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桜封比翼・ツバサとジュナ 第三話~これが私の絆~

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桜封比翼・ツバサとジュナ 第三話~これが私の絆~

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■翼&樹菜VS悪の秘密結社!?
 数多くの契約者たちの援護を受け、ついに魔吸桜が封印されている祠へとやってきた翼たち契約者一行。
 ……魔吸桜の封印が解けるのが迫っているのだろうか。祠に近づくだけで生命力と魔力の吸収量が多くなってきているのを肌で感じる。
「……あの、祠ってこんな要塞みたいな感じでしたでしょうか?」
 樹菜が思わず不思議がってしまうのも無理はない。というのも、祠はなぜかよくある悪の秘密基地らしい佇まいへとその風貌を変えており、樹菜の知る封印の祠と一切合致しなかったのだ。
「あー……これ、あの人が関わってますよねぇ……どう見ても」
 思わずため息をつく鞍馬 楓(くらま・かえで)。その横にいる神威 由乃羽(かむい・ゆのは)も、「あいつら、賽銭出さないから苦手なのよね……」とぼやいている。
「――フハハハハ!! よく来たな魔吸桜の復活を邪魔する者どもよ!」
 次の瞬間、改修された祠の屋根の上に三つの人影が姿を現す。そこにいたのはハデス、ヘスティア、アルテミスという、悪の秘密結社オリュンポスの面々であった。
「我が名は世界征服を企む悪の秘密結社オリュンポスの大幹部、ドクターハデス! 我々の邪魔立てをするというのならば、けして生かしはせん! ここで門前払いにしてくれよう!」
 とぅっ!! と気合を入れながらハデスは部下二人と共に屋根から降りてくる。……どうやら、この一味を何とかしないことには中には入れそうにないらしい。
「――あの、ここは私と樹菜の二人で何とかしてみる。どちらにせよ、私たちは“鍵の欠片”がないことにはどうにもできないし、少しでもみんなの役に立ちたいんだ」
 と、そう申し出たのはなんと翼だった。翼の意思に従い、樹菜も翼の後方から武器であるフライパンを構える。
「……わかったわ。二人とも、あまり無理しないでね。まずくなったらすぐに助けるから」
 ルカルカ・ルー(るかるか・るー)は翼たちの決意を無駄にしまいと、ハデス一味を翼たちに任せることとする。どちらにせよ、出入り口を守るハデス一味を退けなければ先には進めなさそうだ。
「くっ、あくまでも儀式の邪魔立てをするか……ならば仕方あるまい、カルベラに気兼ねなく儀式を執り行ってもらおうと思ったが、こうなってしまった以上お前たちの相手をするほかなさそうだ! ヘスティア、アルテミス! あのひよっ子契約者を迎え撃つのだ!」
「かしこまりましたご主人様……じゃなかった、ハデス博士。カルベラ様の儀式の邪魔をする方々の足止めを行います」
「了解しましたハデス様。騎士の名にかけて、しっかり迎えさせていただきます!」
 ハデスはヘスティアとアルテミス、そしてさらに《特戦隊》や《エリート戦闘員》を展開させ、万全の態勢で翼と樹菜に対峙していく。
「……判断間違えたかな、これ……」
「だ、大丈夫ですよきっと。それにほら、美羽さんから《アルティマレガース》をいただいてあるはずですし」
 この作戦に出る前、翼は美羽から《アルティマレガース》という脛当てをもらっており、それを装備している。すでに教えてもらえる段階はクリアし、今は共に戦う仲間としての証……と、翼は感じているようだ。
 後ろから聞こえる声。振り向けば、そこにいたのは佐野 ルーシェリア(さの・るーしぇりあ)の姿があった。
「翼さんは行動優先ですからねぇ。さすがにこれだけの数を樹菜さんを守りつつじゃ大変そうですし、お手伝いしますよぉ」
「うん、お願い! すぐに倒してみんなと合流しよう!」
 一人増えただけなので人数差はそこまで埋まらない。だが、十分に渡り合える確信を翼は持っていた。すぐに構えを取りオリュンポス一味と向かい合うと……樹菜を守るようにして立ち位置を変えていく。
「ふん、舐めるな! いくら気概を見せようとも、魔吸桜の力によってその能力は弱体化してるはず! こちらは元々戦闘力0に近い戦闘員が多数、これならば弱体化しても何ら問題ない! ものども、やってしまえ!」
 ハデスが戦闘員たちの『士気高揚』を促し、『優れた指揮官』ならではの指示によって、《特戦隊》《エリート戦闘員》たちは的確な動きで翼たちへと襲いかかっていく。
 しかし、なんだかんだと言っても能力半減程度の弱体に対し、ほぼ0が半減になったところで結局は0に近い戦闘力の戦闘員ではほとんど話にならない結果しか生まれない。翼と樹菜、そしてルーシェリアの三人は戦闘員たちを気絶させる形で次々とボコりまくる!
「翼さん、オリュンポスはハデスさんを派手に吹っ飛ばしてしまえばそれで勝ちですよぉ。だから、狙うならハデスさんがいいかと思いますぅ」
 ルーシェリアのアドバイスを聞き、なるほどと頷く翼と樹菜。戦闘員ばかりに気を取られるわけにはいかないと、翼はハデスへその矛先を変えようとしたが――。
「私の名はオリュンポスの騎士アルテミス! ここから先へ行きたければ、私を倒してからいってください!」
 『プロボーク』による挑発で、翼たちの攻撃を自身へ向けさせていくアルテミス。もとより接近戦の得意なため、契約者たちの矛先をこちらに向けさせてしまおうという考えらしい。魔吸桜の影響を受けているものの、高い属性防御に加えて『龍鱗化』で守りを固め、時間を稼ごうと奮起する! ……のだが。
「ヘスティアちゃん、今です!」
「ターゲットロックオン、発射! ――はわわっ」
 アルテミスの後方にて、《六連ミサイルポッド》三基による『破壊工作』を兼ねた『弾幕援護』を行おうとしたヘスティアであったが、もはや伝統芸と言えるレベルの誤射っぷりを発揮。機械物のため魔吸桜の影響を受けていない、数割ほどのミサイルが味方であるはずの戦闘員たちやアルテミスへと容赦なく襲いかかっている。
「え、ちょ、ヘスティアちゃ――きゃああああっ!?」
 それに対し、アルテミスや戦闘員たちは魔吸桜の影響を受けて能力低下中。より強い脅威となったミサイルの雨嵐を受けて、大ダメージを負っていく。もはや内部分裂が起きそうな状態を見て、翼はすぐにヘスティアへ駆けだした!
「隙ありぃっ!!」
「――『お引き取りくださいませ』!」
 ヘスティアの頭部へかかと落としを決めようとする翼。しかし、ヘスティアは『実力行使』による『お引き取りくださいませ』で翼の攻撃を退けていった。
「くぅ、やっぱり一筋縄じゃいかないみたい……!」
「翼、ここであまり時間をかけるわけにも……このままだと、魔吸桜を止めることができなくなってしまいます! もしそうなったら、葦原島やシャンバラの人たちの命が……!」
 確かに樹菜の言うとおり、ここで手をこまねいているわけにもいかない。このまま押し切ってしまったほうが――翼がそう考えた時、ハデスの後ろから別の契約者らしき人物――茜とそのパートナーだ……が祠から出てくる。
「おお、増援か! こんな奴ら、オリュンポスだけで十分ではあるが我らの目的というものがある。人数は多いに越したことはない!」
「報酬分は働かないとね。……でも、さっきの話からしたら素直に通したほうが良さそうだけど」
「……さっきの話?」
 茜からぽつりと出た言葉に、疑問符を投げかけるハデス。すると、茜は自重せずに自己アピールをしまくっているアレックスを尻目に、それに答えていく。
「あの髪の長い子が言っていたことよ。魔吸桜を止めれなかったらシャンバラの命がどうのこうのって……それ、本当なの?」
 茜は樹菜へ視線を向けて問いかける。予断許さぬ中、樹菜は頷いて返答した。
「ええ、本当です。魔吸桜が復活したら、葦原島だけではなくシャンバラ……そして最悪、パラミタの方々の命が奪われてしまいます。魔吸桜は生命力と魔力を無尽蔵に吸い尽くしてしまいますので」
 樹菜から話を聞いた茜は少し考えたのち……一つ頷いた。
「……じゃあやっぱり素直に通したほうが良さそうね。なんか見たら、教導団の人たちもちらほらいるみたい。どちらにせよ、そろそろ儀式が終わるから私たちの役目も終わりに近いし」
 そう言うと、茜はアレックスとクレアと共に祠の入り口への道を開けていく。ハデスも戦闘員たちの攻撃をやめさせると、すぐに祠の中へ入る準備をしだした。
「我らの目的は魔吸桜の奪取‥…儀式が終わろうとしているのならば、カルベラの近くでその瞬間を狙おうではないか! ――というわけで、勝負は一度お預けだ! フハハハハ!」
 そう言い捨てると、ハデスは部下たちと共に祠へと翻していってしまった。
「私たちもすぐ追わないと!」
 もはや一刻の猶予もない。翼たちもすぐに準備を整えると、大急ぎで祠の奥――カルベラが儀式を執り行っている場所へと向かうのであった。