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十人十色に百花繚乱、恋の形は千差万別

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第十三篇:平等院鳳凰堂 レオ×設楽カノン

 パラミタの存在しない2011年の日本。
 とある高校の教室で居眠りをしていた平等院鳳凰堂 レオ(びょうどういんほうおうどう・れお)は終業のチャイムの音と、教師が教室を出て行こうと開けたドアがレールの上を滑る音で目を覚ました。
 少しの間まどろんだ後、再び居眠り始めるレオ。気付けば、放課後の教室に残っている生徒はもう誰もいなかった。
 静かな放課後、夕暮れの教室でレオが再び目を覚まし、顔を上げるとそこには、最愛の設楽 カノン(したら・かのん)の姿がある。
 レオは普通の高校1年生。入学式で一目惚れしたカノンにアタックし続け、先日OKをもらった。他に何もいらないくらいにカノンが好きで、それををストレートに表現している毎日。
 カノンは高校2年生。明るく社交的で文武両道。幼馴染の涼二への気持ちが憧れだったことに気づき、レオを受け入れた。無邪気に慕ってくるレオが可愛くて仕方がない。ちょっとお姉さんぶっているが、勢いで負けることも。
 そんなどこにでもありそうな、幸せな高校生のカップルの風景。
 二人は一緒に下校する途中で、どちらからともなく手を繋ぐ。
 そして、互いの帰り道の分岐点となる公園で、星空を見上げながら二人は互いの想いを告げる。
「レオ。大好きだよ」
「……うん。僕もだよ、カノン」
 そう、ここにあるのは、どこにでもありそうな、幸せな高校生のカップルの風景。
 渦巻く陰謀もない。カノンも強化人間化によって不安定になっていない。そもそも、強化人間などというものは存在しない。
 もしかしたら存在したかもしれない日々。そして、これは現実とは違う日々。
 そう、これは、どこにでもありそうな、幸せな高校生のカップルの風景。
 けれど。この世界は偽りだ。
「分かってる。僕はこんな未来を真実にするために、彼女を守るって決めたんだ」
 何度も手を振りながら、家に向けて公園の並木道を歩いていくカノンの姿を見送りながら、レオは小さく、だが確かな声で呟いた。 ――だって!カノンが!好きだから! ……現実世界ではいろんな陰謀が渦巻いてるけど、せめてこの世界では普通の青春を。
 そう思い、レオはカノンと共に『本』の中へと飛び込んだ。
 自分とカノンが何の障害もなく恋ができていたら……そんな爽やかな青春が見られるかもしれない。最後は現実に戻るけれど。 
 好きな相手と望むシチュエーションで――ならレオが一緒に過ごしたい相手は一人しかいない。
 公園を去っていくカノンの姿が見えなくなるまで、彼女の後姿をじっと見つめていたレオはやがて、泣き笑いのような顔で呟いた。「ありがとう名前も知らない魔導書。こんな夢が見られるのなら――僕はまだ、戦える」