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Let’s鍋パーティ!

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アタリを引くのは誰?

 森の一角に集まってクジで当たった材料を見せ合っている輪になった六人の人たち。
 七瀬 歩(ななせ・あゆむ)はすき焼き用の特上牛肉を引いたのを前に出し、同じく特上の牛肉を引いた樹月 刀真(きづき・とうま)漆髪 月夜(うるしがみ・つくよ)も同じように前に出した。
 刀真と月夜の隣に座っていた桐生 円(きりゅう・まどか)もえいっと前に出すが、それはモツたハセといった普通の並みの肉だった。
 続いてロザリンド・セリナ(ろざりんど・せりな)が麻袋から出したのは林檎。
 最後に牛皮消 アルコリア(いけま・あるこりあ)はいちごを前に置く。
 特上の肉が二種類に果物二種類の中、円はグループの中で並みの肉を引いてしまったことに顔を青ざめ、いきなり土下座をしだした。

「安いお肉引いてしまってすみませんでしたぁーッ! いえ、A5様の前で表を上げるだなんて、ボクにはできないよ!」
「それなら上げなくても良いですよ?」

 微笑みながらアルコリアは円の頭を靴で撫で始める。

「取りあえず、お菓子が入ってなくて良かった事にするか」
「そうだね」

 円をいじるアルコリアをそのままに話を始める刀真。
 それに相槌を打つ月夜に合わせ、他の面々も頷く。

「良いお肉もあるし、あたしたちが攻めなくても十分だよね!」
「そうですね」
「それじゃ、俺たちから食材を狙う事はしない。襲ってくる者には容赦なく叩く、という事で良いか?」
「良いと思うよ! あ、でもさ。一人でいる子とかは誘わない?」
「お菓子を引いてしまった方は遠慮したいものですが」

 一通りいじる事に満足したアルコリアが刀真たちの話に入ってくる。円は土下座の状態から未だ身を起していない。

「その時はその時で良いじゃん」
「それで大丈夫なのかな、刀真?」
「ま、なんとかなるだろ……で、だ。チーム分けなんだが」

 刀真の考えで刀真と月夜が一人でいる人を探しに行き、残った者でトラップを仕掛けることで話はまとまった。





◇          ◇          ◇






 刀真たちの作戦がまとまる頃。
 別の場所でお菓子を引いてしまい、引きつった笑いを浮かべているセレンフィリティ・シャーレット(せれんふぃりてぃ・しゃーれっと)と呆れているセレアナ・ミアキス(せれあな・みあきす)がいた。

「流石にお菓子を鍋の中に入れるわけにもいかないし……とにかく、お菓子じゃお鍋なんてできないわ!」
「セレンなら普通に鍋に入れると思うけど」
「入れないわよ! こうなったら見つけた人、片っ端から襲撃するしかないわね」

 セレンフィリティはスポンジ製の槍をセレアナに渡し、自分はスポンジ弾が入っている銃の確認をすると、気合を入れると森を突き進んでいく。
 セレアナはため息をひとつついてから後を追う。


………
  ………
    ………


 樹の陰に身を潜めているセレンフィリティを見つけたセレアナ。
 セレンフィリティの視線の先には1つの麻袋を挟んで向かい合っている橘 舞(たちばな・まい)ブリジット・パウエル(ぶりじっと・ぱうえる)がいる。

「どうするのよ、これ……」
「なに言ってるの、これはヴァイシャリー産の最高級よ。蛋白な中にほどよい甘さもあって、鍋に合うはずなんだから、絶対死守しなきゃダメなんだから」
「最高級と言ってもこれは、ちょっと」

 戸惑う舞にブリジットは、麻袋に入っている肉がいかに美味なのかを語る。
 そこへやや乗り気がイマイチのセレアナが現れ、スポンジの槍でシーリングランスを繰り出してくる。
 突然の襲撃になんの対応も出来ずに技を防がれてしまう舞とブリジット。

「これでも喰らいなさい!」

 セレンフィリティの声が聴こえたかと思うと、どこからともなく放電実験の電撃が飛んでくる。

「「きゃーーーー!!」」

 感電する舞とブリジット。木の陰から出てきたセレンフィリティは落ちている麻袋を漁る。

「ふふん。油断大的ってね。さぁて中身は何かな?」

 麻袋から出てきたのはカエル。しばし固まるセレンフィリティ。正気に戻ると麻袋ごとべしっと投げ捨ててその場から逃げていった。

「いやーーーー! カエルーー!!」
「あ、待ってよ、セレン」

 逃げていったセレンフィリティを追って麻袋は拾わずにこの場から去るセレアナ。
 感電の麻痺から復活した舞とブリジットは起き上がり、投げ捨てられた麻袋を拾いあげる。なんとなしに視線が合う二人。

「えっと、助かったのかな?」
「一応、多分」
「そ、そっか」

 無言が続き、ざわざわと風が吹いてくる。どちらかと言わずに移動を始めた。





◇          ◇          ◇






 チームを組む為に仲間を探している長原 淳二(ながはら・じゅんじ)笹奈 紅鵡(ささな・こうむ)と出会う。

「あの、もしかして一人ですか?」
「そうだよ、あなたも一人?」
「はい。今、仲間を探しているところなんです」

 お互い仲間を探している者同士、意気投合し共に行動することになった。
 なんの食材を集めようかと相談し、とりあえず肉類を狙う事で話はまとまる。

「あ、あそこにいる人」
「えぇ、一人ですね」

 紅鵡が眼で合図を淳二にする先には釣りをしている四条 輪廻(しじょう・りんね)の背が見える。
 紅鵡はカモフラージュしながらスポンジ弾を発射させた。輪廻の足元付近に全弾命中する。
 食いついていた魚に逃げられる。
 輪廻の背に銃を突きつける紅鵡。

「動かないで」
「手に入れた食材を渡して下さい」
「……バカかお前らは、鍋なんだから大勢で食ったほうが楽しいに決まっているだろうが」
「だから?」
「俺と共に鍋を作ろうではないか、ということだ。ここに魚もある。これ以上新鮮な材料もないだろう。まぁ、味のほうは知らんけどな」

 偉そうに上から目線で紅鵡と淳二を誘ってくる輪廻。紅鵡と淳二はそれを呑み、三人で行動を共にすることなった。