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闇世界の廃校舎(第2回/全3回)

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闇世界の廃校舎(第2回/全3回)

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第1章 死霊彷徨う校舎

-AM9:00-

インターネットやイルミンスールの図書館で、ニコ・オールドワンド(にこ・おーるどわんど)は幽霊やケレスについて調べていた。
「うーん・・・インターネットには、これという情報はなかったな。ページが削除されているサイトもあったけど、誰かふざけて行かないようにするための対処かなにかかな?」
 目ぼしい情報がネットサイトから得られなかったニコは、パソコンの画面から本の方へ目を移した。
「死神の伝説・・・ナラカへの案内人・・・・・・ケレスについて書かれているね。えーっと・・・役割は、死者の魂をナラカを案内するだけの存在なのか。死者だらけのゴーストタウンに頻繁に現れても不思議じゃないってことかな」
「他にも本を持って来ましたよ」
 ユーノ・アルクィン(ゆーの・あるくぃん)は両手に新聞を抱え、ニコが使っているテーブルの上へ乗せた。
「うんありがとう、こんな何十年前の新聞も残っているんだね。さっそく見てみよう」
 ペラペラと新聞を捲っていくと、失踪したまま帰って来なかった人の記事が掲載されていた。
「このページには写真が載っているね。この前メモしてきたのと似ている点がないか探してみるかな」
 見比べてみるとニコがメモしたゴーストの服装と、写真の人間の服装が一致している。
「ゴーストの餌食によってああなってしまったのか・・・それとも何らかの方法で人を襲うゴーストにされてしまったか・・・」
「―・・・今日、調べに行きますか?」
「えっ、いいの!?」
「駄目って言っても行くんでしょう?」
「当たり前じゃないか♪」
「(楽しそうですね本当に・・・)」
 止めても聞かないパートナーに結局ユーノも付き合うことになり、彼は深くため息をついた。

-PM15:55-

 七瀬 歩(ななせ・あゆむ)からチェーンソーのピエロのことを聞き、ナガン ウェルロッド(ながん・うぇるろっど)はトンネルの前で1時間前から待っていた。
「やっぱこういう所って他の生徒たちも来たいんだろうな」
 蒼空学園以外の生徒たちを顔を確認しながら、ベア・ヘルロット(べあ・へるろっと)はトンネルの周囲を見回す。
「あんな所に行くなんてやっぱり皆、度胸あるわよね・・・。この前行った時に見かけた人もいるわ」
 マナ・ファクトリ(まな・ふぁくとり)は前回見かけた生徒の姿を確認しながら言う。
「さて・・・そろそろ時間だな。行くか!」
 生徒たちはゴーストタウンへ繋がるトンネルの中へ入っていった。



「やっぱこの不気味さは前来た時と変わらないな・・・」
 ベアが校舎内を見回すと壁紙が剥がれ落ちコンクリートや、建物の老朽化によって鉄の部分が露出していた。
「保健室はこっちだったかしら?」
「あぁ、たぶんな」
 廃校舎の入り口のドアを静かに開け、マナとベアはヘルドがいる保健室へ向かう。
「えっと・・・ここを右に曲がって、また右に曲がって・・・そこの道を真っ直ぐね。霊体だけのゴーストも出るみたいだから、気をつけないと・・・」
「ここか・・・」
 ドアの傍に壁にかけられ錆びついているプレートに書かれている部屋名を確認し、ベアがドアをノックする。
 数回叩いても返事は返ってこない。
「いないのかしら?」
「―・・・開けてくれぇええ!」
 息を吸い込み大声で呼びかけ、ドンドンッとやかましくドアを叩く。
「うるさい!」
 部屋の中から怒鳴り声が聞こえ、バタンッと大きな音を立ててドアが開かれた。
「よぉぉ!!ヘルドのおっちゃん元気か?!」
 ヘルドが慌てて閉めようするドアに手をかけ、ベアたちは無理やり室内へ入り込んだ。
「このスリルたまらないなぁ、今回も疲れたぜぇぇ!おっちゃんっ、疲れたからお茶だしてくれよ☆」
「あいにく水と酒しかないな」
 椅子に座り顔を顰め、無理やり入ってきたベアたちを半眼で睨むように見上げた。
「ヘルドは・・・この狂った世界でただ一人で生活して寂しくないの?」
 ベアを押しのけて、マナは心配そうな顔をしてヘルドに問いかける。
「私たちが生活してる世界に移住することはできないの?いろんな冒険や出会いがあって、毎日楽しく生きていけるよっ」
 何も答えない彼にマナがトンネルの外へ出ようと提案する。
「ここを出て行くと寂しがるヤツがいるからな・・・」
「誰なの?待っていたい人って・・・。何か私たちに出来ることないかしら?」
「そうだな・・・もしこの町のどこかで看護師の女に会ったら、もう少しで完成すると伝えてくれ」
「えぇ、分かったわ。そうすればここから出られる?」
「たぶんな・・・」
「(―・・・それにしても、完成って何のことかしら?)」
 ヘルドの謎めいた言葉に、マナは首を傾げて眉を潜めた。



「相変わらず空気が重いな・・・」
 緋山 政敏(ひやま・まさとし)はゴーストが周囲に潜んでいないか、注意深く警戒しながら校舎内の廊下を歩いてた。
「とり憑いてくるゴーストもいるんですよね」
 息を潜めてカチェア・ニムロッド(かちぇあ・にむろっど)も周囲を警戒する。
「チェーンソーのヤツも会ったら厄介よね・・・」
 自分たち以外の足音が聞こえないか、リーン・リリィーシア(りーん・りりぃーしあ)は耳を澄ませて周囲の音を注意深く聞き取る。
「とりあえず行方不明になった生徒たちについて情報収集しないとな」
 生徒たちに会ったというヘルドに聞こうと、鍵を閉め忘れている保健室へ入った。
「あー・・・鍵を閉め忘れてたか」
「これ・・・よかたらどうぞ」
「仮にもお医者さんですから、体労わってくださいね」
「へぇ、気が利くじゃないか」
 ヘルドは政敏からタバコを受け取った。
「行方不明になったていう生徒たちについて知りたいんだが・・・」
「たしか・・・ルフナってやつが、背が高くて長い銀色の髪の騒がしい感じ男子生徒だったな。ラビアンていう、うるさい女子生徒はそっちの人より少し背が小さかったな」
 ヘルドはカチュアの方を見て、ラビアンと背丈を比べるように言う。
「そんで髪の毛は肩くらいで、黄緑っぽい感じだったか・・・」
「―・・・なるほどな・・・」
 聞いた特徴を政敏はメモ帳に書いていく。
「ジューレの方はルフナより少し背が低くて、短い黒髪の口数の少ない男子生徒だったな」
「分かった、この情報を元に探してみる」
 政敏たちが保健室から出て行くと、ヘルドはドアを閉めて鍵をかけた。



「幽霊とかお化けとかって苦手なんですよぅ〜」
 眉をハの字にして麻上 翼(まがみ・つばさ)はビクビクと怯えていた。
「大丈夫だ、置いて行ったりはしないから。ふむ・・・・・・ほらさっさと行くぞ」
 震える翼に黙って腕を差し出し、しがみつく彼女を見て月島 悠(つきしま・ゆう)はふぅっとため息をつく。
「ギャー!悠くん、なんか出ましたよー!?」
 足元を撫でるように通り過ぎた何かに怯え、翼はギャァギャァと喚く。
「翼・・・なんでもなかったぞ」
 悠は校舎内を走る黒猫を指差した。
「何だ・・・・・・猫くんでしたか」
 ほっと安心して猫を見ると、走っていた猫はピタッと足を止めて翼たちの方へ振り返る。
「にゃぁあん」
 一鳴きして走り去っていた。
「―・・・たしか獣が鳴いた後、もうすぐ朝まで町から出られなくなるということを、この町に来たことがある他の生徒が言っていたような」
「あぁあ朝までここにぃいい!?ヤダヤダヤダッ!早く出ようよぉお」
「しかも耳元で奇妙な童歌が聞こえたとかも・・・」
「何それ!?ありえないありえない!」
「って、翼!?そんなにしがみついたら歩きにくいじゃないか」
 ぎゅっと腕にしがみつく翼を引きずるように悠は廊下を進む。
「静かにしろ、誰か近づいてくる」
「他の生徒さんじゃないんですか!この町からの出方を聞きましょうよ。おぉーい・・・むぐっ!」
 悠は翼の口を塞ぎ、人が3人隠れられそうな階段の裏側へ隠れる。
 コツンコツンとハイヒールの音が悠たちの方へ近づく。
 階段の隙間から様子を窺うと、胴から上がない化け物が足を止めた。
 動かずにじっとしているとゴーストは悠たちから離れていき、そこから出ようとしたら再びその足音が迫ってくる。
 息を潜めて離れるのを待っていると、コツンコツンとハイヒールの音を立てて離れていく。
「いいぃい今の何ですかぁああ!?胴体が・・・・・・上半身が!!」
「今のうちに早くでよう」
 急いで校舎の外へ出ようとドアに手をけると、誰かに見られているように背筋がゾッとした。
 恐る恐る天井を見上げると恨めしそうに、幼い子供を両手に抱えた下半身のない女が見下ろしている。
 翼は泣きながら悲鳴を上げ、悠を引きずるように校舎の外へ出た。
「もう少し出るのが遅かったらとり憑かれていたかもな・・・。大丈夫か翼?・・・・・・翼?」
「あはははっははは、全部壊れちゃえー!!!」
 恐怖のあまり気がおかしくなってしまった翼は、トミーガンのトリガーを引き、そこら中に銃弾を放つ。
「ちょ・・・翼、落ち着け!あなたが暴れると周りが洒落にならないから!?」
 なんとか取り押さえようとするが、翼は銃弾をぶっぱなしながら町中を駆けていく。



「ゴーストたちをこの地に縛り付けるほどの怨念・・・。そして止まった時計・・・」
 体育館にやってきたニコが、古ぼけた丸い時計を見上げて呟く。
「大掛かりな術式とかありそうですけど見当たりませんね」
 ユーノは汚れた床をクツで撫で、どこかに魔術文字が書かれていないか調べる。
「再生するゴーストが存在するなんて・・・。もしかして人為的に誰か作ったとか?」
 建物内をメモに書きとめ、ニコは考え込むように言う。
「もしそうならかなりの知能犯ですよね。痕跡一つ残さないなんて」
「この前はのっぺらぼうの顔が保管されていたようだけど、何かに使う予定だったのかもね」
「人型の生き物を使うってまさか・・・」
「そのまさかの可能性は60%くらいあるかも・・・。ここに来る途中で遭遇したゴーストの首に継ぎ目があったよね」
「えぇ・・・」
「それってゴーストの物なのかな?」
「さぁ・・・それもこれから調べなきゃね」
「(また時間以内に返れそうにないですね)」
 好奇心溢れるパートナーに、ユーノは朝まで耐久の覚悟を決めてため息をついた。