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第20試合

 
 
『それでは、第20試合に参りましょう。
 イーブンサイド、フォン・ユンツト著 『無銘祭祀書』(ゆんつとちょ・むめいさいししょ)パイロット、秋月 葵(あきづき・あおい)サブパイロットのNight−gaunts
 オッドサイド、AI制御のスイヴェンです』
 Night−gauntsはセンチネルをベースとした機体だが、見た目はベーシックタイプとまったく同じだ。ただし、中身は別物と言っていいほどに改造されているらしい。槍の代わりに剣を装備し、シールドもビームシールドに換装してある。また、無尽パンチも特徴的であった。コントロールは、モーショントレース方式を採用している。
 対するスイヴェンはイーグリットがベースであるが、深紅の機体はより重厚であった。特徴的なのは背部に装備されたレイウイングで、イコンホースでもある六枚の光の翼は、フローター機能以外に連結してビーム砲、可変してビームソード、自立運動してビームカッターと変幻自在な攻撃を可能としている。大型のシールドも、チョッパーを内蔵しているため侮れない。
「あれはヤバくないか……?」
 以前アウカンヘルと戦ったことのあるフォン・ユンツト著『無銘祭祀書』が、ちょっと顔をひくつかせて言った。
 あのときは、複数のイコンで追い込んだにもかかわらず、オールレンジ攻撃で一気に戦闘不能に追い込まれている。今眼前にいる機体は、そのときの親玉の機体だ。当然、多分、きっと、絶対、もっと強い。
「大丈夫だよ。だって、ただのシミュレーションだもの。本物じゃないよー。全力全開でいこー。今の黒子ちゃんの格好なら絶対大丈夫だよ♪」
「ううっ……」
 なくなくアルディミアク・ミトゥナ(あるでぃみあく・みとぅな)のコスプレをさせられているフォン・ユンツト著『無銘祭祀書』がうなだれた。だって、この格好でないと秋月葵がサブパイロットとして乗ってくれないと言ったからだ。サブパイロットがいなければ、イコンの出力は30%にまで低下する。それでは勝てる戦いも勝てない。フォン・ユンツト著『無銘祭祀書』としては、条件を呑むしかなかった。
 ちなみに、秋月葵はココ・カンパーニュ(ここ・かんぱーにゅ)のコスプレをしているが、相変わらず二人とも胸の部分には特製中華まんをきちきちに詰め込んでいる。
「えーい、こうなったら、もう八つ当たりじゃあ!」
 フォン・ユンツト著『無銘祭祀書』が、思いっきり足を蹴りあげた。そのモーションに連動して、Night−gauntsが格納庫の扉を蹴り飛ばす。
 吹き飛ばされた分厚い鉄板の扉が何かにぶつかった。
 敵イコンだ。
 思いもしない事態に、扉の下敷きになって倒れている。
「あっ、ラッキーかも♪」
 偶然の結果に、秋月葵が喜んだ。どうやら、ここは空京の倉庫街のステージのようだ。
 だが、喜んでばかりもいられまい。倒れたままのスイヴェンから、レイウイングが次々に射出されていった。あんな物に一気にオールレンジ攻撃をくらったら防げるものではない。
「うきゃあ!」
「今だよ黒子ちゃん。必殺、クロスブレイク!」
「クロスブレイクぅ!!」
 コックピットの中で、秋月葵とフォン・ユンツト著『無銘祭祀書』が、繋いだ手を勢いよく前に突き出した。その動きに合わせて、無尽パンチがのびていく。
 げしげしげし!!
 鉄の扉の上から、無限パンチが思いっきり何度もスイヴェンを叩き伏せた。たまらず、スイヴェンが爆散する。
「勝ったのか?」
 ちょっと信じられないという顔でフォン・ユンツト著『無銘祭祀書』が言った。
「パイロットが違うと、同じイコンでも全然別物だよね」
「ははははは、しょせんは雑魚。我がNight−gauntsは無敵じゃあ!」
 調子に乗って、フォン・ユンツト著『無銘祭祀書』が高笑いをあげた。
 
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『勝者、Night−gauntsです!』