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【ザナドゥ魔戦記】ロンウェルの嵐

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【ザナドゥ魔戦記】ロンウェルの嵐

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■エンディング

 エシム・アーンセトは東カナン領主殺害未遂の重犯罪人として捕えられた。
 12騎士の体面を保つため、その手に拘束はない。
 将軍たちに周囲をとり囲まれる中、青ざめて強張った顔ながらも毅然とした態度を崩さず、歩いて行く。


「やつは……どうなるんだ」
 ウォーレン・アルベルタ(うぉーれん・あるべるた)がセテカに問う。
 セテカは厳しい表情のまま、エシムを見送り――重い息を吐き出した。
「前例がない。少なくとも俺が知る限りは。だから俺にも分からない。ただ、推測はできる。それでいいか?」
「ああ」
「投獄されることはない。なにしろアガデがあの状態だからな。アーンセト一族の反発も考慮して、おそらくテセランにある館で無期限監禁か軟禁だ。死ぬまで監視がつく。当然12騎士としての騎士役も剥奪される。それに合わせて領地は大半が没収される。これらは次のアーンセト一族から選出される騎士に譲渡されるだろう」
「そうか」
 少なくとも、死罪を受けることはないのだ。それでよしとするしかない。他国の法制度に口ははさめない。
 ウォーレンは胸の重苦しいつかえを少しでも楽にしようと、大きく息を吸い込んだ。
「バァルが助かったことに、やつは感謝するべきだ。もしバァルが死んでいたらそんなものではすまない。俺がその場にいたら、即座に斬り捨てていただろう」
 それは怒りというよりも、ひややかな殺意だった。
 血の海に横たわるバァル……もしあの光景を彼が目にしていたならば、眉ひとつ動かさずそうしただろう――聞く者全員に、そう確信させるような。
 初めてセテカが垣間見せた冷徹さに、だれもが息を詰める。
 ふと、そこで思い出したように、セテカは彼らに正面を向いた。
 そこにたたずんでいる奪還部隊の面々を1人ひとり順に見て、頭を下げる。
「まだきみたちに礼を言っていなかったな。バァルを助けてくれてありがとう。彼が助かったのはきみたちのおかげだ」
 その声、表情に、ああいつもの彼だと、ほっとする。
「アナトはどうなるの……?」
 聞くのが怖い。そんな思いに揺れたためらいがちな声で、それでも一縷の望みを持ってルカルカ・ルー(るかるか・るー)は訊いた。
「彼女は――……」



「今はみんな、大変なときだから」
 解放され、事態を知って以来血の気を失ったままの面で、アナトはトライブ・ロックスター(とらいぶ・ろっくすたー)に向け、気丈にも笑って見せた。
「もう少し落ち着いたら、また会いましょう」
「会いに行く」
「ええ。楽しみにしてる」
 そう口にしながらも、その日が来ることをアナトは信じられないでいた。きっと、人と会うことは制限される。もう自分は、好きなときに好きな人と会うことも、自由に語らうこともできないのだ。一族の者ですらそうなのに、他国の者である彼らとそれがかなうだろうか?
 アナトの目に、涙がにじんだ。けれど、笑顔は絶やさない。もしかするとこれで最後になるかもしれない別れを、泣いている顔で覚えられたくはないから……。
「会いに行くさ! いつだって会おうと思えば会える! そうだろ?」
「ええ、そうね。……多分」
 アナトはうっとのどを詰まらせ、切れ切れの声でささやいた。
「……会いにきて。いつか。思いがけないときに。あの、初めて会ったときのように、わたしを驚かせて。そうしたら、わたしもまた剣を突きつけてあげる。「未婚女性の部屋に入るなんて、いい度胸ね」って……」



「彼女は、当然ながら婚約を破棄される」
 セテカはきっぱりと言い切った。
 それどころか、領主殺害未遂犯の姉など、だれも結婚しようとは考えないだろう。後見人のナハル・ハダドが動くという線が濃厚だが、バァルと過去対立していたことから共謀を疑われるおそれを考慮して、沈黙する可能性の方が高い。
「館で監禁あるいは軟禁。エシムと同じだ。行動を制限され、死ぬまで監視を解かれることはない」
「そんな! そんなこと、バァルは了承したの!?」
「バァルはまだ意識を回復していない。だが、おそらくそうなる。卓議でそうと決まれば、バァルも尊重せざるを得ない」
 東カナンは領主制。決定権はバァルにあり、あくまで「尊重」ではあるが、12騎士たちが決めたことに異議を唱えるだけのものがあるかどうか……それは、バァルにしか分からない。
「公平性を欠くことは、最も避けるべきことだからな」



 トライブと別れ、歩いて行くアナトの背中がやがて監視が立つエシムの天幕へと消える。
「ばかなやつだ」
 ぽつっとセテカがつぶやいた。




『ロンウェルの嵐 了』

担当マスターより

▼担当マスター

寺岡 志乃

▼マスターコメント

 こんにちは、またははじめまして、寺岡です。
 大変お待たせすることになってしまい、申し訳ありませんでした。
 今回、初めてのスペシャルシナリオということでガイドを出させていただいたときから大変緊張していたのですが……案の定、今までの最長ページ数を大幅更新しました。書いても書いても終わらない、という恐ろしい体験でした。
 なのになぜか、終わってみたら頭の中が真っ白で、結構楽しかったとか思えていたりします。不思議。


 さて。
 今回、皆さんのアクションによってロノウェが中立となりました。そのため、ロノウェに魂を取られた方は魂を返還されています。
 次回アクションをかけられるときは、その上でアクションがけをよろしくお願いします。



 いよいよ次回で【ザナドゥ魔戦記】もグランドフィナーレを迎えます。
 思えば【カナン再生記】が始まったのもちょうど1年前でした。あれから1年、早いものです。
 あと1回。カナンとザナドゥによろしくお付き合いください。


 ※11/22 文言を一部訂正させていただきました。