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リアクション
第十二篇:ルカルカ・ルー×金鋭峰
重機関銃の掃射音が響き渡る戦場を、副官であるルカルカ・ルー(るかるか・るー)は隊長である金鋭峰(じん・るいふぉん)とともに駆け抜けていた。
姿勢を低くし、少しでも被弾率を下げながら、敵の勢力圏内をただひたすらに駆け抜けていく。相変わらず、敵の張った防衛網は周到だ。ともすれば設置された機銃による掃射でいつ被害を受けるか知れたものではない。更には、地雷に加えて種々雑多なブービートラップまでもが仕掛けられ、目的地までの接近は容易ではない。
だが、二人は行軍を止めるわけにはいかなかった。
背中に背負ったアサルトライフル――AK74の重さを感じながら、背後から追従してくる友軍の兵士たちを見やり、そのまま腕に巻いた防水腕時計の刻む時刻に目を落とす。
もうすぐ、彼女たちが所属する特殊部隊の作戦決行時刻だ。それまでにはなんとしても間に合わなければならない。
島に残った味方部隊脱出の活路を作るために敵要塞に潜入し爆破する任務を帯びた特殊部隊。それが彼女たちだった。
地の利は完全に敵側にある。よって、目的地までのルートの中で唯一使えそうなルートが、人間が到底通らないようなルート――夜、崖を登攀し要塞に近づくというルートだった。
夜闇に紛れて崖を登り終えた彼女たちは、敵監視網を掻い潜り潜入を果たす。
背後から敵に近づき首をかき切り殺し、姿勢低く移動し、暗視ゴーグルや野戦服で活動するルカルカたち。
そしてついに彼女たちは爆薬庫や武器庫に爆弾を仕掛け、司令部砲撃と同時に爆破スイッチを押して脱出を果たした。
戦場はヒロイズムの通らない汚く残酷な場所。助からない味方にトドメも刺すし、人は容易に死ぬ――脱出の途上において、ルカルカはその事実を嫌というほど噛み締めていた。
けれど、背中を預けられる信頼を結んだ仲間と戦場に生きる事は喜び、終ったら生還できた仲間達と笑顔で安堵する。
そして、島を離れるボートの上でメットを取り、コーヒーを飲み……。
「ところで、いつ言い出そうか、機会を見計らっていたわけだが」
ルカルカがコーヒーを飲もうとした瞬間、鋭峰はわざとらしい咳払いと共に切り出した。
「これのどこが恋物語なんだ?」
その問いかけに対し、ルカルカは急に素に戻ると、きょとんとした顔で逆に問い返した。
「え? ルカルカにとっては十分、恋バナなつもりなんですけど? 強い絆で結ばれ死線を超える……そこにロマンはあると思うのです」
それを聞いた鋭峰は一瞬、呆けたような顔になった後で苦笑して告げた。
「まったく……呆れたものだ。だが、君らしいと言えば君らしいな――これも有りか」
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