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【創世の絆・序章】涅槃に来た、チャリで来た。

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【創世の絆・序章】涅槃に来た、チャリで来た。

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第七章 撮ろう! 「ニルヴァーナ来た」! 3

 ともあれ、これで当初の目的は達成したので、あとはフリータイムとなった。

 まず、最初に撮影するのは葛たちである。
「ダイアも、う゛ぁるも、お兄ちゃんも、ゲルバッキーさんも一緒に撮ろうよ!」
「え? あ、わかったっス」
「ああ、私も構わないが」
 そんな感じで、ぞろぞろとプリントシール機の中に入り込む。
 できたプリントシールは、真っ白なビーグル犬の「はんぺん」を抱えて満面の笑顔を浮かべた葛を中心に、両隣にダイアとゲルバッキー、そして後ろにちょっと照れたような様子のヴァルベリトと、そんな彼らの様子に和んだような笑顔を浮かべた良雄の写った、何とも賑やかかつ微笑ましいものとなった。
「あ、みんなよく撮れてる!」
「本当っスね」
 葛は嬉しそうにそれを見ていたが、突然こんなことを言い出した。
「そういえば、ダイアとゲルバッキーさんってなんだかお似合いな気がする◯♪」
「ちょっと葛、いきなり何を言い出すの?」
 予期せぬことに少し慌てるダイアを尻目に、葛はゲルバッキーに笑顔でこう言った。
「ゲルバッキーさんの好みかな◯」
「そうだな、素敵な人だとは思うぞ」
 さらっとそう答えるゲルバッキー。
 状況が状況であるから、さらっと受け流しただけなのだろうが、まあ、それでもそう悪い気はしないダイアであった。

 次に撮影に臨んだのは、竜司たちパラ実組である。
「てめぇら、良雄のパラ実復帰を祝って記念写真撮ろうぜェ!」
「ええっ!?」
 良雄はまだパラ実に復帰するなんて一言も言っていないのだが、竜司の頭の中では「アスコルド大帝と分離した=エリュシオン帝国からパラ実に出戻り」ということになってしまっているようである。
 とはいえ、それでこんなにご機嫌な竜司に、今さら面と向かって「違います」と言えるはずもない。
「オラ、ゲブー、菊、和馬、鮪、それからヴェルデも来いやァ!」
 弁天屋 菊(べんてんや・きく)如月 和馬(きさらぎ・かずま)も含めて、基本お祭り好きだったり深く考えなかったりする面々が多いので、そう言われるとみんなゾロゾロと写りにきてしまう。
 ただ一人、ヴェルデを除いて。

 実は、この段階ではまだ多少ながら軟体アリがこの近辺にも残っていたのである。
 当然、人が集まっているこの施設はその攻撃の標的になりかねないのだが、ここまで撮影中に軟体アリの乱入がなかった理由はただ一つ。
 ヴェルデがこの施設の入り口付近に罠を大量に張って、エリザロッテとともに軟体アリの侵入を阻止していたからであった。
 ところが、当然ながら竜司たちにそんな理屈は通じない。
「いや、俺はここを離れるわけには!」
「いいから来いってんだァ! このパラ実一のイケメン・吉永竜司と写真を撮れるチャンスなんて滅多にねぇぞォ!!」
 全然理屈になってない理屈で、結局身柄を確保されてしまう。
「エリザロッテっ! 後は任せたっ!!」
「はぁ!? ちょっと、どうしろってのよ!?」
 エリザロッテの抗議も空しく、ヴェルデは他の面々とともにプリントシール機に引き込まれ。
 ドヤ顔の竜司と、明らかに居心地の悪そうな良雄の二人を中心に、パラ実の皆さんが勢揃いした、なんとも微妙かつ妙な威圧感のあるプリントシールが出来上がったのであった。

 三番目は葵である。
 巫女服を着て、お供の白鳩たちも出して、ゲルバッキーと良雄も呼んで……だが、それでも何か足りない。
 葵はあることに思い至ると、一度プリントシール機の外に出て、そのまま施設の入り口辺りまで行ってみた。
「あ、いたいたっ」
「え、あなた何しに……」
 訝しげなエリザロッテには目もくれず、まだ残っていた軟体アリに加減して魔法を叩き込む。
「これでよし、っと」
 そう言って、ひっくりかえって目を回している軟体アリの腹のあたりを抱えて、ずるずると施設内へと引きずっていく。
「え、葵さん何やってんスか!?」
「えー? だってニルヴァーナに来た証拠があった方がいいかと思って」
 そう言うと、軟体アリをプリントシール機の中に放り込み、自分も中に戻ってカーテンを閉めた。
「うん、断然らしくなったね〜。ついでに書き文字も入れとこう、っと」
 かくして、巫女服の葵と目を回した軟体アリ、ビビってる良雄と平然としているゲルバッキー、そしてその周囲を埋め尽くすかのような白鳩の群れの写った写真に、「ニルヴァーナ来た」という可愛らしい書き文字が加わった……すごくそれらしい、というか、なんというか……まあ、そんな感じのプリントシールが出来上がったのであった。