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【十二の星の華】湯けむり! 桜! 宴会芸!

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【十二の星の華】湯けむり! 桜! 宴会芸!

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第1章


 温泉に行く前日。
 百合園ではホイップ・ノーン(ほいっぷ・のーん)からメールをもらったロザリンド・セリナ(ろざりんど・せりな)が温泉に一緒に行く人を募っていた。
「ホイップさんから誘われた温泉に誰か一緒に行きませんか?」
「ボクも参加するよ。さっき携帯見たらボクのところにもメールがきてた」
 さっそく名乗りを上げたのは桐生 円(きりゅう・まどか)だ。
「ルーシーにも、その話し聞かせてもらえる?」
 温泉の名前を聞いてリュシエンヌ・ウェンライト(りゅしえんぬ・うぇんらいと)が食いついて来た。
 一体いつの間に用意したのだろうか、準備万端、桶の中にシャンプーやタオル、石鹸等を入れて登場だ。
「リュシエンヌさんも温泉が好きなんですか? 一緒に楽しみましょうね!」
「ええ、楽しみね」
「ボクだって楽しみーっ!」
 3人は必要なものを買出しに行ったりして仲良く過ごしたようだ。


「刀真……まだいれるの?」
 漆髪 月夜(うるしがみ・つくよ)はクーラーボックスに大量のコーヒー牛乳を詰め込んでいる樹月 刀真(きづき・とうま)に聞いた。
 刀真の後ろにはまだまだコーヒー牛乳が沢山ある。
「ええ、きっと皆飲むでしょうから」
「そう」
 月夜は刀真の返事を聞くと、自分が持ってきた新しい大判のタオルをたたんで鞄の中へと詰めていく。


「部長! 部長! ホイップちゃんからメールが来ていたんだけど、温泉に皆で行くって本当!?」
 のぞき部部長弥涼 総司(いすず・そうじ)が教室に入る直前に引き止めたのは黒脛巾 にゃん丸(くろはばき・にゃんまる)だ。
「そうだ」
「イエス! 温泉イエス!! ホイップちゃんをのぞく絶好のチャンス!」
 それを聞いたにゃん丸はガッツポーズを取り、そのまま温泉に行く為の準備をしに行った。
「……授業は良いのか?」
 総司はそう呟きながら自分も授業をさぼって温泉の準備をしに行ってしまった。


「今回は……春らしい料理で! どうかな? こんなメニュー考えてみたんだけど……」
 セシリア・ライト(せしりあ・らいと)はメニューの書かれた薄紅色の和紙を見せた。
 自分達の部屋で明日の温泉の会議中なのだ。
「わぁ〜! 素敵です!」
「きっとみんな喜びますわ」
 メイベル・ポーター(めいべる・ぽーたー)フィリッパ・アヴェーヌ(ふぃりっぱ・あべーぬ)は笑顔でセシリアを見た。
「ありがとう! じゃあ、早速仕込みを開始しなきゃね!」
 セシリアの指示通りに2人はお手伝いをしていくのだった。

■□■□■□■□■

 当日。
 空は晴れ渡り、風に乗って花の香りが運ばれてくる。
 まさに春だ。
 空京の待ち合わせ場所では、もう皆が集まって来ていた。
「ごめんねホイムゥ!」
 ホイップを見つけた小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)は猛ダッシュして抱きついた。
「えっ!? えっ!??」
「大変だったんでしょ!? 駆けつけられなくてごめんね!」
「私も……お手伝いが出来ず……すみません」
 ベアトリーチェ・アイブリンガー(べあとりーちぇ・あいぶりんがー)も近くへと寄ると頭を下げた。
「ううん! 大丈夫だよ! それより、今日は一緒に温泉に行ってくれて嬉しいよ!」
「ホイムゥーーー!」
 ホイップの言葉を聞いた美羽は更にきつくホイップを抱きしめた。
 そんな様子を遠目に目撃した緋桜 ケイ(ひおう・けい)は複雑そうな顔をして、目を背けたが、思い直して顔を上げた。
(……沈んだ顔を見せるわけにはいかないよな)
 周りでは美羽達のことを温かく見ている人達が大勢いるのだ。
 怪我で病院にいたとはいえ、自分は足を引っ張ってしまったからと暗い顔をしていると心配をかけてしまう。
 そんな思いがケイに笑顔を作らせた。
(青春だのう)
 悠久ノ カナタ(とわの・かなた)は見ぬふりをして、自分の荷物に不備が無いかチェックをした。


 馬車をレンタルして、料理道具や材料を積み込んでいるメイベル達に近づいたのはルイ・フリード(るい・ふりーど)だ。
 相変わらずの歯を煌めかせたルイスマイル。
「飲み物を沢山持ってきたのは良いのですが、少々多すぎました。一緒に乗せては貰えないでしょうか?」
 その申し出をメイベル達は快く了承した。
「俺のも良いでしょうか?」
 コーヒー牛乳を大量に持ってきた刀真も便乗してきた。
「勿論です」
 それにも快く答えたメイベルだった。


 空京で全員がそろったのを確認し、出発となった。
「温泉には浴衣あるからね!」
「そうなの!? じゃあ、後で浴衣姿の見せっこだね!」
 ホイップは美羽と温泉の事を楽しそうに話している。
「楽しそうだね」
 私服で来ていた橘 カオル(たちばな・かおる)が会話に入ってきた。
 紺の細身ジャケットがよく似合う。
「うん! 皆でまたこうやってお出かけが出来るから……凄く楽しいよ!」
 ホイップは笑顔でそう答えた。
「きっと2人の浴衣姿は可愛いだろうね」
 さらりと言われ、ホイップと美羽は満更でもなさそうだ。
「なんだか楽しそうね。ワタシ達も一緒に行って良いかしら?」
 歩いていたホイップ達に声を掛けてきたのはシオン・エヴァンジェリウス(しおん・えう゛ぁんじぇりうす)だ。
 その後ろでは沢山の買い物袋を乗せた小型飛空艇を引っ張っている月詠 司(つくよみ・つかさ)がいた。
「勿論! 人数は多い方が楽しいよ!」
 ホイップがそう言うと、シオンは嬉しそうにホイップ達の会話に加わった。
「じゃ、その買った物を置いてきて、ワタシの水着を持ってきてね」
「え……1人でですか?」
「それじゃ、任せたわよ」
 シオンは司に手をぴらぴら振って送りだした。
 司は大量のシオンの荷物を持って、急いで自分の部屋へと戻っていったのだった。