|
|
リアクション
第九章 襲来! 魔剣獣ギフトン!? 1
ここで、少しばかり時間は遡る。
「……大したもんは見当たらんのう」
部下の三人の 男(さんにんの・おとこ)が持ってきた「お宝」を手に、ルメンザ・パークレス(るめんざ・ぱーくれす)は小さくため息をついた。
他のメンバーが戦闘していたり、プリントシール機に気をとられている間にうまく先に地下3階に辿り着いてはみたものの、「ギフト」らしきものが全く見当たらないのである。
「どこも似たような様子です。壊れた装身具や得体の知れない壊れた機械が転がっているくらいで」
男Aの言葉に、ルメンザは渋い顔でこう答える。
「自分のカンにも全然ピンとこんからな……」
本来、それらしい「宝物」があれば、「トレジャーセンス」で一発で見当たるはずである。
にも関わらず、それらしい反応が全くない、ということは……。
「まさか、あの犬コロに一杯くわされた、か……?」
突入前の質問でもはぐらかされてしまったし、ゲルバッキーが何を指して「ギフト」と言ったのかは、結局のところ本人以外の誰も知らないのだ。
「『ギフト』……一体、何なんだ……?」
一同の心境を代弁するように、男Bがそう呟いた、まさにその時。
「フハハハ! そんな探し方でギフトが見つかるはずがあるまい!」
毎度おなじみの高笑いとともに、秘密結社オリュンポスの大幹部、ドクター・ハデス(どくたー・はです)が姿を現した。
その傍らには、メイド服姿のヘスティア・ウルカヌス(へすてぃあ・うるかぬす)と、身の丈3mの聖剣勇者 カリバーン(せいけんゆうしゃ・かりばーん)が控えている。
とっさにルメンザを守るべく前に飛び出そうとした男たちを、ルメンザは手で制し、それからこう尋ねた。
「キミは何か知っとるようじゃのう。聞かせてくれんか」
その言葉に、ハデスは一度鷹揚に頷いてから、自身の推理を語りだした。
「『ギフト』。なぜか皆英語だと思っているようだが、実はドイツ語だとしたらどうだ?」
「な、なんじゃと!?」
いきなりダイナミックな発想の転換。
確かに、皆英語の「Gift」、すなわち「贈り物」を想定して動いているようだが、仮にこれがドイツ語の「Gift」だとすれば、その意味するところは――「毒」。
「贈り物」であればなんとなくよさそうなもののような気がするが、それが「毒」となると、一気に物騒なイメージに大変身である。
「そう、それこそがこのシェルターに住んでいたニルヴァーナ人たちを全滅させてしまった元凶……」
あまりにも急激かつ恐ろしい展開に、ルメンザも、男たちも、固唾をのんでハデスの次の言葉を待つ。
そのリアクションに気をよくしつつ、ハデスはドヤ顔で結論を述べた。
「『ギフト』……いや、ニルヴァーナ八神獣の一体、魔剣獣ギフトンなのだっ!」
……うん、どうしてこうなった?
「ニルヴァーナ八神獣」とか、そんなフレーズが一体どこから湧いてきたのか。
彼の思考のブラックボックスの中で一体どのような処理が行われていたのか、それを理解するのは常人には――そして、ルメンザたちにももちろん不可能であった。
「……すまん、聞く相手を間違えたようじゃ」
ルメンザは一度やれやれとばかりに首を横に振ると、ハデスにこう言い放った。
「なんにせよ、自分らのジャマはせんことじゃ」
……が。
ハデスが何か答えるより早く、ルメンザの顔に驚愕の表情が浮かび、男たちが今度こそルメンザの前に飛び出して臨戦態勢をとる。
それをハデスに対するものと認識して、ヘスティアがハデスの前に飛び出し、カリバーンとともに迎撃態勢をとった……が。
「違う、後ろじゃ!!」
ルメンザの声に、ハデスが後ろを振り向いてみると。
体高2mはあろうかという大きな狼型の機械生物が、悠然と彼らの方に歩いてきていたのだった。