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リアクション
アキラが愉快な花を手に入れて飛び去る空の下、のんびりと時間が流れているとあるオープンカフェ。
「今日はお天気で良かったね」
「えぇ」
綾原 さゆみ(あやはら・さゆみ)とアデリーヌ・シャントルイユ(あでりーぬ・しゃんとるいゆ)はたまたまこの街に遊びに来ていてゆっくりと一休みをしていた。
「今度はどこに行こうか」
さゆみはホットココアを飲みながら、楽しくアデリーヌに訊ねた。
「……そうですわねぇ」
のんびりとした周囲の風景を眺めながら考えていたアデリーヌの目がさゆみの背後に広がる風景に釘付けになった。
「後ろに何かあるの?」
気になったさゆみはくるりと背後を振り返り、アデリーヌが見た物を確認した。
「うわぁ、花がやって来るよ。街全体がお花畑って綺麗でいいよね。今日、この街に来て良かったよ」
様々な色の花の絨毯が広がり、自分達の方にやって来る。まさか、たまたま遊びに来た街でこんな素敵な体験をするとは思いもよらず、とても嬉しくなった。
「ただの花畑なら素敵ですけど、あれは危ないですわ」
アデリーヌは、楽しそうにしているさゆみを窘めようと暴れて近くの物や人にやたらと絡まっている蔦を指さした。
「……綺麗なだけじゃないってことだね。花畑の中でホットココアって素敵だと思ったのに」
さゆみは、少し残念に思いながらも気を取り直し、カップを置いて立ち上がった。
「援護はしますわ。蔦であれあなたに害なすものは触れさせやしませんわ」
アデリーヌも立ち上がり、二人は襲い来る花の行進を迎え撃った。
「植物にも音楽を聞かせたら生長が早くなると言うし」
そう言ってさゆみは、『悲しみの歌』と『震える魂』で増殖する花を意気消沈させ、勢いを削ぎ、『幸せの歌』に切り替えて花達の心を穏やかにして増殖に歯止めをかけた。
歌っている間、蔦が絶えず襲って来たが、さゆみは気にしなかった。なぜなら、そのどれもが自分に辿り着く前に焼き払われていると知っていたから。
「確かに花は綺麗ですけど、わたくしにとって何より美しくて大切なのは……」
アデリーヌは一番の大切な者、歌っているさゆみに視線を向けた。
蔦は全てアデリーヌの『天のいかづち』によって葬られていたのだ。
増殖する花の動きを完全に止めた二人は、
「少しずつ枯れているみたいですから。このままにしておいても大丈夫ですわね」
「……少し休もう……ってあれは」
増殖が止まり、ゆっくりと枯れ始めている花の様子を確認した後、一休みをしようとしたが、出来なかった。
突然、かなり巨大化した踊り狂う花とそれを追いかける朋美とウルスラーディが現れたのだ。
「怪我は無い?」
朋美は消臭剤で匂いを無力化し、さゆみやアデリーヌ達に被害が及ばないようにしてから無事を確認した。
「……怪我は無いよ。でも花が増えたり踊ったり、何かあったの?」
さゆみは自分達が遭遇した花畑のことを朋美に訊ねた。
「増殖する花を何とかしてくれたんだね。実は大変なことになっていて」
朋美は花屋シャビーで起きた事件のことを話し、自分達が散歩する花を追っていることも付け足した。
「そういうことですか。まだあのような花はいるのですか?」
「いくつかね」
アデリーヌは納得し、まだ存在するのか訊ねた。
「だったら私達があれを何とかするよ」
さゆみは協力を決め、先を歩く花を見つめた。
「だったらこれを」
持っていた消臭剤セットとティッシュをそれぞれ二人に渡した。
「……ティッシュに消臭剤」
受け取るなりさゆみは改めて朋美やウルスラーディの顔、特に鼻にあるティッシュに目がいってしまった。渡されたティッシュの意味はそれだと。
「あの癒しの匂いは人を腑抜けにするから使って。見かけなんか大したこと無いんだから」
朋美は、注がれる視線が何を言っているのか察し、指摘される前に平気さを強調した。力強い声があまりに滑稽さを強くするが。
「……あ、ありがとうございます」
「……事情をありがとうございます」
優しいさゆみと温厚なアデリーヌは、鼻ティッシュを深く追求しなかった。
「朋美、他の花を追うぞ」
「うん、急がないとね」
朋美とウルスラーディは他の花を追って行った。
「あんなに楽しそうだとノリのいい曲を奏でたくなるけど残念」
そう言ってさゆみは、『悲しみの歌』と『震える魂』で動きを鈍らせ、『嫌悪の歌』と『恐れの歌』を続けて歌い、花に嫌悪や恐怖を抱かせ、振りまく匂いを止め踊りではなく震えを走らせた。アデリーヌは、消臭剤で匂いを無力化していた。
しかし、花は捕獲して花屋に届けるにはあまりにも大きいので
「このままにはできませんわね。動き出して迷惑が増えると困りますもの」
アデリーヌが『凍てつく炎』で片付けた。街の人、何よりさゆみを襲わないように速やかに。
「様子が気になるから花屋シャビーにも行ってみようか」
「そうですわね」
二人は様子を見に花屋シャビーに向かった。
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