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一夏のアバンチュールをしませんか?

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■ オープニング

 ほぼ1年中霧に包まれたタシガンにある森の中心に、その城はあった。
 そびえ立つ崖、黒々と広がる森。
 雲海から流れ込む霧が夜明けの光を受けて、黄金色の輝きを放つ。
 ジェイダス・観世院(じぇいだす・かんぜいん)はベランダのテーブル席に1人座して、眼前に広がるその光景を楽しんでいた。
「こちらにいらっしゃいましたか、ジェイダス校長」
 背後でフランス窓が開く音がして、ルドルフ・メンデルスゾーン(るどるふ・めんでるすぞーん)が姿を現す。テーブルや椅子、観葉植物といった障害物を苦もなく避けて近づくその姿は、まさに黒豹を思わせる力強さとしなやかさを秘めていて、美しい。
「なにかね?」
 手元のワイングラスを揺らしながら、ジェイダスは再び霧に包まれた森へと視線を戻す。ルドルフは、小脇に抱えていたボードを差し出した。
「3日後の舞踏会に参加していただく方々の名簿が出来上がりました」
「ほう。それはまた勤勉なことだ」
「お待ちかねでいらっしゃったようですので」
 ジェイダスが受け取ったため、ルドルフは背を正して距離をとる。
 名簿を開き、そこに連なった名を見て、ジェイダスは目を細めると満足気な笑みを浮かべた。

『舞踏会参加者名簿』(順不動)
宇都宮 祥子(うつのみや・さちこ)
東條 カガチ(とうじょう・かがち)
コトノハ・リナファ(ことのは・りなふぁ)
ルオシン・アルカナロード(るおしん・あるかなろーど)
姫野 香苗(ひめの・かなえ)
朝霧 垂(あさぎり・しづり)
秋葉 つかさ(あきば・つかさ)
鬼院 尋人(きいん・ひろと)
沢渡 真言(さわたり・まこと)
沢渡 隆寛(さわたり・りゅうかん)
三笠 のぞみ(みかさ・のぞみ)
ミカ・ヴォルテール(みか・う゛ぉるてーる)
セオボルト・フィッツジェラルド(せおぼると・ふぃっつじぇらるど)
ルカルカ・ルー(るかるか・るー)
ダリル・ガイザック(だりる・がいざっく)
黒崎 天音(くろさき・あまね)
ブルーズ・アッシュワース(ぶるーず・あっしゅわーす)
ヴェルチェ・クライウォルフ(う゛ぇるちぇ・くらいうぉるふ)
クレオパトラ・フィロパトル(くれおぱとら・ふぃろぱとる)
蓮見 朱里(はすみ・しゅり)
アイン・ブラウ(あいん・ぶらう)
椎名 真(しいな・まこと)
お料理メモ 『四季の旬・仁の味』(おりょうりめも・しきのしゅんじんのみ)
変熊 仮面(へんくま・かめん)
影野 陽太(かげの・ようた)
冬山 小夜子(ふゆやま・さよこ)
瀬島 壮太(せじま・そうた)
七瀬 歩(ななせ・あゆむ)
ローザマリア・クライツァール(ろーざまりあ・くらいつぁーる)
ヴィナ・アーダベルト(びな・あーだべると)
クレタ・ノール(くれた・のーる)
神和 綺人(かんなぎ・あやと)
クリス・ローゼン(くりす・ろーぜん)
白菊 珂慧(しらぎく・かけい)
ラフィタ・ルーナ・リューユ(らふぃた・るーなりゅーゆ)
白雪 魔姫(しらゆき・まき)
カシス・リリット(かしす・りりっと)
ヴァイス・カーレット(う゛ぁいす・かーれっと)
エース・ラグランツ(えーす・らぐらんつ)
メシエ・ヒューヴェリアル(めしえ・ひゅーう゛ぇりある)
六鶯 鼎(ろくおう・かなめ)
如月 正悟(きさらぎ・しょうご)
芦原 郁乃(あはら・いくの)
秋月 桃花(あきづき・とうか)
マリア・クラウディエ(まりあ・くらうでぃえ)
ノイン・クロスフォード(のいん・くろすふぉーど)
小夏 亮(こなつ・りょう)
速水 桃子(はやみ・ももこ)
神裂 刹那(かんざき・せつな)
ルナ・フレアロード(るな・ふれあろーど)
不動 煙(ふどう・けむい)
古代禁断 死者の書(こだいきんだん・ししゃのしょ)
城 紅月(じょう・こうげつ)
榛原 勇(はいばら・ゆう)
イングリッド・ランフォード(いんぐりっど・らんふぉーど)
蒼澄 雪香(あおすみ・せつか)
天司 御空(あまつかさ・みそら)
白滝 奏音(しらたき・かのん)
星渡 智宏(ほしわたり・ともひろ)
時禰 凜(ときね・りん)
オルフェリア・クインレイナー(おるふぇりあ・くいんれいなー)
『ブラックボックス』 アンノーン(ぶらっくぼっくす・あんのーん)
ソニア・クローチェ(そにあ・くろーちぇ)
神楽坂 紫翠(かぐらざか・しすい)
橘 瑠架(たちばな・るか)
矢野 佑一(やの・ゆういち)
ミシェル・シェーンバーグ(みしぇる・しぇーんばーぐ)
坂上 来栖(さかがみ・くるす)
アリエル・シュネーデル(ありえる・しゅねーでる)
エミン・イェシルメン(えみん・いぇしるめん)
笹咲来 紗昏(さささくら・さくら)
ヨハン・サンアンジュ(よはん・さんあんじゅ)
伊吹 藤乃(いぶき・ふじの)
鈴鹿 千百合(すずか・ちゆり)
羽瀬川 まゆり(はせがわ・まゆり)
シニィ・ファブレ(しにぃ・ふぁぶれ)

「なるほど。この短時間によくこれほど良き面々を揃えたものだ」
「おそれ入ります。この他にも大勢の良き方々がジェイダス校長からのお招きに浴したいと申し出てこられたのですが、警備の面から数を絞らせていただきました次第です」
 舞踏会を開いて大勢の人々を招きたいというジェイダスの意思を尊重したい思いはあるが、ジェイダスの身を守ることが第一のイエニチェリとしては、警備を手薄にするわけにはいかない。
「なに、構わんさ。これで十分だ」
「次のページにそれぞれの偽名があります。空欄は、ジェイダス校長よりぜひいただきたいという者達です」
「意外と多いな」
「お楽しみください。
 では準備がありますので、これで」
 一礼し、きびすを返そうとしたルドルフだったが、袖に触れて、ジェイダスがその動きを止めた。
「雑用を頼んですまない。だが、きみに任せれば全て安心だ」
 ルドルフは少しとまどったように見えた。何か返そうとし、結局やめる。
 森を見続けるジェイダスに黙礼して去るルドルフの、遠ざかっていく気配を感じながら、ジェイダスは深々と息を吐いて椅子に背を預けた。グラスを置き、ボードに挟まれてあったペンを取る。
「……お楽しみ、か。たしかに楽しめそうだ」
 肘掛けに頬杖をついて、ジェイダスはペンを紙面に走らせた。