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 バーベキューに美味しいお菓子やお茶で和気あいあいと和んだところで情報を求める者達は次々と口を開き始めた。
「ところで最初に言っていた一つの組織が二つに別れたというが、もう一つの組織は何か教えてくれないか?」
 甚五郎はウララが最初に発言していた事が気になり訊ねた。
「もしかして学者風の男性がいる組織かな」
 北都も言葉を継ぐ。
「……そうです。もう一つは調薬探求会と言います。そこの会長が学者風の男性で薬学関連の魔道書シンリと言います」
 ヨシノはお茶を楽しみながら隠す事無く話した。
「それでどうしてあの遺跡にいたんだい? やはり例のレシピの事でかい?」
 エースが続いて遺跡にいた事について問いただした。
「そうです」
 ヨシノはこくりとくなずいた。
「で、話を元に戻していいか? その探求会とやらはどんな団体なんだ?」
 少しでも多く事情を知りたいベルクは話を元に戻した。
「……ふふん」
 ベルクの傍らでは獣人化した『コンピューター』を持つポチの助が素速くイヌプロコンピューターに情報を入力し、まとめている。ちなみに情報入力に集中するためにビグの助に乗っている。ちなみに『根回し』で予めエリザベートからこれまでの情報は入手している。
「……そのまんまなんだよ。魔法中毒者そのものの」
 答えたのは次々と肉を口に詰め込みまくるウララだった。
「それはつまり調薬を極める事を追求しているという事でしょうか」
 エオリアはヨシノにお菓子を勧めながら訊ねた。
「はい。調薬を極める事を活動目的にしている団体でそのためならば合法非合法関係無しで調薬のためなら簡単に人道を外します」
 ヨシノはお菓子を食べながら伏し目がちにベルクの問いかけに答えた。
「そうなのですか。外見では悪人には見えませんでしたが」
 遺跡でシンリの姿を読み取ったフレンディスが小首を傾げた。
「その通りです。全員が全員悪人ではありません。むしろそんな人は少数です。多くは、研究者や調薬師だと胸を張る人の良さそうな人達ばかりなんです……それに元仲間の者もいます」
 ヨシノはフレンディスにうなずき、詳しい事情を話す。
「……それ故、事を荒げたくないとあの遺跡でも話し合いのような事をしておったのじゃな」
 草薙は取り合っている割には穏やかな様子であった答えをようやく得た。
「そうです」
 ヨシノは静かに答え、お菓子を食べた。
「肝心の別れた理由は何だ? やはり方向性の違いか?」
 甚五郎が最も基本的な事を訊ねた。
「その通りです。探求よりも大切なものが人として守るべきものがあると気付いて無茶な事をやめるように皆に言ったのですがどうにもならずに袂を分かつ事になってしまい」
 ヨシノは少し苦しそうに話した。ヨシノもまた過去に探求会のような事をしていた事は他の採取者によって皆に知られているため皆は自身の事を振り返っているのだと分かっていた。
「それで特別なレシピについてどこまで知っているんですか? 何をしようとしているのでしょうか? もしかして作ろうと考えているのですか?」
 舞花はさらにヨシノ達の特別なレシピの扱いについて立て続けに質問を投げかけた。
「一通り見たけど、素材の多くはオリジナル素材で生成法にも問題があるもばかりだったさね。無茶な生成法を必要とするものがあるさ」
 『薬学』を持つマリナレーゼが話しに加わった。ポチの助がまとめた物から今までの事は確認済み。無茶な生成法とは、自他に何らかの犠牲を強いて生み出す事だ。
「……えぇ。それは分かっていました。それで探求会が何かをしようとしていると感じて動いているんです。何とかして止めようと、何か嫌な感じがして……作製する事については明確に答える事は出来ません。私いえ私達もまた調薬をする者、新しいレシピがあれば作製したいと思いますから」
 とヨシノは正直に言った。
「素直さね」
 特別なレシピの使用についての答えにマリナレーゼはヨシノに悪い印象は持たなかった。
「薬学関連の魔道書という事はシンリさん達の方が特別なレシピについて詳細を知っているのではありませんか?」
 エオリアはシンリについて追求。
「はい。その通りです。そう思いまして探りを色々入れたりと今もしているんです。それで彼らもまた貴方がたに接触したいと考えている事、必死に情報収集をしている事を知りました」
 ヨシノは今回の依頼に繋がる事情を話した。
「……それで先手を打とうとイルミンに依頼を入れたというわけか」
 とベルク。
「……はい。人手が欲しかったのは事実ですが」
 とヨシノは詳細を話さないまま依頼をした事に申し訳なさそうにした。
「それで特別なレシピがいくつ存在しているかは分かっているのかな? 見つけたものはあるのかな?」
 北都が再び特別なレシピについて追求。
「詳しくは分かってなくて、あたし達が発見したのはまだ一つなんだ。みんなが見たいだろうと思ってちゃんと持って来たよ。何か半分なんだよね。調査を頑張って所有者が亡くなった後、遺物と一緒に売られた事を知ってさ。必死に行方を追って見つけたんだよ。あたしと他の仲間とで」
 ウララはごそごそと紙切れを取り出し、胸を張って披露した。
「北都、これでオレ達が前に見つけた奴と合体すれば完成だな」
「そうだねぇ」
 白銀と北都は遺跡で発見したレシピが完成した事を確認した。
 ここで
「良ければこちらが預かる事は出来ないかな? 保管についてもきちんとするから」
 アゾートが特別なレシピの扱いについて申し出た。
「……協力するというのはどうでしょうか。私達もこのレシピを調べていますし」
 舞花がアゾートの援護をすべく言葉を足す。
「会長、頼んじゃえば。助けてくれる人が多い方がいいし」
「そうですね。お願いします」
 ヨシノはウララの説得で協力する事に決めた。
「先ほど私達との接触を考えてるそうですが、その際情報開示を求められた場合はどうしたらいいでしょうか。話を聞く限り、完全に悪人という訳ではなそうですが」
 舞花が今後を考えての事を訊ねた。
「……それは貴方がたにお任せします。開示してもしなくても構いません。どちらにしろ彼らは知るでしょうから」
 ヨシノは複雑そうに答えた。やはり元仲間がいるからだろう。
「複雑さね」
 マリナレーゼが一言洩らした。
「手に入れた情報ではレシピの一つは処分されこの世にはないのですが、あの研究所に訪れた旅人達に仲間には内緒でレシピの内容を話したらしく。その内容を本に記したらしいんです」
 ヨシノはもう一つ特別なレシピについて知っている事を話した。
「しかもその本、探求会の方にあるんだよね。あの人達少なくとも二つは手元にある。今も二つのままかは分からないけど。ちなみに本の名前は……何とかの旅団とか」
 ウララは溜息をつきながら言った。
「……もしかして名も無き旅団か?」
 ベルクは心当たりのある名前を出した。
「そうそう。そんな感じの名前。あるのは情報だけで実体はまだ見ていないし入手した経緯とか詳しい事は分からないよ」
 ウララは呑気にお菓子を頬張りながら言った。
「マスター、情報が手に入りましたね」
「あぁ。奴らからその情報を手に入れる事は出来るか?」
 フレンディスとベルクは目的が少し達成された事を喜んだ。しかし、ベルクはさらなる詳細を求める。
「私達では無理でしょうが貴方がたなら手に入るかもしれませんが、明確には答えられません」
 ヨシノは軽く左右に頭を振りながら答えた。