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リアクション
「このオレ様が、スケルトンの中で最強という事を教えてやるネ」
第六式・シュネーシュツルム(まーくぜくす・しゅねーしゅつるむ)が、組みあがるスケルトン兵を見つめて笑う。
此処は死せる竜の砦の内部。
シェヘラザードを先頭に突入した契約者達は、各々に分かれて探索を始めていた。
その一角で行われていたのは……一見、スケルトン同士の仲間割れにも思える戦闘。
しかし、真実はそうではない。
片方は確かに死せる竜の砦のスケルトン兵だが……もう片方は、シュネーシュツルムである事が分かる。
「スケルトンが無限に沸く修行場ですか。これは期待できますね」
その背後で戦いの様子を見守っていた東 朱鷺(あずま・とき)は、そう呟く。
この死せる竜の砦は、侵入者に対応するようにスケルトン兵が無尽蔵に生み出される悪夢のような砦だ。
しかし、砦自体の魔力に上限がある事から、相手よりも少し上の戦力を出すように設定している節があるのに朱鷺は気づいていた。
つまり命の危険がある事を除けば、訓練の場所としては最適なのだ。
「しかも、各属性に対する耐性を持った個体も現れるらしいじゃないですか? 属性について、きちんと教える良い機会です」
そう言って頷く朱鷺。
自分と契約している第六式……シュネーシュツルムが強くなるということは、自分の強さにも繋がる。
こんな良い場所を、修行に利用しない手は無かった。
「大丈夫。倒れても倒れても、スケルトンらしく何度でも回復させます」
「骨使いが荒いネ」
そう言いながら、シュネーシュツルムは目の前で組みあがっていく緑色のスケルトン兵を眺める。
今、朱鷺が言っていた属性に耐性のある……マジックスケルトン兵だ。
「朱鷺に属性について、教えてもらったけど、残念ネ。オレ、雷電属性しか攻撃スキル覚えてないネ」
「修行不足ですね……目標は、スケルトンを100体、倒しましょうか」
100体と聞いてゲエ、という顔をするシュネーシュツルム。
しかし、やるしかないだろう。
自分の為に朱鷺が付き合ってくれている、という多少の負い目もある。
「まぁそれでもオレ様には大丈夫ネ。キット」
意外に強いスケルトン兵でこれなら、目標としている竜骨兵はどれだけ強いのか。
それを考えると、少しだけ遠い目になるシュネーシュツルムだった。
そして、そんな二人とは少し離れた場所は、鍵の部屋を求めて歩く一団の姿もあった。
「まったく面倒な仕掛けを作るモノじゃ」
「ああ、こちらの行動を阻害するという意味では、この上ない効果があるな」
草薙 羽純(くさなぎ・はすみ)に答えたのは、夜刀神 甚五郎(やとがみ・じんごろう)だ。
確かに羽純の言うとおり、常に姿を変え続けるダンジョンなどというものは、マッピングの意義を根幹から否定してしまうものだ。
結果としてある種の勘に探索者を走らせるが、それすら正しいという根拠は無い。
「法則性が見つかれば役に立つじゃろうがそれには情報の共有が必要じゃからな」
「そうだな……」
言いながら、甚五郎は動き続ける天井に目を走らせる。
誰がどこに進むかもわからないし、何を見つけるかもわからない。
位置の把握というのは重要な要素になるだろうが……こんな状況では、それがどれ程できるのか。
とにかく、情報の交換を密にしなければならないのは間違いなかった。
「時間勝負なこともあるし、早いところ此処を突破しないとのぅ」
時間勝負。その言葉に、甚五郎は頭の中で状況を整理する。
この先にあるドニアザードの部族で水晶骨格が目覚めつつあるというのならば、確かに然程の時間は残されていないだろう。
果たして、それに間に合うのか。
「とりあえず、スケルトンだろうが竜骨兵だろうが幹部だろうが相手にはなるぜ」
「まあ、あとは運次第というところじゃのう」
目の前で組みあがっていくスケルトン兵を見つけ、甚五郎と羽純は戦闘態勢をとる。
一分でも、一秒でも早く。
結局はそれが、甚五郎達に出来る最善なのだと信じながら。
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