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【ぷりかる】死せる竜の砦

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【ぷりかる】死せる竜の砦

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エピローグ

 ドニアザードの部族の村。
 静かに崩壊を始めた死せる竜の砦の先にあった其処は、シェヘラザード達の村と何ら変わらぬ普通の村の光景だった。
 ただ一つ……出口を抜けた先に立っていた、何者かを見るまでは。
 そう、それは……無言で佇む、ドニアザードの姿だった。

「ドニア様……?」

 麗の言葉に、ドニアザードは反応しない。
 その瞳はただ、アーシアの中のシェヘラザードに注がれているように見える。

「……そう。そこにいるのね、シェヘラ」
「そうよ、ドニア。あたしの身体、返して貰いにきたわ」

 進み出ようとするシェヘラザードを、シリウスとルカルカが押しとどめる。

「ねぇドニア。水晶骨格の力を手に入れたとして、貴方はその先に何を求めるの?」
「欲しがってる……のは、私、じゃない……わ」

 ルカルカの言葉に、ドニアはそう答える。
 その視線は、シェヘラザードから外さないままだ。

「なぁドニア……お前、本当にそれでいいのか? 友達なら、大切に思っているなら、なんでシェヘラと一緒に生きてやらねぇんだ!? シェヘラはお前のこと……本当に大切に思ってたぜ?」
「生きようとした、わ。だから私は部族を抑えた。それでも……長の命令を私が抑える事はできない、わ」

 ドニアザードの言葉は、ただ事実を述べているだけだ。
 そこには、何の感情も含まれていないようにすら思える。
 今にも飛び出しそうになる麗を抑えながら、シェヘラザードは静かにその言葉を聞き。
 ルカルカとシリウスは、なおもドニアザードに言葉を投げかける。

「それでも、力はそんな事に使うものじゃないはず。水晶骨格に力があるなら、そういった平和と幸せの為に……!」
「ああ。それに、そんな言い訳は聞かねえぞ。お前にとってシェヘラと生きる事は、そんなものに劣る程度の存在なのか!? 居場所がねぇってならシャンバラでも地球でもこい。生きる場所なんて幾らでもある!」

 オレよりも年下のお前たちが古い大人の言い分に縛られてどうすんだ、とシリウスは叫ぶ。
 その言葉に、ドニアザードは小さく笑う。

「面白い、わね。そう出来たら……どんなに楽しい、かしら」
「ドニア……?」

 その様子に、ルカルカとシリウスは異常に気付く。
 青ざめた顔色、小さく震える身体。
 外傷がないから分からなかったが、明らかに普通ではない。

「シェヘラ……ごめんなさい、シェヘラ……私なりに、貴女を守りたかった……」
「ドニア!? お前まさか、誰かに呪術を受けて……!?」

 駆け寄るシェヘラザード。それに合わせるように、ドニアザードは地面に崩れ落ちように倒れる。
 その背後では、崩壊を続けていた死せる竜の砦が、ついに砂となって崩れ去っていく。

「長は……もう、ダメ……狂った、わ……でも、せめて、貴女の身体だけは、と思ったけれど……」
「お、おい。オルヒト! お前すげえんだろ! どうにかならねえのか!」

 シリウスに詰め寄られたオルヒトは、淡々と答える。

「彼女の魂は、大きく削り取られている。元に戻すには、術者をどうにかするしかない。だが、あのままでは先に肉体のコントロールを失うだろうね。そうなれば……」
「なら、話は簡単ね」

 そう言うと、シェヘラザードはドニアザードの身体の上に倒れ込む。
 そうして……倒れていたドニアザードは、シェヘラザードの身体を抱えるようにして起き上がる。

「こうすればいいのよ。そういうことでしょう?」

 ドニアザードの身体に入ったシェヘラザードの言葉に、オルヒトは小さく笑みを浮かべる。

「呪術をかけたのは……長、か。しかし狂ったとは……?」

 司は、そう言って考え込む。
 一体、この村で何が起こっているのか。
 考える暇もなく、次はシェヘラザードの抜けたアーシアの身体が起き上がる。

「や、おはよう。まだ解決してないみたいだね」
「……おかげさまでな」

 久々のアーシア節に、ダリルはそう言って肩をすくめる。


「……! 何これ、凄い害意が……!」

 アリアクルスイドに続いて、さゆみも寒気に近いプレッシャーを感じる。
 プレッシャーの一つは、地面の下から。
 もう一つは……全周囲から。

「……これは……?」

 さゆみ達の見ている前で、先程崩れ去った死せる竜の砦の内部から……何かが、空中へと立ち昇っていく。
 煙のようにも見えるそれはしかし、煙ではない。
 それは、細かい粒子だ。
 それらは次第に集まっていき……やがて、一つの巨大な形を成す。

「スケルトン……ドラゴン……?」

 アグラヴェインは、その巨大な姿を呆然と見上げる。
 こんな場所でそんなものが現れるとするならば、その正体は一つしかない。

 それは、かつて天雷竜と呼ばれしもの。
 それは、かつてシボラに滅びの危機を迎えさせた伝説の悪竜。
 それは、生身の人間では敵わぬ力を秘めたモノ。

 そして、それをアンデッドとして蘇らせる何者かに使役されるモノ。
 それは死骨竜フェイターン。
 その能力を大きく落としながらも、それでも生身の人間では敵わぬ力を保持するモノ。

「……撤退です! まずはシェヘラザードの部族の村まで!」

 その力を正しく理解したサクラコが叫ぶ。
 ここは敵地だ。
 幸いにも、骨の砦は崩れた。
 とにかく、まずは態勢を立て直さなければならない。

 今言える事は、3つだ。

 1つ、新たな大英雄が生まれ、そして狂った。

 2つ、フェイターンがアンデッドとして蘇った。

 3つ、その両方をどうにかしなければならない。

「どうにかしてみせる……!」

 誰かが、そう叫ぶ。
 いや……誰もが、そう口にしていた。
 あんなものを解き放てば、本当に世界が滅びる。

 それだけは、させるわけにはいかないのだ。
 


担当マスターより

▼担当マスター

相景狭間

▼マスターコメント

皆さん、おつかれさまでした。
シェヘラザードはドニアザードの身体へと移動しました。
長に挑み消滅の危機にあったドニアザードですが、これで何とか延命できたようです。
アーシア先生は復活しましたが、フェイターンもアンデッドとなって復活しています。


次回、第四話は決戦です。
新たなる大英雄、そして死骨竜フェイターン。
過去より蘇った世界の危機を止める事が出来るのは、皆様のみです。

それでは、次回の冒険でお会いしましょう。

▼マスター個別コメント