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七つの海を越えて ~キャプテン・ロアは君だ~

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七つの海を越えて ~キャプテン・ロアは君だ~

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エピローグ
 
 
 空想世界から現実世界に戻った一行。
 多くの者達は再び元の日常へと戻って行った。
 だが、中にはそういった日常に戻るまで、ちょっとした余談があった者達も――
 
「う、うぉぉぉぉ!? 真っ白? 真っ白や!?」
 現実世界に戻った後、七枷 陣(ななかせ・じん)のそんな叫びが研究所に響き渡った。
 当初、空想世界で一週間以上の航海を続けたにも関わらず、現実では数時間しか経過していなかった事が判明した時には陣の喜ぶ声が聞こえていた。
 ところが、課題のノートを開いた途端にこの有様である。
「あー、そっか。あっちの世界で何が起きても現実世界に影響が無かったって事は、ノートにいくら書いてても現実のノートは白いままって事なんだね」
 理由に気付いたリーズ・ディライド(りーず・でぃらいど)の一言に陣自身が真っ白になる。次の瞬間、陣は時計とノートを見比べ、もの凄い勢いで頭を回転させた。
「あっちの世界でかかった時間がこんくらいで……残りの時間が……よし、ギリギリ行ける!」
「え? 陣くん?」
「幸い問題自体はあっちでやったのと一緒や! 中身忘れんうちに早ぅ帰って、徹夜してでも完成させるで!」
「え、ちょっと。陣くん? 陣く〜ん!」
 まさに飛び出すと言った表現が相応しい勢いで研究所を出て行く陣。そんなパートナーを追って、リーズも慌てて飛び出して行くのだった。
 
 
「ねねね、今度はあたしが船長をやってみたいな。今こそ海猫海賊団、出撃だよ〜」
「何言ってやがる。そう言う事は自分の船を持ってから言いやがれってんだ。よし、待ってろよ! クイーン・アンズ・リベンジ! 今度は内海に飛び出す番だぜ!」
 航海の興奮冷めやらず、秀真 かなみ(ほつま・かなみ)エドワード・ティーチ(えどわーど・てぃーち)の二人が研究所を出て行こうとする。そんな二人を水神 樹(みなかみ・いつき)ががっしりと掴んだ。
「空想世界だから特別だ、と言ったでしょう? 実際にあの船を使ったらまた鉄拳制裁ですからね」
「りょ、了解だよ、師匠〜」
「お、おぅ……くそっ、いつかまた、絶対に大海原を駆けてやるぜ」
 
 
 そんな出来事があったものの、数日が経つうちに彼らも元の日常に戻って行った。
 更に数日後篁 透矢篁 花梨の二人はツァンダにあるオープンカフェを訪れていた――

「皆、遅れてすまない」
「お待たせしました、皆さん」
 席に座っている御凪 真人(みなぎ・まこと)火村 加夜(ひむら・かや)冴弥 永夜(さえわたり・とおや)の三人の所に向かい、腰掛ける。
「お疲れ様です。教授の方はどうでした?」
「あぁ、俺達の体験を基に調べ直して、ある程度は解析が進んだらしいよ、真人。一応あのマジックアイテムの発動条件らしい物もな」
 今回の事件が起きた切っ掛けとして、本を手にしたザクソン教授がリングを手に取った瞬間に効果が発動したという事は帰還後に本人から聞いていた。そこで真人は『何故研究室にある他の本では発動しなかったのか』という航海中に疑問に思っていた点を、教授に着目点の一つとして伝えておいたのである。
「まぁ解析というよりは、人柱と言った方が正しいんですけどね」
 花梨が苦笑する。取り込まれても命の危険が無い事が判明したので、研究所にいる何人かの好奇心旺盛な研究員が実際に本を手にしながらリングを触るという事を繰り返していたのだ。
「その結果分かったのは、発動の切っ掛けになる本はストーリーを追える物語式の物である事。それから――その本に強い思念が込められている事、らしい」
「思念、ですか?」
 加夜が首を傾げる。
「まぁ思念というか、思い入れって言った方がいいかな。その本を大切に思い、長く使い続ける。そうやって想いが積み重なっていった本だけがああいう架空の世界を作り出す原動力になるらしいんだ」
「という事は、あの小説にもそういった思念が込められていたのか?」
 永夜の言葉に全員の視線が本の持ち主である透矢に集まる。今度は透矢が苦笑すると、頬を掻きながら頷いた。
「まぁ、確かにこの本への思い入れはかなり強いかな。子供の頃からずっと読み続けていた本だから」
 テーブルに置かれている小説を真人が手に取る。奥付を見ると、そこには初版と書かれていた。刊行が2006年の年末だから、14年以上前に発売された物だ。その割には年月による劣化以外、目だった損傷は見られない。
「随分大切に扱ってきたんですね。でも、何故ここまで?」
「……この本はさ、父さん――俺の実の父親が買ってくれた本なんだ。母さんが原作のファンで、いつか俺が大きくなった時に読ませるつもりだったみたいでさ」
 だが、実母は透矢が幼い頃に亡くなってしまい、それを果たせる事は無かった。その為実父は日本語版の発売を機に本を透矢に与えたのである。母が好きだった世界、それを知ってもらう為に。
 そしてその二年半後、航空自衛隊所属だった実父はパラミタ出現の折、ドラゴンの襲撃を受けて帰らぬ人となった。結果として両親の形見となったこの本を、透矢は二人との思い出として大事にし続けたのである。
「……なるほど、な。それならあのリングが発動したのも頷ける」
 温めのコーヒーを口にし、永夜が静かにつぶやく。他の二人も同じ感想だったようだ。
「そう聞いてしまうとこの本を借りる事にちょっと躊躇してしまいますね。本当に良いんですか?」
「あぁ、構わない。確かに本は大事だが、本当に大切なのはそこにある想いだからな。だから教授にも貸した訳だし、真人が読むのは全然問題無いよ」
「分かりました。それじゃあこれはお借りしますね」
 真人が本を大事に鞄へとしまう。それを横目に、透矢が加夜と永夜に尋ねた。
「そういえば、二人は読むか? 真人の後で良いなら貸すけど」
「あ、私は大丈夫ですよ」
「俺もその必要は無いな。アンヴェルが日本語版を読みたいって言うからさ」
 そう言って永夜が本屋の袋を取り出す。その横では加夜も別の本屋の袋を見せていた。それが何だかおかしくて、五人が次々と笑い出す。そうして笑いながら、透矢は空想世界の最後の光景、あの映像に映っていた二人の事を思い出していた。
(世界を一周して最初の港に帰って来たロア達は、出迎える家族達と抱き合い、宝が最初の港にもあった事を知るんだ)
 家族、友人。共に航海を続けた仲間と同じくらい大切な人々。そういった者達と再会を果たして物語は終わる。
(俺がその港に帰るのはまだ先の話だからさ、今は俺達の……大事な家族や友達との航海の無事を祈っててくれよ、父さん、母さん)
 
 共に笑い合える家族と、友人達と。思い出という名の宝を得て、彼らはこれからも人生という航海を続けて行くのだった――

担当マスターより

▼担当マスター

風間 皇介

▼マスターコメント

 こんにちは。風間 皇介です。
 無事に第五作をお届けする事が出来ました。
 ……いや、今回はこの言葉は使わないぞと思っていたんですが、結局叶わず。
 とりあえず予想外だらけだったので早速次へ。
 
〜今回の予想外〜

・参加人数
 
 【カナン再生記】では無くなった普通のノーマルシナリオなのに72名もの応募があり、大変嬉しかったです。
 その分また落選してしまった方々には本当に申し訳ありませんとしか言えない訳ですが。
 
 
・キャプテン・ロアについて
 
 〜アクション〜
 「せっかく海賊になったんだから〜」
 「海賊として他の海賊に負ける訳には〜」
 「ロアの代わりに海賊として〜」
 
 ロアは海賊じゃないつもりだったんだけどなぁ……!
 
 あれですよ、コロンブスとかマゼランとかそういう探索船のつもりだったんですよ。
 一繋がりの財宝を探す海賊の漫画とか、説明書通りに名前を入れたらキャプテンが重複するゲームのイメージが強かったんでしょうか。
 
 
 今回結構海にまつわる方が多く参加されていた気がします。(英霊とか)
 パラミタは内海一つしか無いという設定ですから、やっぱり今回みたいな話は珍しいのでしょうかね。
 ちなみに今回海の話にしたのは単に本来篁家七女として登場予定だった魔道書の元がそういう本だった、という設定なだけだったり。
 (だから海が七つ)
 結局「NPC多すぎね?」という天の声が聞こえた気がしたのでその部分は抜きましたが。
 いつか上の兄弟の認知度がもっと上がった頃にでも魔道書化の話とかが出来たらいいですね。
 
 
・海選択
  
      (左:MCのみ/右:LC含む)
 ・太平の海   5/13
 ・灼熱の海   5/11 うち敵役1/2
 ・歌姫の海   5/12
 ・嵐の海    12/31 うち敵役1/4
 ・極寒の海   2/ 4
 ・新たなる海  6/12 うち敵役1/2
 ・最後の海   9/19 うち敵役4/9
 ・他、お任せ  5/ 9
 
 ど う し て こ う な っ た
 
 いやね、掲示板の時点でカオスな予感はしていたんですよ、えぇ。
 これは絶対嵐の海が凄い事になるなーと。
 ……凄いどころの騒ぎじゃありませんでした。
 まさか一章に6ページも割くなんて思わなかったよ! どれだけバトル好きなんだよ!
 しかもいわゆる悪役の方が最後の海に集中したのでそっちもそっちでカオスになったというね。
 当初は「どうせ最後の海にPC集中するだろうから、1〜6どこか一つの海+希望者は最後の海も、にしようかなぁ」とか思っていたのですが、やらなくてよかった……
 
 そんな訳で今回、PC対PCのバトルについては前回までよりもアクションを重視しています。
 結果は別として、より戦いの手段を具体的に書いてきた方のほうが展開上押している形ですね。
 これはそういった方のほうが引き出しが多い=戦術的に強いと判断しています。
 
 あと、嵐の海でボスとの戦いを希望された方がかなーーーりいたのですが、さすがに全部を採用は無理でした。
 採用しようと思ったらボスを集団でフルボッコにするか10人のボス、とかそんな状態に……
 同様の理由で確定アクションも不採用の物が多い、というかそもそもそんな展開にならないというのがありました。
 その辺は不採用のリスク込みでアクションをかけられていると思いますが、ご了承下さい。
 
 
 ちなみに物語の登場人物として参加された方ですが、役に完全になりきっている方、自覚ある上で役を演じている方などがいらっしゃったので、アクション内容と展開で判断して現実での記憶をはっきり覚えているかどうかを二分させて頂きました。
 
 
・僚艦
 
 最終的に六隻。敵側も含めると合計八隻で結構多くなりましたね。
 でもまぁ割と丁度良い数だったかと。
 GAが無く、全艦PC単独で一隻だったのが意外といえば意外ですが。
 執筆段階で知ったのですが、実在する国の名称は使えなかったので、架空の国名以外は『大陸の国』とか『帝国』とかボカしてあります。
 申し訳ありません。
 (一応推測出来そうな形にはしていますが)

   
・文字数、ページ数
 
 ……21ページ……だと……?
 三作目の17ページで多かったと思ったのに、それ以上になるとは思いませんでした。
 というかあと2千文字で10万文字って……
 
 こ、これってノーマルシナリオでしたよね……?
 締め切りギリギリまでかかりましたが、何とか今回も全参加者に称号と個別コメントをお送りする事が出来て良かったです。
 

 それでは今回はこの辺で。次回また、篁ファミリーの冒険にお付き合い下さい。
 
※ 4月25日、リアクションを修正しました。該当箇所の方にはご迷惑をお掛けしました。