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逃げ惑う罪人はテンプルナイツ

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第2章 新境地を調査なの!

「あ!! 翠ちゃん達が居る!」
「え、翠ちゃん達?」
 地下水道の道中で突然、川村 詩亜(かわむら・しあ)は声を上げる。
 川村 玲亜(かわむら・れあ)は詩亜に手を繋がれたまま周りを見渡す。
 玲亜は及川 翠(おいかわ・みどり)達の姿を見つけると、すぐに大きな声で叫んだ。
「翠ちゃん!」
「あ、詩亜ちゃんに玲亜ちゃんなの。こんにちわなの!」
「「こんにちわ〜」」
 気がついて挨拶する翠に2人は挨拶を返した。
 つられて、翠と行動していたミリア・アンドレッティ(みりあ・あんどれってぃ)徳永 瑠璃(とくなが・るり)サリア・アンドレッティ(さりあ・あんどれってぃ)も挨拶をする。
 翠も玲亜もたまたま探索をしていたということがあり、一緒に先をすすむことにする。

「玲亜達も探索中だったのね……?」
「だって、こんな事って滅多に出来ないから」
 アンドレッティの問いかけに詩亜はどこか楽しそうに答える。

「ここってかなり入り組んでるんですよ!」
 目を輝かせながら瑠璃は、翠の持つ”銃型HC弐式・N”を指さした。
 そこには、オートマッピングにより翠達の辿った道が表示されて居た。
 詩亜も同じようにオートマッピングさせていた”銃型HC”を取り出し、情報を共有させる。
 それらのマッピングを統合させると、少しずつ奧へと進める道が見えてくる。

「こっち! こっちに行きましょう!」
「まだそっちは行ってないから何かありそうなの。詩亜ちゃんと玲亜ちゃんも行こうなの!」
「あ、瑠理ちゃん達待って!!」
 瑠璃につられて翠たちがついていく。

 それを見て、ミリアが深いため息をついた。
「あぁ、結局こうなるのね」
「保護者って大変ね……」
 という詩亜の手元では、まるでリードに繋がれた犬のように玲亜が前のめりに走り出そうとしていた。
 玲亜の手を詩亜が話せば、同じように玲亜も地下水道の奧へと走り去っていくだろう事が安易に想像ついていた。
 その時、何かが暗闇の奧でうごめいたのにミリアは気がついた。
 それはちょうど、翠達の向かう方向だった。慌ててミリアは叫ぶ。
「ストーープッ!!!」

 サリアはその声にいち早く反応して、前を見る。
「クモさんだ!」
 そこには高さ1メートル近くの巨大クモが5匹束となってかさかさと押し寄せてこようとしていた。
 瑠璃達は慌てて下がろうとするが、クモの速度は速い。
 その時、突然クモと翠たちの間に遮るように影が立った。
 その影、3メートルはある黒狼2匹はクモへとかみつくと、遠くへと放り投げる。

「あ、あぶなかったなの」
「安心するのはまだみたい……ほら」
「ミリアさんの黒狼(”影に潜むもの”)さんではダメだったみたいです……?」
 ほっと一息つこうとする翠に詩亜はつぶやくと、投げ飛ばされたクモを指さした。
 瑠璃達は、それをみて驚いた。
 クモはまさに、先ほどとおなじようにこちらへと向かってくる所だった。

「眠らせるしかないねっ!!」
 玲亜は詩亜の手から解放されると、クモたちへ向けて”ヒプノシス”を放つ。
 クモは眠気により一瞬動きが遅くなるが、効果はいまひとつのようだった。
「効いてないみたい……」
「ぬー、じゃあこれでどう?」
 玲亜は”サンダーブラスト”を試みる。
 次々と一閃となって雷がクモへ降り注いでいく。
 右往左往するクモに何発か音を立てて当たるが、傷を少しつけるくらいであまり効果はないようだった。

「これならどうなの!!」
 翠は”我は射す光の閃刃”をクモに放つ。
 すると、不思議なことに攻撃を受けたクモはあっさりと倒れてしまった。
「もしかして……クモさんは光に弱いのかも?」
 サリアは首を傾げながら言うと、詩亜は玲亜を見た。
「玲亜、あれいける?」
「光術よね。準備万端だよっ!」
 玲亜と詩亜は見合って頷くと、残ったクモにむけて”光術”を放った。

 クモはたちまち全滅した。

    §

「わああっ、なんだか雰囲気がからっと変わったよ?」
 サリアは楽しそうにはしゃぎながら言った。
 クモを倒しおえ、翠と詩亜達は探索を続けていた。その末たどり着いた場所はどうやら地下水道の最奧のようだった。
 周りの様子も一変しており、コンクリート作りのまっさらな壁から、ぼろぼろになったレンガで作られた壁へと変わっていた。
「わーっ、ミリアさん広いです〜!」
 瑠璃もその状況変化を楽しんでいるようだった。
 広さも段違いで、横6メートルはある巨大な地下通路、遺跡のようだった。
 ただ、ミリアと詩亜は2人で銃型HC弐式・Nをのぞき込んでいた。
「ここ……」
 詩亜が指さすオートマッピングされたマップには、通路の至る所には扉が設置されていることを記されていた。
 が、周りを見渡しても一本道しか見えない。扉らしきものは見当たらなかった。
「むー、でも扉なんてないなの。もしかしてバグったなの!?」
 翠は驚いた様子で言うが、詩亜は横に首を振った。
「私のも、全く同じだからそれはないと思うなあ」

「「わあっ!?」」
「え」
 突然、玲亜達が驚きの声をあげる。
 少し目をはなした間に、ふらふらしている玲亜達だったが何かを見つけたようだった。

「ミリアちゃん、扉だよっ!」
 サリアと玲亜、瑠璃の目の前、壁があるはず場所には地下に通じる大きな穴があいていた。
「私達が一番乗りなの!!」
「どんどん見つけましょう!」
 ミリアは空いた穴を見て、「見なかったことに……」と提案しようとしたときだった。
 ミリアの不安などをよそに楽しそうに翠と瑠璃は穴の奧へとすすんでいくのだった。