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【冬季ろくりんピック】雪山モンスター狩り対決

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【冬季ろくりんピック】雪山モンスター狩り対決

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「腹が減っては狩りができないから、まずは腹ごしらえをしないとな。ほら、肉が焼けたぞ」
 桜葉 忍(さくらば・しのぶ)がぐるぐる肉焼きセットで焼いた肉を織田 信長(おだ・のぶなが)に差し出そうとして、
「お前、それは私の肉じゃろうて!」
「ふーんだ、がぶがぶがぶッ」
 朝野 未沙(あさの・みさ)が奪い取り、それを強引に食べた。
「なんとかせい!」
 その言葉は氷室 カイ(ひむろ・かい)に向けられた。
「う、む……。まあ、なんだ。こちらとしても来ないとは思わなかったんだ、許せ」
 カイはフリューネ・ロスヴァイセ(ふりゅーね・ろすう゛ぁいせ)に助っ人を依頼したのだが、彼女は観戦を決め込み、首を縦には振らなかった。
 おかげでフリューネに良い所を見せたかった未沙がプイと拗ね、現在に至る。
「いいよぉだ。フリューネさんがちゃーんとテレビで見ててくれるなら、それでいいもんね!」
「なら私の肉を返せッ!」
「もう食べちゃったもん! 忍さん、おかわりッ!」
「忍よ、もうこやつに肉は与えんでよい。それよりも私の肉を焼くのじゃ!」
「あはは……」
「何だかすまないな。俺も焼くのを手伝う。ベディ」
「承知しました」
 カイがパートナーのサー・ベディヴィア(さー・べでぃびあ)にも手伝わせ、3人で肉を焼いた。
 ちょっとした露天商の気分だ――。
 忍が焼いた肉は信長と未沙の奪い合いにより、なくなったが、カイ達が焼いた肉はセレンフィリティ・シャーレット(せれんふぃりてぃ・しゃーれっと)セレアナ・ミアキス(せれあな・みあきす)に渡された。
「うーん、ここで食べちゃっていいのかしら?」
「意外だな」
「セレンにそんな女性の品格が残っていたなんて……驚きだわ」
「え、だってドラゴンをやっつけたら、皆で突撃ボタン鍋大会でしょ? その後には温泉が待ってるし……。そこでお腹を満たしたいわよね。それまでは空腹は最大の調味料ということでっ」
 開いた口が塞がらないとはこの事だった。
 そんな先の予定まで決めているセレンフィリティはセレアナの分の肉も取ると、小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)コハク・ソーロッド(こはく・そーろっど)に渡した。
「はい、美羽とコハクの分よ」
「ありがとーセレン」
「ありがとうございます」
 わーいとそのままもらった肉を美羽とコハクは口に運んだ。
「でも美羽……本当に龍を狩るの?」
 心穏やかなコハクにとって、大型モンスターと戦うことはあまり好ましくなく、また、美羽を危険な目に曝すのも避けたいことだった。
「もちろんだよっ!」
 美羽ははむはむと小さな口を動かして肉を飲み込んだ。
「さあて、第三走者だよ、元気だしていこー!」
 遠くから聞こえた咆哮を耳に、コハクは論じている時間などないと客観的に理解し、美羽同様急いで肉を飲み込んだ。
「よし、先鋒で出るぞ」
 カイがスノーモービルに跨ると、その後ろにベディヴィアが座り、更には未沙が立ち乗りした。
 ウゥン――!
 低いエンジン音と共に3人が出撃した。

*

「中々に手負いだな」
「まずは降りてきてもらわないとだね、よっと」
 未沙がモービルから降りると、飛行して上空を通過しようとするドラゴンに向かってタービュランスを唱えた。
 発生した乱気流にドラゴンは飲み込まれ、必死に羽ばたいて抵抗するも、木々を薙ぎ倒しながら墜落した。
「いえい、さすがあたし! フリューネさん見てるかな!?」
 自分の活躍を見ていてくれるだろうかと、何所かが映しているだろうカメラを未沙は探していた。
 地に伏したドラゴンは怒り心頭――正に顔を灼熱に染め上げ、口内から湧き上がる火球を放った。

*

「危ないッ!」
 余所見をしていた未沙をベディヴィアが小脇に抱きかかえ、火球の進路から救い出した。
「こんな時に余所見とは感心しません。ですが、私は貴女達の盾です。如何なる攻撃からも守りきることをお約束しましょう」
 歴戦の彼の守備を重視した構えは、長寿のドラゴンから見ても、中々に隙がないと感付かせるものだった。

*

「あはは、ごめんごめん、つい調子に乗っちゃって。じゃ、こっからは本気で行くよ!」
 睡眠薬を刃に塗ったハルバードを頭上で振り回し構えると、一気にゴッドスピードで駆けた。
「どおぉりゃあッ!」
 ドラゴンの爪を回避し、未沙が大きく頭上へ飛び上がると、その眉間目掛けて龍飛翔突を放ち、エアリアルレイヴと続けざまのコンボを繋いだ。

*

「やるな……ッ」
 ドラゴンが痛みに仰け反ると、連動した腕や背中から翼が大きく広がり――それはより大きな的に見え――カイから見ても絶好の機会だった。
「が、怒り狂ってどうなるかわからない相手だ。念には念を入れて、俺はこのまま攻撃させてもらう」
 スノーモービルの上から、カイは妖刀の引き金を引いた。
 レーザーキャノンがドラゴンの翼に焼き穴を空けると、カイに向けて火球で反撃をするのだが、
「言ったはずです。私は盾だと――」
 ベディヴィアが今度はすかさずカイの前に立ち塞がり、火球をいなすように防いでは直撃を避けた。
「このまま穴開きチーズにしてやるよ……」
 二度目のレーザーキャノンにドラゴンは堪らず呻き声を上げて仰いだ。
「そのまま地を這いつくばらせる」
 スノーモービルを巧みに操りながら、カイは執拗に翼を攻め立てた。