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海で楽しむ遊びと仕事

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海で楽しむ遊びと仕事

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 ゴーレムの全身がカチカチに凍結したところで
「少しでも効果が切れるように時間稼ぎをしなきゃだから粉砕するよ。だからみんな少し離れてね」
 美羽は巨大化カプセルを使用し、身長50mの巨人になり、ゴーレムと対峙する。
「……巨大化か。離れた方が良さそうだ」
 カンナは周囲に何らかの影響があると判断し、ここを離れる事に決めた。
「ここを離れるよ!」
 ローズは双子に声をかけた。
「りょ、了解!」
 双子は慌ててローズ達と一緒に美羽から離れた。
「はぁぁ!!」
 脚力強化シューズのスイッチを入れ、脚力を増強させた蹴りをゴーレムにお見舞いし、粉砕した。しかし、ゴーレムはしつこく再生し、巨大化が解ける三分が経つまで何度も美羽の蹴りの餌食になっていた。

 その間、
「大丈夫か、ヒスミ、キスミよ」
 双子から材料を聞き出そうと綾香が接触しに来た。
「どう見ても大丈夫に見えねぇだろ」
「それで何なんだよ」
 双子は砂浜に座り込み、疲れ切ったように答えた。
「あのゴーレム化の薬の材料には何を使ったのか教えるのじゃ」
 綾香はさっさと用件を口にした。
「確か……」
「それは……」
 双子は思い出しつつ答えた。
「ふむ。となるとこの場で採取出来る物で十分中和剤は作れるというわけじゃな」
 『博識』を持つ綾香はすぐに材料について見当がついた。
「おい、もしかして中和剤を作るのか」
「それならさっさとしてくれよ」
 何のための質問なのか悟った双子は綾香に食いついた。
「もう少しの辛抱じゃ」
 綾香はそれだけ言ってリースの元に急いだ。
「もう少しってどれぐらいだよ……って、キスミ、来たぞ」
「おいおい」
 突然、ゴーレムの足が迫ってくるも対処が出来ない双子。
 それを助けたのは、
「二人共、危ない!」
 マーガレットが『風術』を双子に目がけて放ち、少しだけ吹き飛ばし、ゴーレムの足の着地点から少しだけずれた場所に移動させた。
「ちょっ、いてぇな」
「助かったけど。オレ達、目がけて魔法使うなよ」
 地面に軽く身体を打ち付け座り込んでいる双子は感謝しつつも軽く文句を言った。
「ごめん、ごめん。でも踏みつけられたらそれだじゃ済まないんだから。ほら、二人とも避難して! ここは蒼空学園テニス部で鍛えた足を持つこのあたしが何とかするから」
 双子の相手を軽くしてからマーガレットはゴーレムの前に立つ。
「……仕方が無いわね。これも親友のリースのため」
 ルゥルゥは下僕達である四十八星華の親衛隊をゴーレムへ攻撃命令を下し、様子を見守る。
 マーガレットとルゥルゥはリースと双子のために奮闘した。
 その双子は再びゴーレムとの追いかけっこを再開し、ゴーレムの被害者を生み出す事となった。

「聞いて来たのじゃ」
 帰還するなり綾香はリースに詳細を伝えた。
「あ、ありがとうございました。早速、材料を集めて作製してみます」
 リースは礼を言い、中和剤作製のために行動を起こす。
「では私はゴーレムの相手でもして来ようかの」
 綾香は再びゴーレムと戯れるために現場へ。

「……一から素材を集めるのは大変ですから採取の人に分けて貰って」
 『博識』を持つリースすでに必要な素材を理解しており、浜辺を採取する人に素材を分けて貰おうと急いだ。
 捜し始めてすぐ。
「あ、あの、中和剤の作製のため素材を分けて欲しいのですが」
 リースは採取者に声をかけ、詳細を話した。
「中和剤? 大変だねぇ」
「薬を作った方が早そうだもんな」
 北都と白銀はリースが求める素材のいくつかを渡した。
 そして、
「中和剤か。海藻ハーブとか残りの素材なら俺が採取した中にあるから分けよう」
 近くを通りかかったカシスも会話に加わった。
「……あ、あのありがとうございます」
 リースは予想外に早く材料が揃いほっとして採取者達に礼を言ってから調薬のためこの場を離れようとした。
 その時、
「人手が必要なら調薬を手伝う。少し興味あるしな」
 カシスが引き止めた。本日調薬をしたくて参加したのでどんな調薬だろうと見逃すはずがない。
「……えと、そうしてくれると助かります」
 リースは快諾した。緊急のため人手は多い方がいいので。
「あぁ。さっさと始めよう。状況がさらに悪化する可能性があるからな」
 カシスは採取を中断して場所を変え、リースと共に中和剤の調薬を始めた。
 調薬の時間稼ぎは、マーガレットやルゥルゥや他の人達がしてくれているので気にせずにリースとカシスはたっぷりと時間をかけて丁寧に調薬をし、中和剤を完成させた。

 中和剤が完成する前。
 浜辺、一軒のたこ焼き屋。

「売れ行きは上々でありますよ」
 葛城 吹雪(かつらぎ・ふぶき)はこれまでの売り上げを数えながらご満悦。
「夏だからこそ熱々の物が食べたくなるのであろう」
 イングラハム・カニンガム(いんぐらはむ・かにんがむ)は大量の手足でたこ焼きを手早くひっくり返していた。端から見たら蛸がたこ焼きを焼いているという最高の宣伝だったりする。
「それよりあの二人また騒ぎを起こしてるわね。あれほど大きいとこっちに来たら一踏みで潰れてしまうから避難をした方がいいと思うんだけど」
 コルセア・レキシントン(こるせあ・れきしんとん)が気になるのは巨大なゴーレムの事。
「心配無いでありますよ!」
 常識的なコルセアの意見を吹雪は能天気に退けた。
「店じまいにはまだ早い」
 イングラハムも営業をやめる気は無いらしく作業を続ける。
「……嫌な予感しかしないのだけど」
 唯一の常識人であるコルセアは溜息を吐き出していた。

 それからしばらく後。
「うぉぉぉ」
 ゴーレムを背後に双子が吹雪き達がいる方角に向かって来た。
「こっちに来るわよ」
「踏み潰されるであります!」
「むう」
 コルセアと吹雪は『行動予測』でイングラハムは『戦略的撤退』で瞬時に振り下ろされるゴーレムの足から避難した。
 避難出来なかったのは屋台であった。踏み潰され強引に店仕舞い状態。
 ゴーレムと双子は何事も無かったように去って行った。

 双子達が去った後。
「……予感的中ね」
 そう言いながらコルセアは散らばった売り上げを拾い始めた。
「……我の屋台を……城の人柱にするしかなかろう」
 屋台を無残な姿にされたイングラハムは怒りで茹で上がり、なぜか匠のシャベルを取り出し不穏な事を口走った。
「むむ、イングラハムが怒りで茹蛸になってるでありますよ。これは参加するしか無いであります!」
 と言うやいなや吹雪は『兵は神速を尊ぶ』で双子の元へ。
「ちょっと、吹雪! と、イングラハムも」
 手早く売り上げを拾い終わったコルセアは双子の元へ向かう吹雪とイングラハムを止めようとするも間に合わず、巻き込まれる形でゴーレム退治に参加する事に。

「凍らせても海に落としてもだめってどれだけ頑丈なんだよ」
「ヒスミのせいだぞ。効果がなかなか解けないし、何かオレ達囮になってるし」
 双子は進展の無い状況に文句を垂れる。
 そこに
「相変わらずでありますな!」
 双子をよく知る吹雪が登場。
「げっ!?」
 毎度、痛い目に遭わされているため青い顔で吹雪の方に振り向いた。
「先ほどイングラハムの屋台を壊してくれたでありますな」
 吹雪は屋台の事を持ち出し、目の前に立ち塞がる怒り狂ったイングラハムを示した。
「何でシャベルを持ってるんだよ」
「……嫌な予感しかしねぇ」
 毎度の事ですっかり察しがよくなっている双子。
「自分は筏に括り付けて海に流すだけで済ませようと思ってたでありますが、あの蛸が砂のお城の人柱にすると言って聞かないのでありますよ」
 吹雪はさらりととんでもない事を言い出す。
「ちょっ、何だよそれ。どっちも悲惨じゃね?」
 どちらも自分達が痛い目に遭う事に思わずツッコミを入れるヒスミ。
「その前に助けてくれよ」
 背後を気にしながら走り続けるキスミ。
「それならこのまま囮役を頑張るであります!」
 吹雪はそう言うなり離脱し、ゴーレム退治の準備に入る。
「ええええ!?」
 双子は無情な吹雪に悲鳴を上げつつ走っていた。それも城に向かって。