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夏合宿 どろろん

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夏合宿 どろろん

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    ★    ★    ★
 
ひゃっはあ。肝試し楽しいのだあ」
「くじ引きで当たったときはどうしようかと思いましたが、意外と楽しい人ですな」
「そうなのだあ」
 屋良 黎明華(やら・れめか)さんとリブロ・グランチェスター(りぶろ・ぐらんちぇすたー)さんの即席ペアが森の中を進んで行くと、ずっと屋良黎明華さんを待ち構えていたティー・ティー(てぃー・てぃー)さんが目を輝かせました。
兵学舎の人には、特別サービスですー」
 ティー・ティーさんが、持っていたティーの手錠を式神化して放ちました。にゅるにゅると蛇のように進んで行った手錠が、木の枝にクルンと巻きついてから屋良黎明華さんとリブロ・グランチェスターさんの繋いでいた手の手首にカチャリと填まります。
「これは!?」
 あまり驚かずに、リブロ・グランチェスターさんが周囲を確認しました。
「お化けですよー」
 白い布を被ったティー・ティーさんが、二人の前に姿を現します。
「あー、その声は、ティーなのだあ♪」
「ち、違います。お化けです」
 あっけなく屋良黎明華さんに正体を見破られて、ティー・ティーさんが焦りました。
「やっぱり、ティーには脅かし役はむいてないじゃないかあ」
 陰から見守っていた源 鉄心(みなもと・てっしん)くんが、あまりにも予想通りの結果になって小さく溜め息をつきました。
「うーん、ちょっとそれを貸してもらえますかな」
 さっと屋良黎明華さんの持っていた禍心のカーマインを手に取ると、リブロ・グランチェスターさんが木に巻きついていた手錠のチェーンを軽く狙い撃ちました。
「!」
 驚いた式神の手錠が、あわてて逃げだします。結構根性なしでした。
「えっとえっと、ビハインド・ザ・ライスショップ〜」
「し、失礼しましたー」
 なんとか脅かそうとするティー・ティーさんを、源鉄心くんがあわてて引っさらって逃げて行きました。これ以上は無理です。
「なんだか、今、海パン男がシーツお化けをさらっていったような気が……」
 これは肝試し大会で、不条理我慢大会ではなかったはずだなと、リリア・オーランソートさんが軽く頭をかかえました。
「あー、あっちにまた誰かがいるのだあ」
 屋良黎明華さんは、あまり深く考えずに、楽しそうに別のお化け役の人の所へと走り寄っていきました。
『ああ、宿題があ、終わらなああぃぃぃぃ!』
 ビキニ海パン姿のアキラ・セイルーンくんのスペアボディが頭をかきむしって叫びます。
「気をしっかり持つのじゃ。きっと、ここにも宿題が終わっていない者がいるはずじゃからな」
 わざとらしく、ルシェイメア・フローズンさんがスペアボディを慰めます。
「ふふふ、心は宿題に縛られつつも、身体は海水浴仕様というバージョン2じゃ、怖かろう」
 なんだか少しは工夫したらしく、ルシェイメア・フローズンさんが陰でほくそ笑みました。
「これの、どこが怖いのですかな……」
 しっかりと宿題は済ませてあるリブロ・グランチェスターさんには理解できないようです。しかし……。
「うあああああ、怖いのだあ。宿題怖いのだあ!!」
 突然、屋良黎明華さんが走りだしました。何か、思いあたることがあったようです。
「こ、これ……」
 あわててリブロ・グランチェスターさんが屋良黎明華さんを追いかけていきました。さっきティー・ティーさんの手錠をやっつけておいて助かりました。もし手錠で繋がれていたら、今ごろは思いっきり引きずられていたかもしれません。
 なんとか海岸で追いついて屋良黎明華さんを落ち着かせます。あらためて海を見て見ると、海パンの男たちがぷっかりと海に浮いています。水着の女の子もいるみたいです。爆発で服を吹っ飛ばされて水着になった雅羅・サンダース三世さん他四名でした。
「いったい、この肝試しでは何が起こっているのやら……」
 とりあえず、救護所に回収依頼の連絡を入れるリブロ・グランチェスターさんでした。
 洞窟に入ると、なんだかぴたぴたというたくさんの足音が近づいてきます。
「な、何かいるのだ!?」
 姿が見えないので、ちょっと屋良黎明華さんがビビります。
「また、海パンの男とかが出てくるのではないでしょうな」
 勘弁してくれと、リブロ・グランチェスターさんがつぶやきました。
「なんか、海パン怖いって言ってるよ」
 陰で素足のぺたぺたという足音を洞窟の中に響かせてお化けを演出していたクラウン・フェイス(くらうん・ふぇいす)さんが、イリス・クェイン(いりす・くぇいん)さんに言いました。
「よし、ビキニパンツが怖いのね。いきなさい、お前たち
 何か勘違いしたイリス・クェインさんが、手下のゴーストたちに命令しました。
 命令通りに、ビキニパンツを穿いたマッチョな姿になったゴーストが、屋良黎明華さんとリブロ・グランチェスターさんの周囲に突然姿を現します。
「きゃー、きゃー、なのだあ!」
 怖がりつつも、屋良黎明華さんは裸の男たちに囲まれてちょっと嬉しそうです。
「いや、だから、もう海パン男は……」
 なんだか言霊に取り憑かれたみたいで、リブロ・グランチェスターさんが頭をかかえました。つきあっていられないので、屋良黎明華さんを引っぱって逃げるように祠に辿り着くと、叩きつけるようにアッキガイを載せました。
「ちょっと待つのだあ」
 川下りの後のバーベキューで食べたホタテ貝の貝殻に、「屋良黎明華、食す」とマジックで書き殴ると、屋良黎明華さんが「俺参上!」と書かれた貝殻の上にドンと貝殻をおきました。