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はっぴーめりーくりすます。

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はっぴーめりーくりすます。
はっぴーめりーくりすます。 はっぴーめりーくりすます。 はっぴーめりーくりすます。 はっぴーめりーくりすます。 はっぴーめりーくりすます。 はっぴーめりーくりすます。 はっぴーめりーくりすます。 はっぴーめりーくりすます。 はっぴーめりーくりすます。 はっぴーめりーくりすます。

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27.クロエのでーと。2


「♪」
 リンスが祐司らと喋っている時、クロエは日下部千尋からもらったクリスマスカードを読んでいた。

 『今年は、クロエちゃんに会えてよかったとおもいます!
  それが、きっとサンタさんからちーちゃんへのプレゼントのひとつだったんだよ、きっと!
  ちーちゃんは、クロエちゃんとの出会いを大切にしたいな、って思います。
  だってね、クロエちゃんに会えて、ほんとうに嬉しかったの!
  これからも仲良くしてね!
  大好きっ!』

 拙い字ながらも、たくさんの想いが込められたカード。
 特に想いが込もっているのは『大好き』の箇所で、カードからはみ出さんばかりに大きな文字で書かれていた。
 クロエは笑顔でそれを読み、きゅっと抱き締める。
 その時工房の電話が鳴った。
 相変わらずリンスは祐司と喋っていたし、クロエが椅子から立ち上がり電話を受ける。
「はい、もしもし!」
『メリークリスマス、クロエちゃん』
「クロスおねぇちゃん?」
 電話の主は、クロス・クロノス(くろす・くろのす)で。
 思わぬ相手からの連絡に、クロエの表情が、声が、明るくなる。
「どうしたの?」
『突然なのですが……クロエちゃん、今日これから時間ありますか?』
 今日、これから。
 お日様は沈んで、空はオレンジ色で、出掛けるにはちょっと遅いかなという時間だけど。
 ――さっきもでーとしてきたところだもの!
「だいじょうぶよ!」
 そう言うと、電話口の向こうで安堵した気配を感じた。
『では、クリスマスデートしませんか?』
「でーとを?」
『ええ。クロエちゃんが嫌でなければ』
 その誘いは、嬉しい。
 さっきもデートをしてきたけれど、だけど、それは自分からの提案で。
「おどろいたわ」
『何がです?』
「さそわれることって、こんなにうれしいのね!」
 だから、つまり。
『OK、ということでしょうか?』
「もちろんよ!」
『では、早速。待ち合わせ場所ですが、ヴァイシャリーにある教会、わかりますか?』
「しってるわ。リンスとおかいものにいったとき、なんかいかちかくをとおっているもの」
『では、そこで。楽しみに待っていますね』
 そう言って、電話は切られた。
 ――たのしみに、まっている?
 ということは、だ。
 ――おねぇちゃん、もしかしてもうきょうかいにいるの?
 だとしたら大変だ。
 急いで行かないと、クロスが凍えてしまう!
「リンス、リンス!」
「何、クロエ」
「わたし、でーとしてくるわ!」
「また?」
 リンスは驚いたような顔をしている。それから窓の外を見て、「もう暗くなるよ」と言った。
 さっき、心配させてしまったばかりだから、心苦しくもあるけれど、でも、大丈夫なのだ。
「へいきよ! だって、クロスおねぇちゃんとのでーとだもの!」
「クロノスと? じゃあ安心だね」
「いってもいい?」
「もう行く約束したんでしょ、その様子なら」
「リンスはなんでもおみとおしなのね」
「まあね」
 いってらっしゃい。
 そうやって、手を振られた。
 だから、いってきます、手を振り返して。
 いちにのさんで、走り出す。
 ――まっててね、おねぇちゃん!
 クロスに会うために、走る。


 デートしようと言ったのは、単なる思いつき。
 工房でクリスマスパーティというのも楽しそうで素敵だけれど。
 ――イブですし。二人きりで過ごしたいと思っても、罰は当たりませんよね。
 だから、電話をかけて。
 もしも無理だと言われたら、工房まで向かうつもりだった。だから、クロスはもうヴァイシャリーに到着していて。
 ――クロエちゃん、きっと走ってくるでしょうね。
 その様子を想像して、笑む。
 ――転ばないといいのですが。
 外は寒くて、雪が降りそうな空だけど。
 不思議とそんなに、寒くない。
「おねぇちゃーん!」
 少し遠くから、声が聞こえた。
 声のした方向に顔を向けると、全速力で走ってくるクロエの姿。
「ぁ、わ、あ、よけてぇー!」
 全速力すぎたせいだろう。
 急には減速できないらしく、勢いを殺せないままクロエが突っ込んでくる。
 しかしクロスはかわしたりしない。
 真っ向から――受け止める!
 ぼすん、
 と飛び込んできた音がして。
 かつて人を跳ね飛ばしたこともあるクロエのろけっとだっしゅを、クロスは受け止めきった。
「こんばんは、クロエちゃん」
「は、わ。クロスおねぇちゃん、だいじょうぶ?」
「もちろんですよ。それに私が避けていたら、クロエちゃんが何かにぶつかってしまってましたしね」
 それは、クロエの騎士であるクロスとしては、やってはならないことだ。
 この愛らしい少女を、護らねば。
 そう、思っていた。
 だからしっかり抱き止めて、それからそっと地面に下ろす。
「それじゃあ、行きましょうか?」
「うん! やっぱりクロスおねぇちゃんなら、あんしんね」
「それはもう。だって私は、クロエちゃんの騎士ですから」
 にこり微笑み、手を繋ぎ。
 イルミネーションに彩られ輝く街を、歩き出した。


 街の外観を楽しんで回った後、二人は喫茶店に居た。
「ここのケーキ、とっても美味しいんですよ。クロエちゃんはどのケーキが好きですか?」
「わたし? わたしは、チョコレートがすきよ」
「でしたら、ガトーショコラがお薦めですね」
 注文するケーキが決まったところで、オーダー。
 クロスはティラミスと紅茶を、クロエはガトーショコラとホットチョコレートを注文。
「飲み物までチョコレートなんですね」
「すきなの。おかしいかしら?」
「いいえ? 好きなものは好き、それでいいと思います」
 喋っているうちに、ケーキが運ばれてきて。
 目の前のケーキに、クロエが目を輝かせる。
「おいしそう!」
「味は保証しますよ」
「いただきまーす♪」
 小さな、けれどクロエには大きなフォークでケーキをぱくり。
「〜〜っ、おいしい……っ!」
 幸せそうに頬を押さえて、クロエは言った。
「それは何より」
「クロスおねぇちゃんにも、おすそわけなの!」
 はい、あーん、と。
 クロエがフォークを差し出す。
 素直にあーんと頂いて、その味を堪能する。
 チョコレートを多く使っているのだろう、ずっしりとしたチョコ特有の重みを感じる風味、それに反して軽やかな食感。その絶妙なバランスに思わず目尻が下がる。
「おいしいでしょ?」
「ええ、美味しいですね。
 では、お返しに」
 クロスも一口分すくってクロエに差し出す。
「……にがあまい? かわったケーキね!」
「ティラミスと言って、スポンジにコーヒーを染み込ませてあるんです。だから苦いんですね。クリームはマスカルポーネと生クリームを混ぜてあるので、甘いんです」
「……むつかしいわ。おとなのあじってこういうこと?」
「かもしれませんね」
 クロエの感想にくすくす笑って。
「そういえば。クロエちゃんって、イルミネーションを見るのは今年が初めてなんじゃないですか?」
「そうよ! よくわかったわね、クロスおねぇちゃん」
 だって、花火を見たのが初めてだって言っていたから。
 きっと、これも初めてなんだろうなと思って。
「どう思いました?」
「きれいね。きらきらしていて、みんなをてらしていて。おひさまみたい。
 あれ? でも、おひさまがしずまないときらきらしないから、おつきさまかしら。おほしさま?」
 うぅん? と首を傾げるクロエ。
 ――可愛いですねぇ、本当に。
 イルミネーションは、確かにとても綺麗だったけど。
「可愛さでクロエちゃんに勝るものってあるんでしょうか」
 こんなに愛らしい娘よりも可愛いもの。
 ぱっと思いつかなかった。
 クロエは未だに、月か星かで悩んでいて、クロスの呟きにも気付かなかったようだ。
「ねぇ、クロエちゃん」
「なぁに?」
「来年も一緒に、イルミネーションを見れるといいですね」
 それが希望系だったのは、来年どうなるかがわからないから。
 だから、叶うといいなと願いを込めて。
「? みれるでしょ?」
 だけどクロエはあっさりと肯定して。
 きょとん、としてしまったクロスに、
「だってわたし、またみにきたいもの! だからつれていってねクロスおねぇちゃん。やくそくよ!」
 にっこりと、笑いかけてくるのだ。
 ――やっぱり、この子は。
「本当に可愛いですね」
「?? よくわからないけれど、ありがとう!」
「あ、クロエちゃん」
「なぁに?」
「外、雪が降ってます」
「! これがゆき、なのね!」
 空から降る白い雪。
 それを見て、クロエははしゃぐ。
 ――来年も、こうして二人で過ごせたら。
 それはどんなに幸せだろう?