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リアクション
「……良いのですか、ガルデ様」
「何がだ?」
大英雄の墓の出口付近。
部下の言葉に、ガルデと呼ばれた男は眉をひそめる。
「あの水晶骨格。あれがあれば……」
「おいおい、お前気付かなかったのかよ。あんなアブねえもん、使えるわけねえだろうが」
「は?」
部下の言葉に、ガルデはクツクツと笑い声をもらす。
「どう転ぶかわからねえが、少なくともこの村は終わりだよ。それでも奴の理想は叶うさ」
「……どういう、こと」
「お?」
そのガルデの行く先を塞ぐように、三つの影がそこに立ち塞がる。
一人はドニアザード・アズラーン。
もう一人はローグ・キャスト(ろーぐ・きゃすと)、そしてフルーネ・キャスト(ふるーね・きゃすと)である。
三人がここに居たのは、偶然だ。
ローグ達の元依頼人がドニアザードであり、ローグ達はたまたまドニアザードに話があって来ていただけである。
勿論、何かしら新しい依頼が発生するのでは、という考えもないではなかったが……。
「どういうことだ? しかも、向こうにもネバーランドの奴が居ると聞いたが……」
唖然とした様子のローグとフルーネ。
そう、一つの事件を巡って機関長と副機関長が互いの側についているなど、正気の沙汰ではない。
「本当にそれ理想というより終末思想だから……」
フルーネの言葉に、ガルデは首を振って溜息をつく。
「そもそも……貴方達、シェヘラの身体を……ここに、運び込んだ……わ、ね。返しなさい」
一歩前に進み出るドニアザード。
「俺の理想を教えてやろう」
どの質問にも答えず。
ガルデは、そう言って前に進み出る。
「俺の理想は、最強になる事だ。どんな手段でもいい。最強になった俺によって形作られる、秩序ある力の世界。それが俺の理想だ」
「……それで水晶骨格、というわけか」
これ以上の長居は無用だと思いながらも、ローグはそう口にする。
目線でフルーネに撤退を促しながら、ローグは少しずつ後ろに下がる。
この雰囲気は、まずい。
「だがな、この水晶骨格は外れだった。いや、ある意味当たりだ。モノホンの女王器だからな。だからこそ、タチが悪ぃ」
「……何を言って、るの」
一瞬でドニアザードへの距離を詰めたガルデは、その身体に拳を突き入れる。
恐ろしい威力の突きは、ドニアザードを固い壁へとめり込ませる。
「かの大英雄様とやらでさえ、あの水晶骨格を使いこなせずに狂ったんだ。その辺の奴が使ったらどうなるか……分かるだろ?」
恨みを込めて睨みつけるドニアザードの視線を軽く流しながら、ガルデはローグとフルーネに視線を向ける。
「適正がないと精神に反動が出るんだよ、あれはよ。骨を丸ごととっかえて、そいつを強靭な魔導生命体へと内部から強制変換する道具。それがアレの正体ってわけだ」
「長は……シェヘラ……は……」
ドニアの言葉に、ガルデは醜悪な笑みを浮かべて笑う。
「長の姉ちゃんは諦めな、カウントダウン中さ。あのシェヘラとかいうのは……まあ、ちょっと仕掛けをしてきた」
「貴様……!」
「まあ、気にすんなよ。お前等みたいな世間知らず、遅かれ早かれ滅んでたさ。自分の手で滅びるなら本望だろ?」
言いながら、ガルデと部下達は悠々と出口へ向かっていく。
ローグ達としても、止めるつもりはない。
依頼でもない限り、これと相対するのは御免被りたいというのが正直なところだった。
「まあ、義理は果たしておいてやるよ。万が一にも間に合わねえように、こっちに向かってる連中をしっかし足止めしといてやらあ」
高笑いをあげながら去っていくガルデ達。
それを見送ると、ドニアザードはゆっくりと瓦礫から身を起こす。
まずは、長に会いに行かなければならない。
「……依頼よ。手を、貸しなさい」
「……分かった」
ローグとフルーネは、そう頷く。
何処が引き際か、まだ見えないままに。
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