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Cf205―アリストレイン―

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7.順従なる信仰狂
――、セレモニー車


 一つの銃声はここより聞こえた。
 誰も撃っては居ない。ただ、それこそ歓声と言わんばかりに、ローブ服の男がステージのマイクを前に立っていた。
 彼が引き連れたものたちは銃声を合図と勘違いし、各々の武器を構えた。火薬と鉛のつまった。
 マイクを介して、男の声がスピークする。
「皆さん、落ち着いてください。出来れば動かないでください」
 一呼吸。
「ワタクシは【パラミタ十字教団】の創始者。【キング】と名乗っています」
 一呼吸。
「彼らは、ワタクシの弟子と、要人警護のために雇った傭兵です」
 半呼吸、
「ご安心ください。あなた達に危害を加えたりはしません」
 一呼吸。
「ですから――」
「ですから? なに?」
 ドレスを破く音。
「せっかく人がいい夢気分でいたのに、ぶち壊してくれたわねテロリスト」
 セレンフィリティが毒吐しながら、ヒールの踵を折る。
「で? 銃を使って脅し? 軍服もいるのに? 馬鹿じゃないの?」
 怒り心頭の彼女に、キングが再度警告する。
「やめなさい。動かないように――」
 銃口がセレンフィリティに集中する。動きを止める。小さな悲鳴。
「だから、それが、どうしたってのよ!」
 動きを止めていた彼女が幻覚でブクブクと膨れ上がったように見え弾ける。《その身を蝕む妄執》と《隠れ身》の併用。幻覚に気を取られているア間に武装者の背後に現れ、首筋めがけて飛び蹴り。鈍い音。
 セレンフィリティの本体を追うアサルトライフル銃口に反応するようにセレアナが《隠形の術》でそれに近づく、《則天去私》で銃身を砕く。連続して使用者を蹴り伏せた。
 武装者たちは、反攻する二人を仕留めようとする。現在13対2――
「やめなさい!」
「やめなさい!」
 二つの声が重なる。一人はキング。一人はルカルカ。
「やめなさいセレンフィリティ。”壊し屋”の働きはそこまでにしてくれないかな? そっちもいいかな、王様?」
 キングが彼女の言葉に頷く。銃が降ろされる。
「あなたもよ?」
 リカインの手が止まる。台無しにされたステージを【レゾナント・アーム】で吹き飛ばしてやろうかとしていたところだった。感情を押しとどめる。
「でも……!」
「落ち着け、キングを名乗る彼の言うとおりにした方がいい。それに」
 ダリルが宥めに入り、告げる。
「銃声が聞こえたのは寝台車両からだ。彼らじゃないつまり」
「つまり、テロリストは別にいるってわけ?」
 天貴 彩羽(あまむち・あやは)がキングの前に出る。
「それで、あなたは銃声を聞いたあなたは、雇った兵でこの場を制圧しようとした。混乱を抑えるために。ってところかしら」
 キングが答える。
「そうです。多少行き過ぎた対応でした。皆様にはお詫びを申し上げます。誠に申し訳ございません」
 重々に頭を下げる。
「それで、一個小隊雇う新興宗教家のあなたは何をしたかったの? まさか、本当にテロかトレインジャック宣言でもしたかったわけ?」
 彩羽の言葉に頭を振り、キングが答える。
「いいえ、ワタクシはこの列車に乗るある人を追ってここに来ました。その人を保護したいのです」
 続けて言う。
「その人はワタクシたち十字教団に必要な方なのです。あの方は救世主として、人々を導いてくれます! その力があるかる方なのですすょくをラ です!るAPこの車両は一応コンプリートだ。ちょうどいいから し、るははロールすす。わうんwいだねンコツ機械を見つける。 」
 熱弁を振るうキングに彩羽の青筋が立つ。
 パラミタ十字教団のことは知っている。最近パラミタに現れた土地信仰型の宗教団体だ。彼らは神を崇めるのではなく、土地そのものを崇める。彼らの信仰の十字架が表すのはパラミタと言う浮遊大陸そのものだ。天に浮く大陸を約束の地になぞらえて捉え、汚れた大地から人々を救う楽園であり、方舟であると称している団体。
 傍目から見れば危ない宗教団体に思えるが、妄信者に見えるが、救いを求める者たちには、元来の宗教よりも明確な信仰の対象がある。神秘の大陸がだ。
 とは言え、このパラミタもカオスに満ちている。カオスに満ちた約束の地で彼らは救世主に誰を求めているのだろうか?
「で、そのメシア様は誰なの?」
「ワタクシも顔を拝見してはいないのですが、名前はわかっています。救世主は……いえ、聖女(マリア)様と言うべきです」
 導きの聖女の名前は――
「”アリス”――それが探している聖女の御名です」