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リアクション
■幕間:武道大会ソロ部門−霧島VS佐野 ルーシェリア−
突き出された剣と伸びた腕。
霧島 春美(きりしま・はるみ)は躱し様に腕と肘を掴んだ。
「しまっ――!?」
佐野 ルーシェリア(さの・るーしぇりあ)は自分の身体が浮き上がるのを感じた。
ぐるんと回転し天と地が分からなくなる。
――ズダンッ
身体が叩きつけられると平衡感覚が戻った。
「どう? 春美のバリツの技の冴えは」
霧島は告げると起き上がろうとするルーシェリアに回し蹴りを放った。
だが彼女もやられっぱなしというわけではない。
霧島の蹴りを手にした二本の剣で受け止めてみせた。
(優里さんや風里さんが見ている手前、先輩冒険者としては無様な戦いは見せられませんよねぇ)
ルーシェリアは態勢を整えると剣を構えた。
「いきますよぉ」
「ホームズバリツに敵などないわ……いつでも来なさい!」
来る、そう予想したが相手の動きは違った。
ルーシェリアは後方に下がると意識を剣に集中させた。
「何もさせないわよ」
霧島が間を置かずに距離を縮める。
ルーシェリアの剣が白く輝き、冷気を放ち始めた。
「ふっ!」
ヒュヒュンッ、と二本の剣を躍らせる。
しなやかに身体を使って戦うその姿は剣舞のようだ。
(近づき難いけど一度入り込めれば……)
霧島は決断するとルーシェリアの射程内に飛び込んだ。
左から迫る剣を肘で跳ねて軌道を逸らす。
下から迫る剣は側面を拳で打ち払う。
そして――懐に入り込むっ!
「シミュレーション通りよ」
彼女は言うと左から迫る剣を肘で受け流し、下から迫る剣を拳で打ち払った。
拳は乾燥したように皮膚が裂けて血が滲んでいた。
その症状は凍傷のそれに近い。
(――踏み込まれたっ!?)
ルーシェリアは距離をとろうと後方へ下がるが霧島も追いすがる。
「足がお留守よ!」
「させませんよぉ」
霧島の足払いで体勢が崩されるが両の剣で身体を支えた。
剣を軸に宙へ身を躍らせる。
着地。
しかし――体勢を整えきれない。
足元がふらつくのを霧島は見逃さなかった。
「とどめよ、チェストー!!」
「せめて一太刀……」
彼女の素早い蹴りをルーシェリアは剣で打ち合わせた。
無理な体勢からの攻撃だったせいか腕に力が入らない。
握りが甘かったせいもあったのだろう。剣が手から離れてしまった。
「――ふっ!」
もう一方の剣で斬りかかる。
霧島の二発目の蹴りも迫る。
ガキンッとぶつかり合った。
弾かれるが、今度は剣を手放すことはない。
だが目の前で霧島の三発目が放たれようとしていた。
三段蹴りだ。
(あ、負けたかもしれませんねぇ)
ルーシェリアは訪れるであろう衝撃に身を強張らせた。
刹那、それはきた。
霧島の蹴りが腹部に炸裂する。
「――っ」
ルーシェリアは地面を転がった。
そして仰向けになると両手を頭の上に上げて降参のポーズをとった。
はあ、とため息を吐くと口を開く。
「疲れましたぁ」
試合が決すると二人はその場を後にした。
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