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比丘尼ガールと恋するお寺

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比丘尼ガールと恋するお寺

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chapter.11 ヨル 


 境内の騒動が一段落すると、中から何人かの尼僧が出てきた。
 彼女らは、「このお侍の身柄はこちらで預かります」と契約者たちに告げ、騒ぎを収めてくれた礼を述べた。事件が無事解決したと安堵した者たちはひとり、またひとりとCan閣寺から去っていく。
 そんな彼らと入れ違いで、Can閣寺へと入ってきたのは、一日で多くのデートを体験してきた式部だった。彼女はどこか嬉しそうな表情で門をくぐると、苦愛に報告をした。
「あ、あの……い、色々あって、コースにない場所でもたくさん遊んでもらって……楽しかった」
「ふふっ、その格好見れば、すぐ分かったよ? あ、モテ度アップ効果が出て、キュートになったなって」
「そ、その、ありがとう」
 実際渡されたメモにあったデートコースがどれだけ役に立ったのかは分からないが、少なくとも恋を、自分の性格を深く知るきっかけになったのは確かだと思い、式部は頭を下げた。
「でもね」
 と、苦愛が式部に告げる。
「キレイって、目指してなるのは実はそこまで難しくないの。難しいのは、キレイをキープすることなんだ」
 それがモテへのステップアップであるという。
「今日もし、たくさん楽しい経験が出来たなら……もっといっぱい、そういうの味わっていきたいよね?」
 モテへの焦りは禁物と教わった式部。彼女は考える。確かに、モテたいモテたいと欲ばり過ぎるのは良くないのかも。でも、だからといって、自分を磨かなくていいわけではないのかなと。いつかちゃんとした恋が出来た時のために。
「……うん」
 式部は、苦愛の問いに静かに頷いた。それを見た苦愛はにっこりと笑って、式部に手招きする。
「じゃあ、これからもっと色々教えてあげるね! さあ、おいで!」
 そして式部は、言われるがまま、Can閣寺の中へと吸い込まれていった。



 同じ頃、他とは違う形でCan閣寺と接触していた数名の者たちは、それぞれの立場から興味深い情報を仕入れていた。
「すごーい、ここ、楽しい人がいっぱい!」
 門を出てすぐの階段を下りたところにアキュートがつくった臨時ホストクラブ「DAN閣寺」では。
 興味本位でここを訪れていた尼僧が、すっかり出来上がりつつあった。
「よし、ここでもう一回、皆で自己紹介だ」
 アキュートがそう告げると、ホストとして場をもり立てていた従者たちがそれぞれに名乗りをあげる。その面々は、いずれも個性豊かな者ばかりだった。
 機械仕掛けの人形、オートマタはロボットダンスを取り入れながら自己紹介をし、演奏が得意な五人囃子は小粋な音楽で場を賑わせる。ケンタウロスの酒の飲みっぷりは見ていて気持ちよく、機晶妖精はその可愛さで女性をときめかせる。キノコマンは芸人さながらのギャグで尼僧を笑わせ、種モミマンの決めゼリフ「キミの心配の種も、モミほぐしちゃおうかな」は抜群の気持ち悪さを持っていた。さらに車掌は声真似を利用した車掌ギャグがどこかの芸人の二番煎じだと馬鹿にされ、埼玉県民は一見その洗練されていないノリが、逆に親近感を抱かせていた。
 まさに、完璧な布陣である。
 とどめに、パートナーのウーマはびしっとスーツを着こなし、「ゆっくりしていかれるがよいぞ」とダンディーボイスで決めている。
 お酒も入り、尼僧は楽しくそれらのホストたちと会話をしている。そこに、アキュートが新しいグラスを差し出して声をかけた。
「これは俺からだ。もっと楽しんでいってくれ」
「わあ、ありがとー」
 それを受け取ろうとした尼僧だが、ひょいとアキュートがかわす。
「?」
「ただし、お代はもちろんもらうけどな」
「えー、いくら? そんなに今持ち合わせないよ?」
「そうだな……お代は、アンタの秘密をひとつでどうだい?」
 アキュートに言われ、尼僧は「秘密秘密……」と繰り返しながら何かないか考える。そして彼女の口から、素面では聞けないようなことが語られた。
「あー、これあたしじゃなくてお寺のだけどそれでもいい?」
「構わないさ。どんな話だい?」
 アキュートが続きを促す。むしろ、願ってもないことだった。彼の目的は、本来それだったのだから。
「これ、あたしが直接聞いたわけじゃないんだけどー。なんかちょっと前に一回、副住職と住職が揉めたらしいよ。なんだっけ? ホーコーセーの違い? とかそんなので」
「……へえ。それは面白い話だな」
 アキュートがさらに続きを聞こうとするが、この後すぐ尼僧は酔いつぶれてしまい、話をさせるどころではなくなってしまった。

 また、光学迷彩により姿を消し、寺の中へ忍びこんでいた鮪も、不思議な発見をしていた。
「ヒャッハァ〜、尼僧のパンツはどこだ? ここか!?」
 忍び込んだ鮪は、あろうことか、ここに住む女性たちの下着を探していた。それも、ただ探していただけではない。見つけた場合、それらをすべて新品の高級パンツに入れ替えようとしていた。その際押収した使い古しの下着をどうするつもりなのかは、もちろん本人にしか分からない。
 そして鮪は、ようやく、目当てのものがあるであろう棚を探し当てていた。音を立てないよう、静かにその引き出しを開ける鮪。
「……?」
 が、そこにあったものは、鮪の予想を裏切るものだった。あったのは下着に違いないのだが、どういうわけか、それは男性ものの下着だったのだ。
「おいおい、ここは男子禁制じゃねーのかァ!?」
 ここにこれがある理由を知ろうと、鮪がサイコメトリを使おうとした時だった。
「し、下着が宙に!? 棚も、開けられてる!?」
 夜の見回りに来た尼僧が、現場に遭遇してしまった。鮪の姿自体は見えないが、彼が起こした行動は、ばっちり目撃されてしまっていた。このままではまずい。鮪は持っていた下着を放り投げ、素早くその場から逃げ去った。
 彼の手には、触り慣れた下着の感触と、奇妙な違和感だけが残っていた。


担当マスターより

▼担当マスター

萩栄一

▼マスターコメント

萩栄一です。初めましての方もリピーターの方も、今回のシナリオに参加して頂きありがとうございました。
リアクションの公開が、予定日より大幅に遅れてしまい申し訳ありませんでした。
私の体調・スケジュール管理不足によりご迷惑をおかけしたことをお詫びいたします。

今回の称号は、MCLC合わせて2名のキャラに送らせて頂きました。
ちなみに称号の付与がなくても、アクションに対する意見などを個別コメントでお送りしているパターンもございます。

次回のシナリオガイド公開日はまだ未定です。
詳しく決まりましたらマスターページでお知らせします。
また、今後のリアクションに関してや執筆に関しても、
後ほどマスターページの方で色々とお話をさせていただきたいと思います。
長文に付き合って頂きありがとうございました。また次回のシナリオでお会いできることを楽しみにしております。