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ランチは危険がいっぱい!?

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ランチは危険がいっぱい!?

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 無事に巨木の根元までたどり着いた雅羅達は、手早く散る方向、連絡を交わすことを確認しあうと、息つく間もなく木の中へと散っていく。
 レリウス・アイゼンヴォルフ(れりうす・あいぜんう゛ぉるふ)ハイラル・ヘイル(はいらる・へいる)もまた、木々の間へ向かおうとした。が。
「どうやら同じ依頼を受けたようですね、グラキエス」
 散っていくメンバーの中によく知った顔を見つけ、ぽん、とグラキエス・エンドロア(ぐらきえす・えんどろあ)の肩に触れた。
 いや、実はだいぶ前から、道中一向に合流してきた友人の存在には気づいて居た。
 だが、いつもなら気さくに声を掛けてくるグラキエスが、気のせいかこちらを避けているような素振りを見せていたものだから、今まで声を掛けられずにいたのだ。
 探索が始まって人がばらけたのをきっかけにと、思い切って声を掛けてみたのだが、しかし声を掛けられたグラキエスはといえば、困ったような顔を浮かべている。口元が何か言いたげに動こうとしているのだけれど、上手く言葉が見つからないようだ。
 どうしたのだろうか、とレリウスの顔に疑問符が浮かぶのを見つけたのだろう、グラキエスのパートナーであるエルデネスト・ヴァッサゴー(えるでねすと・う゛ぁっさごー)が、スッと二人の間に割って入った。
「失礼――」
「エルデネスト、どうしたのですか?」
 いつもグラキエスの傍らに控えて居る悪魔は、わざとらしく申し訳なさそうな表情を浮かべて一礼してみせる。
「実は、グラキエス様は今――」
「エルデネスト、それは……」
 事情を説明しようとするエルデネストを、グラキエスが咎める。けれどエルデネストはふ、と柔らかい笑みを浮かべると、自らのパートナーの方を振り向き、そっと耳打ちする。
「アウレウスを迅速に連れ戻すため、ここは事情を話し、協力を求めるべきです。――大丈夫、たとえ彼らが貴方と距離を置いたとしても、私は傍に居ります――」
「そう……そうだな……」
 エルデネストの言葉に、グラキエスは苦渋の表情を浮かべると、申し訳なさそうにレリウスの方へ視線を戻した。
「どうかしたのです?」
「実はグラキエス様は、記憶を失っておられます。それから、我々はアウレウスがカラスに連れ去られたので、連れ戻しに来たのです」
「記憶喪失?!」
 どういうことです、とエルデネストの言葉を遮って驚愕の声を上げるレリウスに、エルデネストはかいつまんでこれまでの事情を説明した。
「そうですか……」
 一通りの事情を聞いたレリウスは、複雑な思いで目の前のグラキエスを見詰める。
 レリウスの知る彼は、無邪気な笑顔を浮かべていた。けれど、今の彼はどこか寄る辺なさそうな、不安そうな表情を滲ませている。
「その、なんというか……すまない」
「謝る事ではありません、グラキエス。俺とあなたが友人であることに変わりはない」
 ふ、といつもの仏頂面を少しだけ緩めるレリウスに、グラキエスの顔から不安そうなものが消えた。
「それはそうと、アウレウスがさらわれた? それもそれで一大事ではないですか。俺も協力します。一刻も早く、連れ戻しましょう」
「ありがとう、レリウス」
 すっかり記憶喪失の事に気を取られてたレリウスだったが、はたともう一点の重要事項を思い出して表情を引き締める。
 ごく自然に協力を申し出てくれたレリウスに、グラキエスは一瞬、嬉しそうな表情を見せる。けれどすぐに表情を引き締め直して、パートナー救出のことに集中する。
「行くぞ、エルデネスト」
「行きますよ、ハイラル」
 互いに自分のパートナーに声を掛けると、四人は改めて、連れ去られた人々を助けるため、巨木の中へと進んでいく。

 木の内部は、思ったよりも見通しが良かった。
 しかし、巨大とは言え木の上は木の上。足場は不安定だし、万が一足を滑らせれば、下手をすれば数十メートルの高さを落下して地面に叩きつけられ兼ねない。
 そのため、飛行手段がある者は空を飛んだ方が安全だ。
 布袋 佳奈子(ほてい・かなこ)は、光る箒に跨がって、幹に沿うようにして移動していた。パートナーのエレノア・グランクルス(えれのあ・ぐらんくるす)は有翼種のヴァルキリーなので、自分の翼を使って佳奈子の後を追っている。
「思ったより暗くないね」
「そうね」
 一応光術で辺りを照らしながら周囲に目を凝らす佳奈子だが、想像して居たほど木の内部は暗くなかった。
「でも、こう広いと隅々まで探索するには時間が掛かりそう」
 ひゅう、と周囲をぐるりと飛んでみたエレノアが呟く。木の幹に沿ってぐるりと一周見渡すだけでも一仕事。さらに、幹の周りを回った程度ではとても、枝葉の先の方までは見ることが出来ない。
「横方向の探索はひとまず、他の人に任せよ。私達は上に」
「ええ」
 飛行手段が無い人達は、幹を伝い伝い進むしか無い。そのため、横方向には動きやすいが上下の移動、特に、上に登るのには時間が掛かってしまう。その点佳奈子達は自由が利く。
 適宜分担するため、佳奈子達は高度を上げようとした。その時。
 カァ、というおなじみの鳴き声ひとつ、数羽のカラスが佳奈子達に襲いかかる!
「きゃ、ちょ、ちょっと!」
 突然の来襲に、佳奈子達の反応が一瞬遅れた。しかし相手は所詮カラス。集られてしまったのはその一瞬だけで、佳奈子が冷静にMB・アヴァターラ・ダーツを解き放つと、鳥人型機晶生命体はダーツの形に変化して、カラスたちに襲いかかる。
 ぎゃ、と色めくカラスたちに、今度はエレノアが手にしたウイングソードを振るった。放たれる鋭い風が、カラスたちの翼を翻弄し、はじき飛ばす。
「ありがと、エレノア!」
 ばさばさばさ、とカラスたちの羽音が響く中を、二人はすり抜ける様にしてさらに上層へと登っていく。

「モーちゃん、どこー?」
 少々暢気な声を上げながら宮廷用飛行翼で飛び回っているのは、清泉 北都(いずみ・ほくと)だ。
 パートナーの魔鎧、モーベット・ヴァイナス(もーべっと・う゛ぁいなす)を公園で虫干しして居たところ、急にカラスの群れがモーベットを連れ去ってしまったのだ。
 慌てて追いかけてきて、今に至る。同じくパートナーを連れ去られた雅羅とも先ほど鉢合わせ、協力しあうことを確認して居る。
 警戒の為に禁猟区と超感覚を働かせているため、ぴこぴこと獣耳が頭の上で動いている。時折カラスが、縄張りを荒らされていると思っているのだろう、襲いかかってくるけれど、警戒して居る北都の敵では無い。
 嘴でつつこうとしてくるカラスを素早く躱して、正面に回る。そして、ふ、と気合いを込めると、北都の全身におびただしい数の瞳が浮かび上がる。無数の目で睨み付けられたカラスは、その場にぴたりと動きを止める。金縛りに遭ったかのように動けなくなったカラスたちは、翼を動かせないままひゅるひゅると落下していく。
「ごめん、ちょっと通してね」
 とさ、と絡み合った枝がカラスの体を受け止めてくれたことを確認して、北都は先を急ぐ。
「モーちゃん、居たら返事してー!」
 声を張り上げるけれど、枝葉の擦れる音の前にむなしく霞んでいく。
「大丈夫かなぁ……光り物を集めるのはただのカラスの習性だし、命の危機、とかはないと思うけど……」
 うーん、と眉間にシワを寄せながら、北都はパートナーの姿を探し、飛ぶ。