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リアクション
■幕間:インターバル‐医療現場の人々‐
「ど、どど、どうす、すればっ!?」
「本当に危ない患者は最寄りの医療施設に送ることになってますから、そんなに緊張せずとも大丈夫ですよ。ほら、私のしていることを真似てください」
アリシア・ジェニアス(ありしあ・じぇにあす)を落ち着かせながら九条 ジェライザ・ローズ(くじょう・じぇらいざろーず)は目の前で寝ている患者、久瀬の胸に薬草を煎じて塗ると布を添えて包帯で巻いた。
「て、手練れですね!」
「こう見えても医学部教諭してるからね」
この程度の打ち身なら湿布で充分だけど、と九条はアリシアに話しながら包帯の巻き方を丁寧に教える。根が真面目なのだろう、アリシアは頷きながら話を聞いていた。
「トメさんは更紗にヒールしてもらいますね」
「世話になりますなあ」
ミリア・アンドレッティ(みりあ・あんどれってぃ)はトメを椿 更紗(つばき・さらさ)のもとに案内すると患者の様子を伝えた。
椿はトメをベッドに寝かせると治癒を行う。
「治療が終わってもしばらくは横になるのですよ?」
九条から指示されるでもなく彼女たちは率先して動いていた。
こういった仕事に慣れているのかもしれない。
しっかりとここで役割分担ができているようであった。
――ただし、一名を除いては。
ルーシェリアと霧島が医務室を訪れると、ミリアたちが治療に勤しんでいる中、一人だけ薬品棚に並んでいる薬を珍しそうに見て回っている及川 翠(おいかわ・みどり)が視界に入った。
「霧島さんの治療をお願いしたいんですけどぉ」
ルーシェリアが声を掛けると、及川と同じように医務室を物珍しそうに見ていた彼女の従者がササッと近寄ってきた。
霧島をお姫様抱っこでベッドに運ぶ。
「ちょっと、これは……さすがに恥ずかしいわ……」
「はいはい。医務室では静かにね」
ミリアは霧島に言うと血の滲んでいる手を両手で包み込んだ。
見る間に傷が塞がっていく。
「汚れまでは落とせないからそこの洗面台で洗ってね。ルーシェリアさんは大丈夫?」
「私は大丈夫ですけど……あの方は何をしているのです?」
彼女は及川に視線を送る。
つられるようにミリアも及川を見たがすぐに視線を戻した。
「お気になさらず」
治療を終えたミリアは室内をウロウロしていたわたげうさぎを抱きかかえると顔をうずめた。
心地よいのだろう、とても幸せそうな顔であった。
久瀬の治療を終えたアリシアも休憩といった様子で椅子に腰かけている。
忙しさも落ち着いたのを確認した九条は残っている医療班に声を掛けた。
「私は会場の方を見て回りますから。あとはお任せします。何かあったら呼んでくださいね」
はーい、という皆の声を背に彼女は会場に向かった。
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