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激闘!?『変態コレクション(変コレ)』!

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激闘!?『変態コレクション(変コレ)』!

リアクション


【15】


 果たして自分達に変態要素があるだろうか、と影月 銀(かげつき・しろがね)ミシェル・ジェレシード(みしぇる・じぇれしーど)は頭を悩ませていた。
 変コレの被害者を助けようと、この世界に来た2人だが、聞けばここはレアリティがモノをいう世界だと言う。
 現実世界では歴戦の勇士であっても変態レアリティがコモンなら、セーラー服を着たおじさんに小指一本でコテンパンにされるような、理不尽な世界なのだ。
 とは言え、2人は普通。過酷なこの地で生き残るには不安がある。
「変態度か、よく分からんな……」
「うん、普通だもんね、私たち」
「普段の生活も慎ましいものだからな……」
 困った2人だが、よくレアリティを確認して見よう。2人とも最初っから【アンコモン】である。
「……何故だ?」
 変態属性には「ストーカー」と「被ストーカー」とある。
「ストーカー? 心当たりがないな。こうして毎回ミシェルの行くところ……便所の戸の前まで付いて行くし、同居していることも相まって今まで半日以上離れていたことはないが、それでもいないときは気が狂う程の不安に駆られるし、正直に言えば1秒たりとも1メートル以上離れていたくない……が、まあ、このくらい普通だろうしな」
「私が一人で出かけてもいつの間にかついて来てたり、戦闘中に私が攻撃されると急にブチギレたり、半日以上離れてた記憶がなかったりするけど、普通だよね」
「だな。心当たりがなさすぎて不気味だ」
 自分のことほど人はよく知らないものである。
 しかしこれなら変ムスに襲われても遅れをとることはなさそうだ。
 そうこうしていると早速敵がーー殺人鬼の変ムスが5体現れた。
「出てきたよ、銀!」
 まずミシェルが銀にパワーブレスをかける。
「……ミシェル、俺の補助をしてくれるのはありがたいが、あまり前に出てくるなよ。ヴァーチャル世界とは言え、お前が怪我でもしたらと思うと気が気じゃない」
「うん、わかった。ありがとう」
「まあ、ミシェルを傷つける輩は即刻俺が殺……やっつけてやるから安心しろ」
 銀は封印解凍で攻撃力を高め、呪鍛サバイバルナイフで攻撃。ミシェルのバニッシュによる目潰しの隙に、急所をひと突きにする。
 ヴァーチャル世界なので怪我をすることはないが、戦闘不能になった変ムスは灰色になって身動きがとれなくなるようだ。
「このまま全員片付ける……!」
 とその時だ。大声で「危なーい!」と叫びながら、ミルディア・ディスティン(みるでぃあ・でぃすてぃん)飛び出してきた。
 彼女は誰もいない空間をズサササーとヘッドスライディングして、壁に激突。ダメージを負った。
 突然の乱入者に銀たちも変ムスも固まった。
 ちなみに、今のタイミング。全然危なくなかった。全然危なくないところで飛び出した上に、ダメージを負ったミルディアは何故か得意気だった。
「ふふ……危ないところだったわね」
「危ないのはお前だ」
 一連の意味不な行為に、ピロリロリン♪ と変態値蓄積の音が鳴った。
「ちょっと待ってよ! 今のはピンチに身を挺して庇いにいっただけじゃないの!」
「自分から壁にぶつかりに行ったように見えたけど……」
 ミシェルの鋭い指摘に、ミルディアはギクリ。
「そ、そんなわけないでしょ。それじゃ“ドM”になっちゃうわ。あたしはフツーだし、ただ単純に痛いのが好きな普通の女の子だもん」
 ドMだ。
 うん、ドMだね。
 完全にドMだな。
 銀とミシェルと殺人鬼は確信を得た。
「大体、機械に何がわかるっていうのよ。よく見てみなさいよ、あたしの華麗なプロフィールを」
 そう言うので、じゃあ見てみよう。
 恋人=いない。
 彼氏=いない歴=年齢。
 好きなタイプ=いぢめてくれる人♪
「あれ? そっち方面でフツーなところってない……? いやいやいやいや、どっかに真っ当なところがあるはず! そうだ! スポーツ! スポーツ大好きな人が変態なハズが無い!」
「スポーツが好きなのか?」
「うん、練習でしごかれるのが好きなんだよね♪」
「楽しさじゃなくて、辛さを求めてるような……」
「え! そ、そんなハズないでしょ!」
 それから彼女はキッと殺人鬼を睨んだ。
「何してるのよ!」
「え?」
さっきからこんなに隙だらけなのにどうして攻撃してこないのよ! おかしいでしょ!
「は、はぁ……」
 殺人鬼は困惑した様子で、ミルディアを攻撃した。
「そう、それでいいのよ」
 と満足そうな彼女だったが、思わぬことが起こった。攻撃が全然痛くないのだ。
「な、なんで……!?」
 それもそのはず、彼女のレアリティは【レア】の域に達していた。
 これではアンコモンの攻撃など通るはずがない。
「な、なによ、このくそシステム! 全然面白くないわ!」
 また、ピロリロリン♪ と変態値が加算されるのだった。