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リアクション
■幕間:武道大会ソロ部門−御凪VS桜月 舞香−
可愛らしい声が出場者の耳に届いた。
「まいちゃーん! 頑張ってぇー!」
桜月 綾乃(さくらづき・あやの)の励ましの声に桜月 舞香(さくらづき・まいか)は手を振って応えた。
嬉しいのだろう。その顔には笑みが浮かんでいた。
「心強い応援ですね」
「ふふっ、羨ましいでしょう?」
「ええ、ですが俺も応援してもらっていますからね。簡単には負けませんよ」
御凪 真人(みなぎ・まこと)はパートナーであり、かつ恋人でもあるセルファ・オルドリン(せるふぁ・おるどりん)の姿を思い浮かべる。
彼女もまた自分と同じように大会に出場しているのだ。
(……情けない姿は見せられませんからね)
御凪の気迫に満ちた視線を正面から受けて、舞香は拳を力強く握りしめた。
ザッと地を擦り腰を深く落とす。臨戦態勢だ。
(綾乃も見てることだし最初から本気で行くわよ)
対峙する二人。
まもなくして銅鑼が鳴り響いた。
「さぁ、いくわよ!」
舞香が動いた。
攻撃を防ぐことを考えてない動きで御凪に迫る。
その速さは神速と呼ぶに相応しい。
「距離をとる前に詰められましたか――」
舞香は御凪を射程内におさめると素早く蹴りを放った。
鋭くもしなやかな脚捌きだ。
御凪をそれを片手で捌きながら術式を組む。
「魔法使いだからって舐めないでもらいたいですね。伊達にヴァルキリーの
契約者じゃありませんよ」
彼もまた舞香に劣らないスピードで闘技台を駆け抜ける。
いや、駆けるというよりは飛ぶように動いていた。
それは舞香も同じであった。宙に身を躍らせながら御凪を追随する。
「魔法使いじゃなくても飛べるのよ?」
「見事な御手前で……でもその恰好で蹴りはちょっと……」
舞香の服装はチアリーダーのそれであった。
蹴り技のたびにアンダースコートが視界に入るのが彼は気になっている様子であった。
「あら、魅力で敵を惑わすのもれっきとした体術よ☆」
茶目っ気たっぷりに舞香はウィンクする。
直後、鋭い回し蹴りが御凪を襲った。容赦のない一撃だ。
「――っ!」
避ける暇はない。彼はそれを腕で防いだ。
痛みが痺れへと変わる。
優勢に戦いを進める舞香を見て、綾乃の応援にも熱が入っていく。
「フレッフレッ百合園! 頑張れ頑張れまいちゃん!」
歓声も一際大きくなった。
特に男性客の声が大きかった。理由は推して知るべしだ。
素早く繰り出される足技に御凪は受けの一手である。
「やられてばかりではいられませんよっ!」
彼の声に呼応するように雷が舞香に降り注いだ。
轟音が鳴り響き、舞香は雷を避けながら後退する。
「そう簡単に当たるものですか――」
彼女がさらに一歩後退したそのときである。
踏み締めた一瞬、違和感を覚えた。
刹那、弾かれるように身体が宙に舞う。
(――トラップっ!? いつの間に……)
視線を御凪に向ければだいぶ距離を稼がれていた。
彼の周囲で火が灯っていく。
「さすがに近接戦闘では分が悪いですが……これだけ距離が空いていれば」
火は集まって一羽の巨大な鳥の姿を成した。
御凪の指が動く。
行け、というような手の動きと同時に火の鳥が舞香に襲い掛かる。
「――洒落にならないわよっ!」
身を伏せて回避を試みる。
熱風が頭上を通過した。
遅れて衝撃が舞香を襲った。
「きゃうんっ!?」
弾き飛ばされ地を転がる。
起き上がろうと顔を上げれば手をこちらに向けている御凪の姿があった。
「……綺麗に誘導されちゃったわ」
「すみません。ああでもしないと勝つのは厳しかったもので」
雷術とインビジブルトラップを併用した戦術のことを言っているのだろう。
御凪の額を汗が伝う。
「まだ全部を出し切ってないでしょう。続けますか?」
「止めておくわ。長々と男に付き合う趣味はないのよ」
それに、と彼女は続ける。
「妹に心配させたくないわ」
舞香は観客席を見た。
そこには心配そうに彼女を見つめる綾乃の姿があった。
舞香が負けを宣言し勝敗が決することとなった。
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