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9)東 朱鷺(あずま・とき)

東 朱鷺(あずま・とき)は、
いつも通りに、冷静な態度で、トッドさんと相対した。

「ようこそいらっしゃいました」
「よろしくお願いします」
朱鷺がトッドさんに抱いたのは、
いつもながらの知的好奇心であった。
この人は、はたして自分にはどのような問いを発するのであろうか。
「朱鷺さんは、パラミタに来てまもないのに、
並のイコンなら互角以上で戦えるほどお強いんですよね。
そのことについてぜひ詳しくお聞かせ願えないかしら?」
少し目を見開き、朱鷺は答える。
左目に六芒星があることが、はっきりと画面に映し出された。
「イコンと互角以上と言われても、そんな事実はありませんので。
短期間で強くなった理由ということで、回答します」

面白みの無い回答だと思いますが、
やっぱり一番大事なのは、
日々の実験……じゃなくて訓練を続ける事が大事だと思います。
で、問題はモチベーションをどれだけ維持できるかです。
人間……、だけじゃなく知能を有する者、
魔鎧、吸血鬼、妖精等はすぐモチベーションが下がるんです。
その原因は飽きだったり、達成感だったり、人それぞれだと思いますけど」
「なるほど。朱鷺さんの場合は?」
「朱鷺の場合は、そのモチベーションが下がらなかった。
結果、日々の訓練を継続できた。
イコール、今の強さ……強いかどうか分かりませんが……に繋がってるんだと思います。
朱鷺でも、イコンと互角?ぐらいには成れるんで、
日々の訓練しだいでトッドさんも強くなれると思います」
「まあ、ではわたくしもイコンを倒せるかしら」
「はい、努力次第では可能ではないでしょうか」
トッドさんのボケにも淡々と回答する朱鷺であった。

「では、いろいろな方からの質問にも答えていただきますね。
まず、キュべリエ・ハイドンさんから。

もし地球とパラミタどちらかが滅んでどちらかを救えるのだとすれば
あなたが救うのは地球?それともパラミタ?
両方救うという回答ではなく二者択一でお願いします」

「救える方を救うです。
朱鷺がその時どちらを大事にしてるか分かりませんが、
救える可能性が高いほうを救います。
その可能性を高めている原因が、
その時の強さだったり、居場所だったり、仲間の数、敵の数だったりすると思いますが、
それらを含めて検討して可能性が高いほうを救うと思います」
「なるほど、論理的なお答えでしたね。

次の質問です。
国頭 武尊さんから。

契約者になる前は、地球で普通に学生やっていて
争い事なんかにゃ無縁だった人も居るだろうから敢えて聞くけどよ。
やっぱ、契約者になってその活動期間が長くなると
人を傷つけたり、時には殺めたりする事に、
抵抗感や不快感を持たなくなるのかね。
すっげぇ答え難い質問だと思うから、無視してもらっても構わないぜ」

「人は慣れる生き物です。
良い意味でも悪い意味でも。
私も慣れました」
朱鷺は感情を表さず、淡々と答えた。
「では、少し違った方向の質問です。

渋井 誠治さんから。

好きな食べ物は何ですか?
割とありがちな質問だけど、番組の中で時間があれば答えてくれると嬉しいな。
出身地が違うと食文化も違うだろうし、皆がどんなものが好きなのかちょっと気になったんだ。
パラミタだと地球の料理はなかなか食べられないかもしれないけど、
ここでアピールしておけば空京で流行っていつでも食べれるようになるかもよ?
なーんてね」

「好きな食べ物は『塩』です。
塩さえかければ、なんでも食べれます」

「なかなかにワイルドですね!

最後に、
青葉 旭さんから。

自身の所属校ってどの程度大事に思っている?
質問がアバウトですが、極端な例を挙げると、
王国が滅んでも学校を守る。
他の学校を全部潰して自分の学校1校だけにしたい。
友達よりは大事だけど、恋人よりは大事でない。
嫌い、早く転校したい。
全く大事でないどころか明日にでも破壊したいくらい嫌い。
といったところかな。

自分の学校のこういう点が改善されたらもっと好きになれるのに、
というのがあったらそれもお願いしたい」

「学校って言っても意味は色々だと思いますが、
朱鷺は、学校に所属又は、関係ある人なら大事です。
全力で防衛します。
学校の校舎とか、備品とか伝統とかはどうでもいいです」
「なるほど、シャンバラ教導団にとって、
朱鷺さんは頼もしい存在ですね!」

こうして、淡々とインタビューは進行した。
朱鷺とトッドさんのテンションの落差が激しかったあまりに、
殺伐とした内容の話であっても、
あるいはユーモラスに見えたかもしれない。

そして、朱鷺は、トッドさんがやはりただ者ではないということを、
実感するのだった。