リアクション
第四十四篇:杜守 柚×高円寺 海
現代日本。パラミタのない世界。
とある高校に通う杜守 柚(ともり・ゆず)と高円寺 海(こうえんじ・かい)は幼馴染だ。
海はバスケ部でキャプテンとして活躍していて、柚は海の幼馴染でマネージャーをしていて、近くで応援したりサポートしたりして距離が縮まっていった。しかし、そこまでだった。柚はそれから先に一歩踏み出せずにいたのだ。
海は人気があって、女子の憧れの的だった。
不器用だけど優しくて、困った事があると助けてくれて……柚はそんな海がとっても大好きだ。
バレンタインの日にチョコを渡したくて作ってきたが、海は既に沢山の女子からチョコを貰ってて、なかなか渡せない。
どうしようと悩んでいたところ、柚は海と一緒に帰ることになったのだ。
すると、海は柚へと急に手を差し出した。そして、柚は思わず手を重ねたら呆れられてしまう。
「疲れたから甘いもの食べたい」
いきなり海は切り出した。
「貰ったチョコは?」
問いかける柚。
しかし、海は柚のその問いにまた呆れて言った。
クールな物腰ながらも、少し照れながら。
「柚から……欲しい」
そう言われて、柚は作ってきたチョコをドキドキしながら渡す。
「義理……じゃないですよ。えっ――」
チョコを受け取った瞬間、海は柚をぎゅっと抱きしめた。更に、驚いて顔を上げた柚にキスをする。
「このキスが……返事……だから」
照れたように言う海。
そして、二人はお互い照れながら笑顔で寄り添って家へ帰ったという。
現代日本。パラミタのない世界。
これはそんな世界での恋物語。