなことを言うものだから、千鳥はしばらく止まってしまっていた。
「え? え? え!? ……な、な…な…なななんで、それを……?」
「なんでって、顔見たら分かっちゃうよ」
 うんうんうん、と皆が頷いているのを見て
「も、もしかして、皆も知っていた……の?」
「もちろんだよ〜っ! 私、そのためにここにいるんだからっ! 恋のキューピット・美羽ちゃんにお任せだよっ」
「我も片思い中だから、なんだか他人事と思えなくてですね。応援してますよ」
 美羽と巽の激励が飛ぶと、千鳥は心ここにあらずといった様子で放心状態になる。
 そこを、トライブ・ロックスター(とらいぶ・ろっくすたー)と共に現れたのはターゲットである勇介。
「わ! 千鳥ちゃんチャンスだよっ!」
 歩の言葉に「あ、は、は、はいっ!!」と返す千鳥。
 しかし、その目の前に現れたのは大きな岩の数々。
「な、なによ! これ!?」
 たじろぐ千鳥を前に、勇介とトライブは華麗にかわし前へ前へと逃げていく。
 そこへ巽が千鳥に言い放った。
「この程度の障害、蹴っ飛ばして、蹴散らして突き進むまでです! 恋愛だって同じだろ、前田さん!」
「う、うん……」
 巽の言葉に目を光らせたティアは手をパチパチ叩いて喜ぶ。
「巽かっこいー! ヒーロー大原則ひとーつっ! 最後まで絶対に諦めない事! だよ」
 千鳥は深く頷くと、唇をきゅっとかみ締めて勇介の元へ走りはじめた。
 巽、歩、美羽が千鳥に行く道を阻む岩を次々と砕いていく。
「あ、これ発砲スチロールじゃない! 余裕余裕♪」
 力に自信のない歩だったが、これならば自分にも出来ると喜ぶと千鳥に向かって手を振る。 
「千鳥ちゃん! ファイトぉ〜!」
 が、それもむなしく勇介は足早に去っていってしまう。
「もーーう! 勇介くん! おとなしく撃たれちゃおうよ! 撃たれたらきっと良いことあるよー」
 歩の呼びかけにも「やーなこった」と、まるで小学生のように返す勇介。
「もうもうもう! 勇介くんのバカバカーー!」
 シビレを切らした歩は、自分が追いかけてつかまえようと走り出す。
「お、おい、あの娘、追いかけてきたぜ」
 歩が追いかけてくるのを確認すると、勇介と共に逃げていたトライブの足が徐々に減速していく。
「わぁ! なんとか追いつけそう♪」
 トライブが減速してくことにも気付かずに、せっせと走る歩はもう少し! と足を速めた。
 しかし、どんなにトライブが走る足を弱めようとも、体の小さい歩が追いつけることもなかった。
 それでも、諦めない歩にとうとう足を止めてしまうトライブ。
「あんまり走るとケガしちゃうぜ、あんた」
「え???」
 突然、勇介と共に逃げていたはずのトライブが止まり自分に声をかけてきたので驚く歩。
 そう、このトライブ・ロックスター、頑張り屋の女の子に滅法弱かったのである。
 しかし、そんなことにも気付かない歩は
「勇介、あとはガンバレよー!」
 トライブのその言葉に、勇介を逃がすために止まったのだと思いペイント銃を向ける。
「せっかく、もう少しで追いつけそうだったのに〜!」
 心底悔しがると、後ろを走っていた千鳥に向かって声をかける。
「ここは私がなんとかするから、千鳥ちゃん達は勇介君を追いかけて!」
「ありがとう!」
 千鳥は歩とトライブを追い越し、そのまま足を進める。
「いやぁ、アンタには負けたぜ」
「千鳥ちゃんの恋のお邪魔虫は誰だって許さないんだからっ」
 そう言うと、歩はトライブにペイント弾を発射。
 しばらくしてそっと目を開けると、目の前には避けもせずにペイント弾に当たったトライブの姿が。
「あ、あれ? なんで避けなかったの?」
「俺、アンタのその健気なとこ気に入ったぜ」
「え!?」
 そんな言葉に思わずドキリとしてしまう歩。
 急に自分が放ったペイントで汚れてしまったトライブの制服に焦り、急いでかけよる。
 汚れた部分を手にとると、歩はランドリーの技を使う。
 幻想的な光に包まれ、みるみる内に汚れが消えていくのを、「へぇー。こんな技もあるんだな。ずいぶん家庭的じゃん」と関心するトライブ。しかし……。
「……あっ、服と一緒に巻き込んじゃった。ごめんなさい……っ」
 しっかりアピールのつもりが、失敗してドジっ娘ぶりを発揮してしまい落ち込む歩。
「ははっ、あんたホンっトかわいいな」
 落ち込む歩も健気で可愛くて、歩の頭をクシャリと撫で笑うトライブ。

「七瀬さんが一般生徒1人、仕留めたようですね」
 巽からの情報に、美羽が声をあげる。
「やっるね〜、あゆむッチ♪ 私も頑張らなきゃっ」
 そんな中、千鳥は歩からつつかれた本当の自分の気持ちと向き合い、躊躇していた。
「この気持ち、勇介にバレたら恥ずかしくて死んじゃいそう……」
 小さい頃からの幼馴染。
 ふざけあう仲。
 もし、自分がこの気持ちを打ち明けたらそんな関係が壊れてしまう。
 そんな不安が一気に千鳥の心を襲い、言葉少なになる千鳥。

 これが恋する乙女か。初々しいな。
 いつもなら厄介事には極力関わろうとしない赤月 速人(あかつき・はやと)も千鳥の不器用具合にみかねて、なんとかしてやるかと腰をあげた。そして、そのままその場を立ち去った。
「俺はまぁ勇介さんとやらを探しにいくとするか。これも……正直いらないな」
 速人はペイント銃にメモ書きをし、どこかの弾をなくした女の子にでも届けばいいと底抜けトラップのある床をひょいと開き、そこから銃を落とした。

■■■ 

「あっれ〜!? おっかしいなぁ」
 ゼッケンをつけているものの、風紀委員からてんで相手にされない初島 伽耶(ういしま・かや)はシビレを切らしていた。
「恋愛運気絶好調。今日のラッキーアイテムはペイント弾だっていうのに……」
 思わずむくれてしまう。
 そんなことをぼやいていると、天井がからくり屋敷の如くカタっと開きそこからキラリと光るペイント銃が伽耶の目の前を落下した。
「やだっ!! これ、誰の……? ペイント弾とはいえ、危ないじゃない」
 銃を拾って確かめると、弾もまだ入ったまま。そして小さなメモ書きが。

【弾を外したお嬢さんへ。
 これを使って再チャレンジがんばれ】


 一度読んでみて、もう一度読み返す。
「……って、私は風紀委員じゃなーーーーーい! 誰よ、まったく!」
 速人が落としたペイント銃は不幸にも一般生徒側の伽耶の元へ辿り着いていまったのである。
 大きなため息を吐くと、
「あのぉ、千鳥ちゃん見かけませんでした?」
 伽耶に声をかけたのはアリア・セレスティ(ありあ・せれすてぃ)
「さっきまで追跡できてたんだけどな……、変なボタン押したら私だけ違う教室にいたのよね」
 キョトンとアリアの話を聞く伽耶。
「貴方、千鳥ちゃんの居場所知らない?」
 がっくりと頭を落とすと、伽耶は何も言わずに左方向を指差す。
 その指先を見てアリアは「ありがとう、助かったわ」と足早に左方向へ去っていった。
 もちろん伽耶が千鳥の居場所を知っているわけもなく、アリアに教えた方角も適当だった。
 廊下でポツンと佇む伽耶は、しばらく黙り、そして大きく息を吸い込むと溜め込んでた気持ちを一気に吐き出した。
「なぜ誰もあたしを認めない……なぜ誰もあたしを狙ってこない!
 千鳥! 千鳥! 千鳥! どいつもこいつも千鳥!
 なぜ! なぜ彼女を認めてこのあたしをを認めないんだ〜ッ!」
 その声に圧倒された人物がいた。椿 薫(つばき・かおる)だ。
「な、なんなので御座るか……」
 急に叫び始めた伽耶に驚きながらも
「……ど、どうしたで御座るか?」
 伽耶に声をかけ一歩踏み出した。しかし、その瞬間!
 薫の踏み入れた床に誰が仕掛けたかトラップが。
「あ、あれ?」
 誰かに声をかけられた気がして、後ろを振り返った伽耶は薫がトラップに引っかかったことにも気付かずに首を傾げた。
「今、誰かいなかった?」
 伽耶のパートナー、アルラミナ・オーガスティア(あるらみな・おーがすてぃあ)
「うーん、いたようないなかったような。でも後ろですごい音は聞こえたけどね」
 と、やはり薫の存在に気付いていない。
 一方、床が引っくり返るトラップにかかってしまった薫だったが、
 常日頃から忍者に憧れ修行を重ねていたので反転した床にも足をついていた……わけもなく、伽耶のいた場所の下階に落ちてしまっていた。
「あの少女は、伽耶殿であったか?」
 急いで階段をかけあがろうとすると、伽耶もまたちょうどその階段を降り始めていた。
 今度こそ運命の出会いまで、あと5秒。
 4
 3
 2
 1秒前……
「きゃぁ!」
 今度は伽耶が床にしかけられていた網に捕まり、そのまま天井に吊るし上げられてしまう。
 少女の悲鳴と共に、薫はその方向へ顔を上げると
「み、見ないで〜〜〜っっ!」という叫びと共に薫の頭にポカンっ!とペイント銃が投げつけられる。
 見事クリティカルヒット。大打撃。
 ま、まさか、ペイント弾ではなく、銃そのものが投げられてくるとは思わなかったで御座る……。
 しかも、拙者はたしか風紀委員側だったはず……!
 銃が当たった箇所がどんどん腫れ上がり、薫の磨かれた坊主頭にこれまた綺麗なタンコブが出来てしまう。
 伽耶のほうも、ほんの目隠しのつもりだったつもりが、
 まさかこんなにうまくキマるとは思ってもみなくトラップに引っかかったことも忘れて謝る……――ものの。
「や、やだ! なにそれ!! 雪だるまみたい!」
 “雪だるまみたい”にしたのは、紛れもなく伽耶本人だったのだが、どうにも可笑しくなってしまい伽耶から笑いが込み上げる。
 そんな伽耶につられて、薫まで思わず笑ってしまっていた。
「伽耶殿……そのマイペースぶりに惚れたで御座るよ。少し待つで御座る。すぐに降ろします」
 器用な手つきで紐をたくし上げ、ゆっくりと伽耶を降ろすと
「では、よろしくで御座る!」
 伽耶のゼッケンへペイント弾を撃つ。
「えっ!?」
 突然のラブチャンスに目がハート状態の伽耶。伽耶のゼッケンはピンク色のペイントで染まっていく。
「危ないところを助けてくれて……椿君って、カンフー映画の主役っぽいね!」
「今は、雪だるまで御座るよ! ニンニン!」
「あっ、先は本当にごめんね!」
「いいで御座る。なんだか清々しい気分で御座るよ」
 薫の心に少しの“M心”が生まれると、伽耶は薫の腕を引っ張り、
「ねねね! これから一緒にパフェたべにいこっ」
 またもマイペースに食堂へ行こうとする。
 ドタバタながらも運命の出会いを果たせた2人は、ハッピーエンドを迎えました。……のですが、
「ちょっとワタシを置いてくつもり!?」
 アルラミナが伽耶に待ったをかける。しかし、それにも動じずサラリと言葉を返す伽耶。
「ウケケケ! 寂しい女は部屋でMMOでもやってたら〜?」
 男が出来ると途端に、破綻する女の絆。
 伽耶の言葉にアルラミナの堪忍袋がプッツンと破裂する。
「ニャ・ン・ダ・トーーーーッ!! ざけんなーッ!
 おまえこそ暗く押入れの隅で暗く乙女ゲーやってるのがお似合いだっつーに!」
 女同士の争いに圧倒されながらも、薫は喧嘩を止めさせようと2人の間に入る。
「ほ、ほら! ニンニンニコニコ! ニンニンニコニコで御座るよ!」
「…………」
 薫の“ニンニンニコニコ”に、その場の空気が一瞬かたまる。
「あーん! もう椿君だいすきだよ〜!」
 伽耶は薫に抱きついて、頬ずりをする。
「もぉーー! 薫君はワタシとパフェ食べ行くんだもんね!」
 アルラミナも負けじと頬ずり。
 その戦いは、しばらく続いたのは言うまでもない。
「ふぅ……ほっぺが痛いで御座るよ……」
 頭には、たんこぶ。
 両ほっぺには擦り切れそうな痛み。
 しかし、「伽耶殿が楽しそうな子で拙者まで愉快な気持ちになるで御座るよ」と終始満足げな薫だったのである。