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リアクション
『はーい! 倒れていた審査員の人達の回復も終わったよー!』
『審査員達の使用済み回復薬がどんどん増えていくよ! これに耐性つかないよね?』
『それは美羽にも解らない! よーし、尺もあるしどんどん行くよー! コハク、次のジャンルは何!?』
『えーっと、次からは『和食』のジャンルに入るよ!』
『それじゃ次から『和食』ジャンル、DIEジェストで逝ってみよう!』
「僕達は肉じゃがを作ったよー」
ユーリ・ユリン(ゆーり・ゆりん)、トリア・クーシア(とりあ・くーしあ)、フユ・スコリア(ふゆ・すこりあ)の三人が出した料理は肉じゃがであった。
「……見た目は普通だな」
「私が教えたんだから当たり前よ」
正悟の呟きにトリアが自信ありげに胸を張る。
「そうか……こんなの入れろって教えたわけか」
顔を引き攣らせながら正悟が箸で持ち上げたのは、一口サイズの石であった。
「……え? 何あれ? 私あんなの入れた覚えないわよ?」
「ぼ、僕も……というか石なんて持ってきてないよ!?」
トリアとユーリが突然の事に慌てふためく。だが入っている事実は覆らない。鍋をかき混ぜてみるとゴロゴロと石が出てくる。
「……あれ? お肉無いよ?」
「お肉を切っていたのは……スコリアよ?」
「切るのは任せろー!」
やめて! って今回何度目だこれ。
「「……ん?」」
そこでユーリとトリアがある事に気付く。それはスコリアが持っている刃物――【さざれ石の短刀】である。
「……え? これでお肉が石に?」
「ちょっと……あれって【生物を刺したら石化】じゃなかったっけ……?」
ユーリとトリアが首を傾げる。
「お肉が【ナマモノ】だからじゃないのー?」
スコリアが言う。流石コメディ。その場のノリで適当にOK出しまう。いいのかそれ。いやよくない。
「ま、肉退ければ普通に食べられそうだし……ん?」
菫がふと、肉じゃがのジャガイモを食べて何かに気付いた。
「これは……って、あ」
菫が振り返ると、正悟とハーティオンとラブ、そしてベアードが石化していた。
「……やっぱり、石化薬みたいなの入れてたのか。中々やってくれるじゃん?」
菫がジトっと睨み付けるとユーリとトリアがぶんぶんと首を横に振る。
「入れたー!」
が、スコリアが自信満々に【この薬飲んだら石化しちゃうんで飲むなy(以下略)】というラベルが貼られた瓶を掲げる。
「石化は任せろー!」
もう言わないからな。
「……ユーリ、後で食べさせてあげようか?」
「いや、遠慮しておく」
トリアの言葉にユーリが首を横に振った。
結果としては菫が肉以外(流石に石は無理だったようだ)を食べきり、正悟、ハーティオン、ラブ、ベアードが石化した為リタイアとなった。
ちなみにドラゴランダーは『肉が無いのかよ! 野菜ばっかで食ってられるか!』と放棄していた。
「……なぁ、確かお前が作ったのはなんだったっけ?」
顔を引き攣らせながら御宮 裕樹(おみや・ゆうき)が問うと、『ビシィッ!』という効果音が付きそうなポーズで久遠 青夜(くおん・せいや)が答える。
「てんぷらつくったよ!」
「そうだよなー……俺も確か途中までは見ていたはずなんだがな……」
そして裕樹が審査員席を指さした。
「何処をどうなればああなるんだ!」
審査員席に置かれた物は、うどんの器。しかし中に入っている物は、真っ黒でうじゅるうじゅると動くよく解らん物体。何だこれ。
「あるぇー? すうどんできちゃったよー?」
「お前今なんて言った。あれがうどん? 素うどんだっていうのか?」
「あるぇー?」
青夜が首を傾げる。
更に素うどん(?)は付け合せの抹茶塩をかけると、何事か蠢きだした。よく聞くと『タベテェ……タベテェ……』と言葉のような物を発している。
そして、うどんは審査員達に自らにじり寄る様に迫っている。まるで、自ら食べられようとしているかのように。
「最早ありゃモンスターじゃねぇか! うどんですらねぇよ!」
審査員達はうどんという名のモンスターと戦っていた。そりゃそんなもん腹に入れたらどうなるかわかったもんじゃない。
やがて、うどんを殲滅させ、肩で息をする審査員達に青夜は言った。
「おいしかった?」
『帰れよもう』
裕樹含め、全員に言われ(´・ω・)と青夜は肩を落とした。
「よくもまぁ……」
「このくそ暑い季節に……」
「ここまで酷い物を……」
セレンフィリティ・シャーレット(せれんふぃりてぃ・しゃーれっと)、セレアナ・ミアキス(せれあな・みあきす)の二人が出した料理を見て菫と正悟とラブが顔を顰める。
出てきた物はこの糞暑くなろうとしている時期に鍋。じめじめして蒸し暑いこの時期に鍋。
それだけでも殺る気満々だというのに、鍋の中身が既に危険である。
毒々しく真っ赤なドロドロとした液体がボコボコと音を立てている。一応注意しておくが溶岩ではない。麻辣味香辛料をベースとしたスープに熱を持続させるため片栗粉を、赤みをつける為に食品着色料とかを大量にぶち込んだ結果がこれである。
「そんな文句言ってないで食べなさいよ、あたしたちの麻辣火鍋を」
流石に暑いのだろう。セレンフィリティもセレアナも水着になっている。
「セレン……流石にこれは……ねぇ」
躊躇する審査員に、セレアナも困ったような表情を浮かべる。
鍋の中にガンプラがどこぞの青沼さんみたいに下半身が突き出している。
それだけではない。よくよく見ると爆竹、画鋲、有刺鉄線や雑巾なんて物が浮かんでいる。一応食べられる食材もあるので、闇鍋にもってこいだ。嫌なもってこいだ。
「え? だってゲテモノ料理作ればいいんでしょ?」
然も当然、という風にセレンフィリティが言う。限度がある限度が。
審査員同士が目を合わせる。何を言おうとしているか、口にしなくてもお互いに通じていた。
「「「ギブアップで」」」
「えぇー!? 何でよー! 作り損じゃない!」
「いやいや、そんなもん食わなくても死ぬのが見えてる!」
正悟の言葉に菫も頷く。セレアナも「まぁ当然ね」と一緒に頷いていた。
「そもそも溶岩か、ってーのこれ……絶対辛いわよね?」
「ふっふっふ、辛さにパンチを加える為に世界最強の唐辛子ブート・ジョロキアを大量にブチ込んどいたわ」
「んなドヤ顔で言われても食べられるわけないっての! 却下却下!」
ドヤ顔のセレンフィリティに菫が手でバツ印を作る。
「だが皆、敵を目の前にして逃げるというのはどうかと私は思うのだが」
「錆びるのが目に見えているからやめておきなさい。多分ドラゴランダーも」
ラブに言われ、ハーティオンが言葉に詰まる。
「……吾輩……ハ……?」
「爆竹とかで死ぬわね、きっと」
「……ヤメル」
「というわけで、全員ギブアップで」
結果、全員が一致してギブアップという高評価で終わった。
「ぐぬぬ……」
「はいはい、評価高かったんだからよかったじゃないの」
ただ一人、納得いかない様子のセレンフィリティをセレアナがポンポンと肩を叩き慰めていた。
「……普通、ね」
「……普通、だな」
毒島 大佐(ぶすじま・たいさ)が出してきた料理を食べながら、菫と正悟が首を傾げた。
大佐が出してきた料理は、魚介類に菜っ葉やキノコといった物が煮込まれた鍋であった。
「……いや、ちょっとタンマ。普通でいいんじゃないの普通で!? ……でもまぁ確かにこの異常な状況下じゃ普通な方がおかしくなっちゃうけどさ、オチはハーティオンがやってるんだからいいじゃないもう」
ラブの視線の先には、鍋の汁で錆びて固まっているハーティオンが居た。ドラゴランダーは野菜が多いので、食べずにふて寝している。
「私の必殺鍋のお味はどうかな?」
不敵な笑みを浮かべて大佐が問う。既に鍋の中身は空になっていた。
「うーん……味は良かったんだけど……何か気になるのよねぇ……あんた何企んでんの?」
菫がジトっとした目で大佐を見るが、「その内解るさ」と何処吹く風だ。
「……何か怪しいのよねぇ」
空になった鍋を見た、瞬間。
――バタン、と何かが倒れる音がした。
「え?」
見ると、菫以外の鍋を食べた者達全員が倒れている。口元からは泡を吹き、白目を剥いている。
「どうやら効果が出たようだな……まぁ1名耐えたようだが」
ニヤリ、と大佐が厭らしい笑みを浮かべた。
「……何を入れたのよあんた?」
「口で説明するのは面倒だな」
そう言うと、大佐が入れた物をメモに書きだした。
魚介類
・アオブダイ:内臓に食中毒を引き起こすパリトキシンやテトロドトキシンが含まれる
・ドクウツボ:生物濃縮による高濃度のシガテラ毒を体内に保有している
・スベスベマンジュウガニ:麻痺性貝毒の成分のゴニオトキシン、サキシトキシン、ネオサキシトキシン、テトロドトキシンといった物が体内から検出される
・トラフグ:内臓(特に肝臓と卵巣)にテトロドトキシンが含まれる
菜っ葉
・ドクセリ:シクトキシン、シクチンという痙攣や呼吸困難等の症状を引き起こす毒成分が含まれる
・ドクウツギ:痙攣や呼吸困難を引き起こすコリアミルチン、ツチンなどの有毒成分を含む
・トリカブト:ジテルペン系アルカロイドのアコニチンを始め、その他諸々の毒成分を含む
・ドクニンジン:コニイン等の各種毒性アルカロイドを含む
茸
・シャグマアミガサダケ:ヒドラジン類の一種であるギロミトリンといった有毒成分を含む。ちなみに見た目もかなりグロい
・カエンダケ:マイコトキシン(カビの二次代謝産物として産生される毒の総称)が検出されている。古くから中毒症状を引き起こしてきたという資料が存在している
・ドクツルタケ:『猛毒茸御三家』『死の天使』などと称される極めて毒性の強いキノコ
・タマゴテングダケ:猛毒茸御三家の一つ。コレラの様な症状を引き起こした後、小康状態を挟んで内臓の細胞を破壊する二段階の中毒症状を起こす。解毒剤は存在しない
・コレラタケ:ドクツルタケ、タマゴテングタケと同じアマトキシン類による症状を引き起こす
・ドクササコ:軽い吐き気などの症状の後、激痛が生じる腫脹が生じるという特異な中毒を引き起こす
おまけ
・砒素:これ以上言わなくてもわかるな?
「殺る気満々じゃねーかあんた!?」
「私に情けや容赦を期待するな」
容赦が無いにも程がある。一つでも十分な代物だというのに、それを複数混ぜてきた。毒が裏返るんじゃないか、とも思う。
「致死量ぶっちぎってるにも程がある……コメディじゃなかったら即死だぞこれ……」
菫の頬に冷たい物が伝う。というかコメディでなければ無理だこんなの。ミステリーだってもっと手加減する。
時にコメディは容赦ない。そう感じさせる料理であった。
ちなみに倒れた審査員達は一命を取り留めた。流石コメディ。
「さて、次は私達ですね」
フィアナ・コルト(ふぃあな・こると)が配った皿を見て、正悟が凍りつく。
「おい、聞きたいんだが……これは何だ?」
「はて、刺身ですが?」
フィアナが言う通り、皿の上には薄く切られた刺身が、フグ刺しの様に皿に沿って盛られていた。
「いや、刺身なら刺身でいいんだ、普通の刺身なら……でもこれは言わせてもらいたいんだが……これは肉だよな? 魚じゃなくて」
正悟の言う通り、皿に盛られている刺身は魚ではなく肉。しかも一種類だけではなく、数種類の肉が全て刺身になっていた。
「ええ、牛、豚、鶏を用意しました」
「元々肉料理をやる予定だったんだけどな……」
フィアナの後ろに隠れるようにしていたカレン・ヴォルテール(かれん・ゔぉるてーる)が呟く。
「……加熱処理は?」
僅かな希望に縋る様に正悟が問うと、自信満々にフィアナは言った。
「新鮮な素材の味を生かしているので、その様な事は一切加えていません。さぁ召し上がれ」
「召し上がれるかぁッ!」
正悟が吼える。隣では菫とラブがうんうんと頷いていた。その横でベアードもそっぽ向いている。
基本的に豚、鶏の生食は病原菌が潜伏しているため食中毒の可能性が高いとされている。牛の場合は危険性が低いとはいえ、食中毒の可能性が無いわけではない。感染した場合死者も出る。
また、豚肉の場合『有鉤条虫』という寄生虫が存在しており、寄生された場合この寄生虫の発達途中にある『嚢虫』が体内に増殖していく。目や脳で作られた場合、重篤な症状を示す。
「……って、書いてあるんだぜ」
カレンが持っていた【パラミタ版 家庭の医学】をめくりながら言う。
ちなみに余談であるが肉の生食は全く不可、というわけではなく新鮮な物だったり、特殊な飼育をしている物の肉であれば生でも食せる。だが信用できるものでない限りは避けた方がいいと思われる。
「というわけで俺は断る! もう食った後にトイレを住家にするっていう未来が何となく見えるからな!」
正悟が言うと、他の面々も頷いた――『機械だから大丈夫だろう』というハーティオンと、肉というだけで飛びついたドラゴランダーを除いて。
「……ハーティオン、後で虫だらけになってないかしら……」
ラブが呟く。その後ハーティオンの体内が若干変な感じになったらしいが、真偽は定かではない。
「さて、いよいよ私達の出番が来たようだねぇ……」
ゆらりと現れたのはアヴドーチカ・ハイドランジア(あう゛どーちか・はいどらんじあ)。手には相棒、バールを携えている。
「それでは我々の料理、味わっていただくとしましょうか」
クロセル・ラインツァート(くろせる・らいんつぁーと)が、クロッシュを被せた皿を持ち、天使の笑みを浮かべて後に続く。天使と言っても頭に『ペ』がつく方のだが。
「さて、こういうのはテンポが大事という事でサクサクっと行きましょうかね! 我々の料理のコンセプトは『天国が垣間見える衝撃』! さぁ皆様に天国を見せて差し上げましょう! 俺達の料理を食らぇぇぇッ!」
クロセルがクロッシュを取り払う。
――そこに、幾多の物体が一つに収められ、塊となっていた。
どことなくツン、と鼻を刺激する臭いが漂っている。
「え? 何これ?」
「いやさっぱりわからん……」
「このような食べ物があるのか?」
「というか、食べられる物かどうかもわかんないんだけど……」
「……ヒ……トオッテナイ……」
「グォォォォン!」
審査員が口々に疑問を並べ立てる。
「皆様が疑問に思うのも無理はありませんね……それでは解説させていただきましょうか。我々の料理は、ズバリ『サバのタタキいため』でございます!」
クロセルの言葉に、審査員一同塊を凝視する。言われてみれば、サバのような物が見える……気がする。が、あくまで見える気がする程度。他に埋もれている為はっきりとは分からない。
「今回のこの料理バトル、バトルというからにはスピードが命です! その為にあえて食材を『いためて』参りました!」
よく見ると、周りに小バエがプンプンと飛んでいた。
「ってそっちの『傷める』かよ!」
正悟が叫んだ。ツンとくる刺激臭は腐敗臭によるものである。
「いやはや苦労しましたよ、足が早いとはいえ、傷めるのは時間がかかりますからねぇ」
「というか鯖以外にも色々あるけどこれは何なのよ……」
菫の言葉に、クロセルが超イイ笑顔になる。
「よくぞ聞いてくれました! サバ、といっても魚の鯖以外にも色々あります。今回は様々なサバを集めてみました! えーっと、確か俺が入れたのは生サバ、ビールサーバ、Webサーバにキャッサバ(勿論毒抜きなどしていない)、他にも草葉に生飯……」
「他にもサバイバルナイフも入れたな。その他諸々のサバという文字が入る物を入れている。勿論予め傷めておいてあるさ」
指折り数えるクロセルの横で、アヴドーチカがドヤ顔で言う。
「それらをアヴドーチカ先生自慢の相棒、バールによって叩いて叩いて叩きまくって、一つにまとめたのがこの料理!」
「全く、私の相棒は最高であるな!」
「これを食べれば天国が垣間見えるのは間違いなし! さ、もう既に傷んでいますが召し上がれ!」
「「「んなもん召し上がれるわけないだろぉぉぉぉぉぉ!」」」
菫、正悟、ラブで吼える。そらキレるわ。
「アヴドーチカ先生、今です!」
その瞬間を、クロセルは見逃さなかった。すかさずサバのタタキいためを3個掴むと、アヴドーチカに向かって放った。
「うむ! せぇいッ!」
そして、そのタタキいためを野球のノックの様にバールでスイング、スイング、フルスイング。
タタキいためはレーザーの如く一直線に吼える者どもの口へと叩き込まれた。
「「「さぶぁッ!」」」
そして、仰向けになってぶっ倒れる。
菫は整腸作用のある草葉にやられ、正悟は生サバでダウン。ラブは食らった衝撃に耐えられなかった。
「食べ方も我々は工夫していますよ! 皆様に美味しく頂けるように!」
ちなみにクロセルがいう『美味しく』はこの場合味ではない。
「さーてどんどん行こうかね! 頼むよお前さん!」
「イエッサ! 先生お願いします!」
そう言って再度、クロセルが3個放るとアヴドーチカが全力でフルスイング。
唖然としていたハーティオンの口に放られ、ダウン。ビールサーバの中身や鯖の腐敗液に負けたと思われる。
ベアードはラブ同様に衝撃で吹っ飛ばされダウン。ドラゴランダーは放られたタタキをかみ砕き、中に草葉やキャッサバといった物が入っている事に気付くと「ギャインギャイン」と、嫌がる様に首を横に振り、ばたりと横になってしまった。
「流石ですね先生! 皆さま天国を垣間見ている事でしょう!」
全滅する審査員を見て、クロセルが嬉しそうに言った。
「私だけではないさ……相棒の力があったからやれただけよ」
そう言うと、アヴドーチカは手に持つバールを眺め、しみじみと呟いた。
「って、なななな何病人作っているんですかー!」
後ろから慌てて高峰 結和(たかみね・ゆうわ)が現れる。
「すすすすすぐ手当しないとぉ! 皆さん顔色が! 顔色がとんでもないことにぃ!」
結和が審査員達に駆け寄り、手当をしようとする。
「「……うわ」」
クロセルとアヴドーチカが、結和の手に持っていた物を見てドン引き状態になる。
結和がもっていたのは、二人に『口直しにでも作っておけ』と言われ作っておいたデザートのにんじんジュレ……という名の精神的ブラクラ物質であった。
「え? あ、ここここれはお二人が作っておけって言った甘味で…‥」
「それでお前さんはトドメでも刺そうってのかい?」
「流石の俺もそれは引きますわ」
「そ、そんなことしませんよ! 二人ともそんなこと言ってないで手伝ってくださいよ!」
そう結和は言ったが、それほど彼女がもっていたデザートの見た目は酷かった。
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