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第19試合

 
 
『第19試合に移りたいと思います。
 イーブンサイド、天貴 彩羽(あまむち・あやは)パイロットとスベシア・エリシクス(すべしあ・えりしくす)サブパイロットのスクリーチャー・オウル
 オッドサイド、村雲 庚(むらくも・かのえ)パイロットと壬 ハル(みずのえ・はる)パイロットのソルティミラージュです』
 スクリーチャー・オウルは、フィーニクスをベースとしている。漆黒にわずかに赤い色を残した機体は、ベースとなったフィーニクスよりも重装甲となっている。通常の武装の他に、尾翼を模した二本の蛇腹剣によるトリッキーな攻撃を可能としている。
 対するソルティミラージュはクルキアータをベースとしているが、より戦闘的なカスタマイズがされていた。燻し銀の機体は、やや直線的なデザインで威圧感を増している。全身には、エナジーバースト用の真紅のエネルギースリットが走っている。
「海上か。いずれにしろ、空中戦になりそうだな」
「うー、緊張して来たね……。よおっし。えい、頑張れ、あたしたち!!」
 壬ハルが気合いを入れなおした。フィールドは海上ステージのようである。
「なに、大丈夫。いつも通りだ。いくぞ、ハル」
 村雲庚が、軽く見つめ合って壬ハルをうながした。
 発進基地である空母の甲板上を歩行移動させると、射出用カタパルトにソルティミラージュの両足を乗せる。
「ソルティミラージュ、出るぞ!」
 フローターを全開にすると同時に、ソルティミラージュが空母前方に押し出された。海面上に円形の波紋を広げて、ソルティミラージュが一気に上昇する。
 一方、スクリーチャー・オウルの方も同じような空母上で発進準備が整っていた。
「シミュレータとはいえ、久しぶりでござるな」
 機晶制御ユニットに身体のほとんどを埋めながら、スベシア・エリシクスが言った。
「ええ。いい訓練だわ。いいところを見せて、傭兵としてもしっかり売り込むわよ」
 飛行形態のスクリーチャー・オウルの前部パイロットシートに滑り込んで天貴彩羽が答えた。
データ収集開始ね
 そうスベシア・エリシクスに言うと、天貴彩羽がスロットルを押し込んだ。一呼吸後にカタパルトのフックが外れてスクリーチャー・オウルが射出される。
「テイクオフ!」
 海上でゆっくりとロールして進路を変えると、スクリーチャー・オウルが上昇していった。
「空中戦ね……」
 レーダーに移る敵機を見て、天貴彩羽が進路を変更した。
『――敵確認。フィーニクスタイプです』
 ソルティミラージュの方でも、壬ハルがスクリーチャー・オウルの機影を捕捉する。
『――やっかいだな……。短期決戦でいくぞ。エネルギーチャージ。減速する』
 空中の機動はフィーニクスの方が上だ。まともな空中戦では翻弄される。村雲庚はあえて速度を落とした。
「遅いわね。一気に決めるわよ。プログラム起動。アタック!!」
 天貴彩羽が、ツインビームライフルを乱射した。
 ソルティミラージュがバレルロールでそれを避けるが、さすがに全てとはいかずビームアサルトライフルが被弾する。即座に投げ捨てると、あっけなくライフルが誘爆した。
「いける!」
 一気に突進すると、スクリーチャー・オウルがソルティミラージュの背後へと突破して素早く変形を始めた。人形のスクリーチャー・ゲイル形態となって、一気に決めるつもりだ。翼が後退して、必殺のツインレーザーライフルが分離して両手に握られていく。
 だが、その瞬間をソルティミラージュは待ち構えていた。
『――起動!! 仕留めるぞ!』
 低速を生かしてくるりと反転すると、リミッター解除してエナジーバーストを発動させる。機体のスリットからもれるバリア粒子がソルティミラージュの全身を包み込んだ。さながら赤い流星となってブレイドランスを構えたソルティミラージュが変形の終わりきらないスクリーチャー・ゲイルに突っ込んでいく。
こんなはずじゃ……。油断大敵ね。負けたわ……」
 ブレイドランスの直撃を受けたスクリーチャー・ゲイルの腹部が吹き飛ぶ。わずかに遅れて発射されたツインレーザーが海面を薙いで海を沸騰させた。そのまま、スクリーチャー・ゲイルが海中に没していった。
「勝ったからには行ける所まで行く……。あばよ、良い機体だった」
 そうつぶやくと、エナジーバーストの赤い軌跡を残したままソルティミラージュが帰投していった。
 
    ★    ★    ★
 
『勝者、ソルティミラージュです』