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買い物禁止!? ショッピングモールで鬼ごっこ!

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買い物禁止!? ショッピングモールで鬼ごっこ!

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「さて、とうとう着いちまったか。にしても、大きいな」
 ショッピングモールを見上げてそう呟くのは、高円寺 海(こうえんじ・かい)だ。
 今回、人質に囚われている我らが災難体質ガール、雅羅・サンダース三世(まさら・さんだーすざさーど)の救出に来ていたのだ。
 このショッピングモールのどこかに閉じ込められているらしい。
「それじゃ海、よろしく頼む。俺はショッピングモールの外でシル・エッターが逃げないよう見張っているからな!」
 胸を叩いて言うのは山葉 涼司(やまは・りょうじ)だ。海、他の契約者に雅羅の救出依頼を出した張本人である。
 シル・エッターがモールから逃げ出さないよう蒼空学園の先生を連れてモールの外を見張るようだ。
「よーし、涼司が外なら私は中だね! 海、ダリルも早く雅羅を助けに行こう!!」
 やる気満々なのはルカルカ・ルー(るかるか・るー)だ。今にも一人で突っ込んで雅羅を助ける勢いである。
 それを冷静に止めようとするのはパートナーのダリル・ガイザック(だりる・がいざっく)
「まあ待て。まずは情報を纏めるところからだ。山葉、シル・エッターから送られてきたDVDはあるか?」
「悪い。ここには不要だと思って持ってきてはいない。だが、見た限りでは一筋縄ではいかないだろうな」
「お前がそこまで言うのなら、間違いはないだろう。問題は装置の方か」
「確かにな」
 山葉、ダリル、海が一様に頷く。と、待ちきれなくなったルカルカがダリルの手を引いて入り口のほうへと進んでいく。
「話してる暇があったらさっさと行こう! 時間は待っちゃくれないんだからさ」
「ちょっと待て。まだ話すことがあるし、何よりも一番の問題が残っているだろう」
「問題って?」
「その前に止まれ、じゃなきゃ―――」
 ダリルの制止も虚しく、ルカルカはショッピングモール内へと足を踏み入れた。瞬間。

シュー、バシュ、バシュンッ!

 何かの機械が作動した音がモール内に鳴り響き、二人の周りには白煙が上がっていた。
 何事かと海と山葉が近づく。だが、二人に異常は見受けられなかった。外見上は。
「大丈夫か!?」
「へ、平気平気。痛いとか、そういうのはないから。って何か声低い?」
「……だから言ったんだ。一番の問題が残っていると」
「これが、『人格シャッフル』の効果か……。ぷっ」
 思わず笑い出す山葉。それも仕方のないこと。今のルカルカはダリルであり、ダリルはルカルカなのだ。普段の行動一つ取るだけでもその違和感は拭えない。
「……覚えておけよ、山葉。笑われた借り、いつか返す」
「その姿で凄まれてもな」
「うわー! すっごーい目線高い! 海と同じくらいじゃないこれ!」
「お、おう。けどその姿であんまり普段通り過ごすと不気味だからやめておけよ」
 冷静なルカルカの姿、やたらテンションが高いダリルの姿。
「……DVDがないなら仕方ない、とりあえず俺たちは監視カメラの制御を乗っ取ってモール全体をカメラで探すとしよう。
 もしかしたそこにシル・エッターもいるかもしれないしな。ほら、さっさと行くぞ」
「わぁお! 光条兵器が出せる! 見て見て、海!」
「それは便利そうだな」
「置いていく」
「う、うそうそ! ちょっと目線が高くて光条兵器も出せたから驚いただけだって。ちゃんと雅羅のことは忘れてないってば!」
 そう言いながら二人は監視カメラの制御室へと歩いていった。
「っと、見ての通りだ。ここからは人格が入れ替わるから気をつけて行ってきてくれ!」
 山葉の言葉をきっかけに続々とモール内に入り、人格の入れ替えを止む無く終える契約者たち。不思議な状態での雅羅救出、マシーンの捜索が開始された。

 山葉はモールの外を、海は雅羅救出のため単独行動、各契約者たちもそれぞれの役割を達成するために動き始めていた。
 その内の一人である夜刀神 甚五郎(やとがみ・じんごろう)は自分のパートナーの三人である、草薙 羽純(くさなぎ・はすみ)ホリイ・パワーズ(ほりい・ぱわーず)ブリジット・コイル(ぶりじっと・こいる)を集めていた。
「あー、今から点呼を取るから返事をするよう。まずはブリジット」
「はいです」
「羽純の体か。次、羽純」
「何なのだよ?」
「ブリジットの体だな。それではホリイが……」
「甚五郎さんの体すごいですねぇ。向こうまで見渡せますよ〜」
「そしてわしがホリイの体と。……目線が低いな」
 誰が誰と入れ替わっているのかを把握していた。この状態で名前を呼ぶといろいろと面倒だろうと判断した甚五郎は先に点呼を取って把握しておこうと考えたのだ。
「よし、小難しいことはここまで。さっそくマシーンの捜索に取り掛かるとするか」
「はいです。どうやら監視カメラのチェックはルカルカさんたちが向かいましたから、私たちは地道に監視カメラの死角を探していきましょう」
「そうだな、よし! 三人とも行くぞ!」
 そう言っていつも通り走り出す四人。だったはずだが、足並みはバラバラだった。いつもの四人のように統率が取れている動きは難しいようだ。
「うぬ、どうにも歩きににくいのう。ブリジットや、どうしたほうが早いのじゃ?」
 問いかけられたブリジットは盛大にこけていた。
「……飛べないのですね。肉体があるというのは興味深いですが、効率を考えるとあまり有用的ではありませんね」
「飛ぶ? この体飛べるのか? ……おお! 飛べる、飛べるぞ!」
「ちょっとお二人とも! 遊んでる場合じゃないですよ! 甚五郎はもう先に……ってあれ?」
「ホリイ、おぬしよく普段わしについてこれるな。この歩幅で」
 慣れない体に様々な意見及び愚痴を漏らす四人。その四人の周りを囲む人影。
「……そうこうしているうちに囲まれたか。これが事前に言われていた、お邪魔キャラ。各自、準備は出来てるか?」
「でもどうします? 今の甚五郎は魔鎧であるワタシの体ですよ? 纏ったほうがよろしいでしょうか?」
「いや、今回は四人で迎撃する。そこまで強そうでもなし、蹴散らすぞ。あとその体でワタシとかの一人称は、なんだ、不気味だから控えてくれ」
「それを言ったら、ワタシの体でわしと言うのもいかがと……」
「二人とも、ゆっくり話している場合じゃあるまいて。来るぞ」
 全身黒服サングラスのお邪魔キャラが四人に殺到する。一番に飛び出したのは、ブリジットだ。
「自爆の許可を!」
「するか! というか、その体じゃできないだろうに!」
「それでは一体、どうすれば!?」
「あー、わらわの体でオススメのスキルは光条兵器かのう。中々他では真似できないからな」
「ではそちらは自爆を」
「するか。せっかくじゃ、飛びながら撃墜させてもらうとするかのう」
 羽純が空を飛ぶ。普段では真似できない空からの一方的な攻撃、存分に楽しみながら黒服を一掃して行く。
「ほほう、空から銃器で一方的に攻撃とは、ご機嫌じゃのう。ほれほれ」
「あんな攻撃の仕方が……ワタシは、自爆だけではないということでなのでしょうか?」
「当たり前だろう! ブリジットもあいつのように戦った方がいい。わしはそう思うぞ」
「……自爆以外の戦い方、つまりそれは、こういうことなのでしょうか?」
 『光条兵器』を取り出して、黒服たちを薙ぎ倒していくブリジット。それに続いて、ホリイも『絶零斬』を使用する。
「うわぁすごい威力です。いつもは見てるだけでしたが、いざ使うとなるとすごいですね」
「わしも負けてはいられないな! 気合があれば何とでもなる! うおおおおお!」
 ホリイの甲高い声で叫びながら、『ライトニングランス』を使い素早く敵を突き崩していく。
「ほう、ホリイ単体でも十分な戦力になるじゃないか! これは一考の余地ありだな!」
「……それもいいですけど、やっぱりワタシは魔鎧がいいですねぇ」
 そう言いながら、最後の一人を切り倒すホリイ。その言葉に反応するが如く三人が口を開く。
「そうじゃのう。わらわも自分の体が一番じゃ」
「自爆以外でも、お役に立てるかもしれない……」
「そうだな。わしも気合を入れるのは自分の体が一番だ! さっさとマシーンを破壊するぞ!」
 三人が同時に頷く。マシーンを捜索するために不慣れな体で邁進する四人だった。