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暴れカボチャ襲来

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暴れカボチャ襲来

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■幕間:痛い秋・美味しい秋

 村の西側、樹林が続く道に沿うように栗の木がいくつも生育されている。
 いくつかは収穫の頃合いなのだろう。栗が足元に転がっていた。いがが内側から割れて栗の実が顔を出しているものもある。
 そんな落ちている栗を踏み、いがを割っているのはナディム・ガーランド(なでぃむ・がーらんど)だ。
 彼は隣で見ているラグエル・クローリク(らぐえる・くろーりく)に言った。
「――と、こうすれば綺麗に割れるぞ」
「ナディムって上手。ラグエルもがんばろー」
 そう告げるラグエルの下に狼が栗を運んできた。
「わんこさんありがとう」
 ラグエルはにっこりと微笑むとナディムに習ったように栗を踏む。真ん中に亀裂が奔り、中から栗の実が姿を現した。
「みてー」
「おう、うまいじゃないか」
「えへへ」
 ラグエルは栗の実を拾うとナディムの背負っているカゴに入れた。
 まだ栗拾いを始めたばかりでカゴには余裕がある。ほのぼのと栗ひろいを続ける彼らから少し離れた位置で頭上からの襲撃者と戦う者がいた。
 リース・エンデルフィア(りーす・えんでるふぃあ)マーガレット・アップルリング(まーがれっと・あっぷるりんぐ)の二人だ。彼女たちが栗の木の間を歩いていると、なぜか頭上から栗が落ちてくる。当たりどころ次第では大けがになりかねない。
「振りかぶってぇ〜ホームラーンッ!」
 マーガレットが手にした円盤状の盾で栗を狙い打つ。吹き飛ばされた栗は近くの木にぶつかり枯葉の上に落ちた。
 次々と落ちてくる栗を同じように打ち弾く。リースの方にも栗は落下してきていた。
「えい! えい! えいやっ!!」
 手にした杖を右へ左へ、打ち下ろしては振り上げる。途中、変な動きで横に飛んできたものは薙いで打ち払う。が、誤ってマーガレットの方に飛んで行ってしまった。
「――あっ」
「――えっ?」
 他の栗を狙っている最中だったこともあり、マーガレットが飛んできている栗に対処できるはずがなかった。
 当たる、そう彼女たちが思った時である。横から一筋の線が伸びてきたかと思うと栗を貫き地へ落ちた。
 栗には矢が刺さっていた。彼女たちが視線を矢の飛んできた方に向けるとナディムが弓を構えているのが見えた。
「あっぶねえな。しっかりしてくれ。こっちにはラグエルもいるんだから間違っても飛ばすなよ」
「ご、ごめんなさい!」
「ありがとう。怪我しなくてすんだわ」
 気にするな、と手をひらひらと振る。
 そこへ綾原 さゆみ(あやはら・さゆみ)が通りかかった。何をしているのか気になった様子でこちらに近づいてくる。
「みんな集まって何してるの?」
「栗ひろいー」
 綾原の問いにラグエルが応えた。手に栗をたくさん乗せて見せる。
 すごいねー、と綾原はラグエルの頭を撫でるとナディムに視線を投げかけた。
「そこの村で変な作物がたくさん出来てな。収穫を手伝ってんだよ。お姉さんも呼ばれたクチじゃないのか?」
「私はフィールドワークで来ていただけだからその話は初耳ね。せっかくだからお手伝いするわ。栗拾いでいいかしら?」
「ああ、助かるよ。ただ気をつけろ。あっちの二人がここぞとばかりに栗を飛ばしてくるからな」
「と、飛ばしません!」
「飛ばさないわよ!!」
 二人からの怒声にナディムは笑うと栗拾いに戻った。
 しばらくしてカゴが一杯になったのを確認すると村へと向かう。
「こんなにあれば色々作れそうね。話によるとカボチャもあるみたいだし、お菓子類が充実しそうだわ」
「あたしはクレープが良いなあ」
「料理する人次第だろうが期待していいかもな」
「ラグエルはなんでもー」
「わ、私はですね――」
 各々が楽しそうに話しながら歩いた。
 太陽は真上に位置していた。もう時刻は昼だ。