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ミナスの涙

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ミナスの涙

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エピローグ

「コーヒーくれる?」
 宿に作られた喫茶店。その店主として店に立つ沙夢に瑛菜はそう注文をする。
「スタンダードなものでいいかしら?」
 瑛菜の頷きを得て沙夢は丁寧にコーヒーを淹れる。
「すっかり良くなったのね」
 淹れるまでの時間、沙夢はそう聞く。
「おかげさまでね。さっきも鍾乳洞行ってきたよ」
「無理するわね……」
 瑛菜が薬を飲んでからまだ4日しか経っていない。
「……って、鍾乳洞? 確かあそこは……」
 災厄の襲来によりナラカの氷に包まれ人が入れないようになっているという話を聞いていた。
「そ。あたしもどんな惨状か気になって見に行ったけど……」
「何があったの?」
「それが何もなかったんだよ。ナラカの氷も戦いの傷跡さえも」
 そんなはずはないのにどこにも見当たらなかったと瑛菜は言う。
「そういえば、あなた倒れた日、森の奥で一人の契約者がギフト持ってシャレにならないくらい暴れたらしいんだけど……」
「だけど?」
「正気に戻った契約者が次の日森の修繕に向かったら倒れていたはずの木も全て元通りだったらしいわ」
「……夢でも見てたんじゃないか?」
 そんかことあるわけないと瑛菜は言う。
「傷ついたゴブリンやコボルトの姿はそのままだし、暴れている様子を目撃した他の契約者もいるらしいから……」
 本当に夢を見ていたとしか思えない状況だけどと沙夢は言う。
「はい。熱いから気をつけて飲んでね」
 話している間にコーヒーを淹れ終え、沙夢は瑛菜にコーヒーを渡す。
「うん。美味しいじゃん。ここいいね。コーヒーも上手いし情報とか集めるのにも便利そうだ」
 この数分の間にも瑛菜は自分の持ってる情報の提供と知らない情報を受け取ることに成功している。
「そういう店を目指しているからご贔屓にお願いするわ」
「なら、なんか他には情報ない? もしくは調べてほしいこととか」
「……これは、気のせいなのかもしれないんだけど、あなたに薬を飲んでもらうとき。村長が薬を持ったら一瞬光った気がしたのよね」
 光の関係かとも思ったが少し違うと、ほんの少し力の流れを感じたと沙夢は言う。
「ふーん……そんなことがね。それで依頼は?」
「村長のフルネームと種族ね」
「あー……そういや聞いてないな」
 種族にしてもフルネームにしても支障はないから全然気にしてなかった。
「? ちょうどいいところにきたじゃん」
 ミナホがこっちに歩いてきているのを見て瑛菜は声をかける。
「? 瑛菜さん。寝てなくていいんですか?」
「それはさんざんアテナに泣きつかれたからもういい。……それより、ミナホの種族とフルネームを教えてくれよ」
 世間話の体で瑛菜はそう聞く。
「普通にシャンバラ人ですよ。フルネームは少し恥ずかしいんですけど……ミナホ・リリィです」
 名前を言う時に少し恥ずかしそうにミナホは言う。
「だってさ。依頼は達成できた?」
「ええ。料金はコーヒー代をおまけでいいかしら?」
「?? 何の話をしているんですか?」
 二人のやり取りにミナホは不思議そうな顔をした。


「やれやれ……あれがもう動き始めましたか。……10年という月日が経てば仕方ないのかもしれませんが」
 今回の一連の騒動の影で動いていた存在を思い浮かべ、ハームは重いため息をつく。
「前村長、いいですか?」
 部屋の外からノックをし、許可を得た和輝がハームの部屋に入ってくる。
「おや、どうかしましたか?」
 先程まで見せていた暗い表情隠れ、ハームはいつもの飄々とした表情で和輝を迎える。
「前回の依頼の報酬を受け取ってない思いまして」
「……すみません。忘れていました。色を付けてお渡ししますからそれで許してもらえませんか」
 自分らしくないミスだとハームは思う。
「いや、そういうのはいいですよ。ただ、1つだけ質問に答えていただければ」
「……答えられないものは答えれませんよ」
 今はまだとハームは言う。
「多分大丈夫だと思いますよ。村長の種族を教えていただくだけですから
「……綺麗に答えられるぎりぎりの質問をしますね」
「薬の時に違和感を感じた契約者は多いようですし、あなたも隠し通せるとは思っていないんでしょう?」
「ええ。ミナホは魔女ですよ。力の使い方も知らないですし、本人は自分がシャンバラ人だと信じて疑っていませんが」
 はぁと息をついてハームは答える。
「そのあたりのことも聞きたいですが……これ以上はまたの機会ですね」
 どうせはぐらかされるだけだろうと和輝はちゃんとした報酬も受け取りハームの部屋を退室する。
「ミナホが自分の過去と向き合う日も近い……ですか」
 その声には確かな寂しさの色があった。


担当マスターより

▼担当マスター

河上 誤停

▼マスターコメント

まず最初に公開が予定より遅れたことをお詫び申し上げます。

「ミナスの涙」お楽しみいただけたでしょうか。
我ながらごちゃごちゃしてるなぁという感じですが、少しでも楽しいと思っていただけてたら幸いです。


今回がいろいろ大変だった話だったので次はゆるーりとしたガイドを公開したいと思っています。
具体的には瑛菜の温泉(?)療養や野盗達のその後、ユニコーンやゴブリン・コボルト関係といったところでしょうか。
あいも変わらずニルミナスを舞台にしたシナリオを書いていくつもりですのでこの村を気に入っていただけたらよろしくお願いします。