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逃げ惑う罪人はテンプルナイツ

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第4章 刺客と護衛忍者
「にしても、あの天麩羅騎士が指輪を持ち逃げねぇ……意外と根性あるなぁおい」
 柊 恭也(ひいらぎ・きょうや)は暗い地下水道、賞金稼ぎ達を背後から突いて歩いていた。
 そこで恭也はあることを思いついた。
「指輪……か」
 恭也は「ふっ」と笑みをこぼすと、賞金稼ぎ達から離れ、別の道へと駆け出す。

     §

 同じ頃、賞金稼ぎ達と別行動をしている者が居た。
「ククク、マリアとやらが盗んだグランツ教の指輪か……。これだけの賞金をかけることから、グランツ教にとって相当大切なお宝なのであろうな」
 ドクター・ハデス(どくたー・はです)は不敵な笑みを浮かべながら、マリアの載った手配書を眺めていた。
「我が部下および戦闘員たちよ聞け! 我らオリュンポスは、このマリアとやらから指輪を横取りし、グランツ教と交渉をおこなう切り札としてくれよう!」
 ドクターは戦闘員達に、”優れた指揮官”として命令を下す。
「というわけで、我が部下および戦闘員たちよ! マリアを追跡し、地下水路を探索するのだ!」
 そのかけ声と共に戦闘員達はそれぞればらけていく。

 その時だった暗闇からゆっくりと恭也が現れてくる。
 ドクターはそれに気がつくと笑いながら話しかけた。
「おお、恭也か! どうだ、ここは共同でマリアを捕まえようでは無いか」
「お、あんたも、マリアを捕まえるのか」
「させませんよ」
「「!」」
 予想外の声に、ドクターと恭也は、通路の向こう側を見た。
 そこからうっすらと現れてきたのは紫月 唯斗(しづき・ゆいと)だった。
「んだ、邪魔すんのかいハーレム忍者?」
 不機嫌そうに恭也は唯斗を見た。
「邪魔はしない。てーか、潔くここは退いてくれないか?」

「おのれ……だが、マリアとやら護衛を減らす良いチャン――」
「斗兄さん! そんなマリアなんていう女の色香に騙されるなんてっ!」
「お、おお?」
 ドクターが言いかけたとき、横から紫月 結花(しづき・ゆいか)が大声を上げた。
 唯斗は予想外の結花に、嫌そうな表情を浮かべた。
「そういうわけじゃ――」
「決めました!! 斗兄さんの目を覚まして、唯斗兄さんは私が連れて帰りますっ!」
「いや、話を聞けよ!」
 むちゃくちゃな話を進めてくる結花に唯斗はすかさず、そうではないと反論しようとする。
 しかし、結花は聞く耳なんかは持っていないとばかりに、”火術”により腕に火を宿らせる。
 結花は火をまとわせた腕をそのまま、唯斗へと殴りかかる。
「危な!」
 唯斗はそれを辛うじて避ける。が、直後さらに火力の強い炎の渦が、唯斗にめがけて襲いかかってくる。
「ちっ、おとなしくこんがりと焼けろよ!」
「バカ言うな!!」
「今だ、行け! 戦闘員達よ!」
 唯斗が疲れた様子なのを狙って、ドクターは戦闘員達を一斉に襲わせる。
 しかし、唯斗は”ソウルヴィジュアライズ”で戦闘員達の動きを先読みすると、”九十九閃”で倒す。

「背中ががら空きだぜ!! はっはっは、焼けろ焼けろーっ!!!!」
 恭也は”ドワーフの火炎放射”の力を最大限まで引き上げて、発射させた。
 炎はもはや唯斗を包み込むどころか、唯斗の周辺をも炎で巻き込まれる。
 もはや逃げ場がなく、予定通り【こんがりと焼けた】だろうと恭也は思った。
 が、次の瞬間背中に鈍い衝撃と痛みが走った。
「なっ」
「けほっ、マジで洒落にならねーな……」
 片目を閉じながら、”霊気剣”を恭也に向けて振り下ろしていた。
 しかし、服は炎に焼け、至る所がボロボロになっている。
 寸前のところで”潜在解放”をしていなければおそらく、こんがりとなっていただろう。
 恭也はそのまま動けなくなった。

「くっ。戦闘員達どころか恭也までやられてしまったか……ここは撤退するぞ結花」
「もうっ! 次は唯斗兄さんを絶対私のものにしてみせますからねっ!」
「……やれやれ」
 ドクターと結花達が元来た道を戻っていくのを見て唯斗は深いため息をついた。
 おそらくあれと同じような者達をここから通さないようにするのはそろそろ限界が来ていた。
 それでも、一番危険な人達をマリアから遠ざけることが出来たので、ひとまずは満足だった。