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その場しのぎのムービーアクター!

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序章


「これで撮影出来ますか?」
 卜部 泪(うらべ・るい)は集めた出演者リストをクロワサ監督に渡した。
「これだけの人数がいれば大丈夫です! 本当にありがとうございます!」
 頭を下げるプロデューサー。
「いえいえ、私はただ声を掛けただけですから」
「本当にどうやってお礼をすればいいのか――」
「まだ何も始まっておらん」
 静かに言葉を遮るクロワサ監督。
「ただ人がいるだけだ。映像は何一つ撮っていない。礼など後だ」
「あの、脚本についてなんですが」
「とりあえずは好きにしろ。演技に期待はしていない。言葉遣いも変に意識するな。それら全てをまとめるのが私の仕事だ」
 泪の質問にも憮然と返す。
「すいません、こういう方なんで……」
「気にしないでください。元々そういう話で呼びかけたわけですから」
 平謝りのプロデューサーに笑って答える泪。まあ、集めた人材を考えれば、好きにやらせてもらえるだけありがたい話である。
「何をしている。始めるぞ」
「は、はい! ただちに!」
 その一言で持ち場に付くスタッフたち。
「それじゃクランクインですね」
 クロワサ監督がモニターを見つめる中、泪はカチンコを鳴らした。