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リアクション
■第三幕:華やかな調理
「こんなもんですかね」
御凪 真人(みなぎ・まこと)の足元、土を掘った中に氷の置かれた穴があった。氷室だ。
氷の周りにしっかりと藁が敷き詰めてある。短時間で作りあげたにしては出来の良さが窺えた。
「これは助かります」
「いえ、この程度で喜んでもらえるなら嬉しいものです」
村人からの感謝の言葉に笑みを返す。
「貴殿の手は空いてるー?」
「貴殿て……俺のことですか? 手は空いてますけど」
「それならこれ飾って―!」
ホリイが御凪にカボチャの飾り物を渡した。収穫祭に向けての品なのだろう。中身が綺麗にくり抜かれたカボチャがランタン風に装飾されている。それは何種類か用意されているようで、中にはスープの入った器まであった。
「これも飾るので?」
「あ、ごめん。間違えた。それは向こうのテーブルに出してください」
「わかりました。しっかりお手伝いしますよ」
御凪が運んでいくカボチャの飾り物を眺めながらトメが手を動かす。
「へえ。あないな使い方もおますんやねえ」
蒸かしたカボチャを裏ごしして団子にしていく。
ほい、と隣で同じように調理に参加している朋美に一串渡す、
「あ、甘くておいしい」
「そらよかった……で、朋美は何作ってはりますの?」
「んー……『カボチャ味の何か』かな」
「そらおいしいんか?」
「んー、よくわかんないけど、元のカボチャが甘かったら、甘く仕上がってると思うな。できればパンプキンパイなんかできたらいいんだけどね」
言うと朋美は向かいで調理に励んでいる綾原に向けた。
隣にはリリアの姿もある。綾原の手元には出来上がったばかりであろうカボチャのパイがあった。
他にもニンジンのパイやシチュー。クッキーなんかもある。
「リリアさんってパイ好きなの?」
「今日はパンプキンパイを楽しみにしてたのよ。誰か作ってないかって気になっちゃって。エースもなんだかんだで楽しみにしてると思うわ」
「楽しみにされてるんじゃもっと頑張りたくなるわね」
綾原は気合を入れると調理を再開する。
「これも使っていいのかしら?」
綾原がカボチャを手に取る。
「ケヒィー!?」
「ひっ!?」
叫ぶカボチャに一瞬驚いて手を放してしまう。
カボチャはそのまま落下し――
「この子は違うのですよ〜」
と、狼の頭に乗ったルナが捕獲した。実際に捕獲したのは狼の方だが……。
トコトコと歩いて調理場を離れていく。すれ違い、戻ってきた御凪が胸を押さえている綾原に聞いた。
「なにかあったんですか?」
「ちょっとね。それより料理手伝ってくれない?」
「いいですよ。何をしましょうか」
「そうね。じゃあ――」
こうして幾人かの手伝いの下、収穫祭の準備が進められていった。
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