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合コンパーティにバトルにお爺さん孝行!?

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合コンパーティにバトルにお爺さん孝行!?

リアクション

 審判を務めるのはメティス・ボルト(めてぃす・ぼると)である。レンと同様に、羽根季保の一味が試合会場を狙ってくると考えたのだ。
 試合を開始するにあたり、メティスはスキル「警告」で審判からのルール説明と注意喚起をした。
「試合は3分一本勝負! 行きすぎた行為に対しては私がスキル「女王の楯」を使用し、中止とさせてもらう」
 
 理の最初の対戦相手は葛葉 翔(くずのは・しょう)
「休憩は必要かい? 互いに本調子じゃなかったなんてつまらないだろ? 本調子の相手に勝ってこそだしな」
「…君は優しい紳士なんだね。有り難いが僕には問題はないよ。シンプルに行こう」
 にっこりと微笑むと理は自らの剣をすらり、と抜いた。
「僕の剣は布都御魂剣(ふつみたまのつるぎ)。軍神(いくさがみ)が僕に力を貸してくれる。さあ、おいで」
「ごたくはいいんだよ、おらぁ!!」
 翔はグレートソードを振り被り、剣を思いっきり振り下ろして、スタンクラッシュ! どおんと重量級の音がし、会場自体を振るわせた。
 しかし、それを理はすっとさけてふわっと空中に舞う。
「避けたと思って油断してると怪我するぜぇ!」
 【金剛力】で力任せに理の避けた方向に剣を振るい、【薙ぎ払い】する。
 しかしさらに理は翔の動きを見極めていたかのように、細身の布都御魂剣を翔に振り下ろす。それを翔は【ブレイドガード】で攻撃を弾くとキイイインと刃の魂同士が震える音がする。
「くっ…そんな細身の剣なのに、この大剣と互角に渡り合うとは!」
「それが布都御魂剣の力だよ」
「勝負終わり! 引き分け!」
 メティスの声が響く。
「あんの野郎…見た目を裏切るしなやかで強靱な体力を持っているらしいな…赫夜に結婚を申し込むだけはあるか…」
 翔は一礼をすると、そう呟いた。

 二番手はウィング・ヴォルフリート(うぃんぐ・う゛ぉるふりーと)
(相手が腕の立つ剣士というのならば、闘いの中でその技を盗んで自分の成長の糧としましょう…)
 フェイタルリーパーたるウィングらしい考え方だった。
 ウィングはまずわざと隙を作り、理の第一撃を誘い出す。
 ふっと理は何かを悟ったのか、ウィングの隙に剣をふるい入れた。
(…この男! なかなかやりますね…!)
 ウィングは、殺気看破で相手の剣を見切り、ブレイドガードと残心で受け流しつつ、理の呼吸と瞬きを読んで、先の先でタイミングをずらし、神速と超感覚を組み合わせて瞬動し、すれ違いざまに乱撃ソニックブレードを打ち込む。
 しかしそれを理はするするとかわしてしまう。
「…呼吸は読めているのに!」
「残念。僕の呼吸は一拍ずらしていたんだよ」
 理は乱撃ソニックブレードの隙を突いて、ウィングに布都御魂剣を叩き込んだ。
「ぐ!」
 なんとかドラゴンアーツで防ぐが、
「一本! 弓削!」
 その結末に会場もどよめく。
 ウィングのパートナールータリア・エランドクレイブ(るーたりあ・えらんどくれいぶ)はその様子を見つめていた。
「…完敗です」
 ウィングの言葉に、ルータリアは
「そうでもないぞ。あの男、合気道に通じるものを体得しているぞ」
「合気道?」
「合気とは、同期することぞ。同期されてしまうと、相手に身体を乗っ取られるのも同じ。そういった呼吸を外し、すかし、かわすことをあの男は体得しておるようじゃ」
「なるほど」
「あやつは赫夜殿に執心して自分のものにしたいようじゃが、武術に関しては相手を冷静に見つめ、呼吸を外す事ができるようじゃ…後見人は弓削光政とかいったな。その者からの手ほどきが良かったのかも知れぬ」

 霧島 玖朔(きりしま・くざく)は理と生徒達のバトルを観戦していた。友達から誘われ、今回の合コンパーティに参加し、メインイベントである剣戟試合を観戦、事の行方を見守っていた。
「あのイケメン野郎、なかなかやるじゃねえか」

「三番手! 武神 牙竜(たけがみ・がりゅう)!」

「牙竜は佑也と赫夜のため、理の根性をたたき直すと宣言! さあて、ここからはリリィ・シャーロック(りりぃ・しゃーろっく)が実況! 牙竜が使う剣術は古代シャンバラ人が編み出した業! まるで気が狂った輩の剣術とも呼ばれるほどの無謀に見えるもの。しかし、『一の太刀を疑わず』または『二の太刀要らず』と云われ、己が修練や一の太刀を外した時には守るべきものが守れない、絶対の覚悟を決めた剣術! 示現流と根源は同じくしている! 不転退の覚悟で挑む、突進馬鹿の牙竜に勝利あるのか! 今、ゴングが鳴った!剣を交えて、理を佑也と同じ土俵で争えるように鍛えちゃえー!」

 牙竜は怒りに近い表情を浮かべている。そしてさっと虎徹を理に向けると口を開いた。
「弓削 理! 赫夜の気持ちも考えずに…。軽々しく赫夜を運命の人だと? 笑止千万! そんな安っぽい言葉でしか、愛を伝えることしかできない奴に愛を語る資格なし! なんで分かるかだと…俺にも惚れてる女がいる。まぁ、高嶺の花なんだが、心底惚れたからな…いつか、隣に立っても恥ずかしくないように努力してるんだよ! オマエは挫折を知らんようだな。本当に赫夜事が好きなら自らの欠点を見つめ直してから出直して来い! それが、空気を読むということだ。今からオマエのプライドを全力で叩きのめす! かつて、シャンバラ人が女王を守るために編み出したクィーン・ヴァンガード剣術の業の真髄で勝負!」
 示現流によく似た構えで、二の太刀いらずの覚悟を込めると、小細工無用! とばかりに牙竜は全てを一太刀に込め、『バーストダッシュ』で一気に間合いを詰めるが、すうっと理はれいのごとく呼吸を外し、布都御魂剣を牙竜に叩き込むが、それを牙竜はなぎ払う。
「…はは」
 くすくすと笑い出す理。
「何がおかしい!」
「いいや。おかしい、奇矯だと言う意味で笑ったんじゃないよ。君はとても勇敢な人だね。その勇敢さに惚れ込みそうな自分がいることに気がついて、思わず笑みがもれただけ」
「なんだと!? ふざけたことを!」
「僕は君を好ましく思う。好きな女性のために自分を磨きあげているだなんて素晴らしいじゃないか。ただ、僕が挫折を知らないということに関しては、意味がよく分からない。僕にとって、不幸も不運もただ、僕を鍛え上げる機会でしかない。僕はよく子供の頃に苛められてね。おそらくこの性格のせいだろうね。でも、変える必要を感じなかったんだ。それに、僕にとって言葉は真実だ。赫夜さんは僕の初恋の人。それを『運命の人』というのに問題があるのかな?」
「ごたくを抜かすな! チェストォォォ!」
 ふたりは斬り結び合う。
 ただ、牙竜は剣を交える度に、理のことが少しずつ理解出来てくる気がしていた。
(嫌みな奴だし、空気も読めない。ただ、自分の気持ちに忠実なだけかもしれない。…まあそこが赫夜にとっては辛いところなんだろう)
「終わり! 双方、引き分け!」
「ちょっといいか」
 そこにすらりとした細身の美しい顔立ちの少年が、牙竜と理の間に割って入った。
「君は誰だい?」