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第50章 近況

「……」
 フリューネ・ロスヴァイセ(ふりゅーね・ろすう゛ぁいせ)が向かった先は、空京のレストランだった。
 街には沢山のカップルの姿があり、少し居心地の悪さを感じていた。
「早かったな。待たせてすまない」
 待ち合わせの相手は、すぐに訪れた。……レン・オズワルド(れん・おずわるど)だ。
 レンは入ろうとレストランを指差す。
 頷いてフリューネはレンに従った。

「そう警戒するな。……俺の気持ちは知ってのとおりだが、今すぐどうこうとは考えていない」
 テラス席で、料理を前にちょっと困った様子のフリューネにレンはそう話しかけた。
「今は互いに、集中していることもあるしな」
「そう、カナン解放に力を注いでいきたい」
 はっきりというフリューネに、レンは安心感を覚える。
 変わらない彼女の姿勢に。
 それはレン自身も同じだった。
 出会った時と同じように。
 自分の信じた道を貫き遠し、戦う事の出来ない誰かの為に剣を振るう。
「その生き方を貫けるよう、フリューネの翼を護りたい」
 レンは穏やかに言い、ワインに口をつけた。甘さと、少しの苦みが口の中に広がっていく。
「一緒に、飛んでいけるといいわね。あなたと、私と、仲間達と……」
 フリューネはスープを飲みながら、軽く……少し恥ずかしげな笑みを浮かべた。
「あの……もしかしたら、今日はなんか、決断とか迫られるんじゃないかって、そんな気がしてて」
 俯いて、フォークでサラダのトマトを刺しながら、彼女はレンを見ずに言葉を続けていく。
「でもそうなのよね。やりたいこと沢山あるし、自由に空を飛んでいたい、し。戦友のあなたのことも……だし」
 照れてはっきりと言葉にしなかったけれど、好意を持っていることだけは彼女の言葉から感じ取れる。
「だから、これからもよろしく。戦場で会った時にはまた背中を預けることが出来たら、嬉しいわ」
 ほんのり赤くなった顔を向けて、フリューネはレンに微笑んだ。
 直後に、料理に視線を戻して、サラダをわさわさ食べて、肉をばくばく口に運んで、ワインを色気なくごくごく飲んでいく。
「そうだな」
 レンも穏やかな微笑を見せる。
「傍にいない時も、俺の想いはフリューネと共に」
 そして、空に目を向ける。
 彼女も、つられるかのように空を見上げた。
「この空のように……」
 レンのつぶやきのような言葉に、フリューネが淡い笑みを浮かべた。

 愛の言葉を述べることも、チョコレートを渡すこともなく。
 青空の下で、ちょっと互いを意識しながら、食事をとり、次第に会話を弾ませていき。
 短い再会の時を、穏やかな時間を楽しんだのだった。