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激闘!?『変態コレクション(変コレ)』!

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激闘!?『変態コレクション(変コレ)』!

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【16】


 斎賀 昌毅(さいが・まさき)は不機嫌だった。
 空京を模した町も、囚われた人々も、変態たちも、全部思っていたのと違う。
 昌毅が変コレ世界に取り込まれた時、イコンシミュレーターで遊んでいた。その時、突然画面が光を放ち、意識が引っぱられたのだ。
 こういうシチュエーションには心当たりがあった。漫画やアニメで見たことがある。
 主人公がある日突然ゲームの世界に入り込んでしまうというものだ。
 それを踏まえると、当然イコンシミュレーターの中に入りむものだとばっかり思ってたのに。光の先は変態の世界だった。
 ーーなんで変態呼ばわりされる羽目に……。
「過去にイコンナンパした事か、海京の海に向かって『イコンの好きなとこ百連発』叫んだ事か、契約者になった理由がイコンに乗りたかったからか、しょっちゅうイコンっぽい魔鎧着てるからか、イコンカタログに俺の下の毛が挟まっていたからか、まさかイコンパイロットだからってレベルじゃないよな?」
 そのレベルで変態認定されたとなるとガッカリだ。昌毅のイコンへの愛はこんな程度ではないのだ。
「そんじょそこらのイコン好きとは違う。俺の最終目標は、ただイコンを愛でるだけじゃなくて、俺自身がイコンになることだ!」
「俺自身がイコンになることだ……じゃないわ!! 明らかにそれが原因じゃろがぁ!!」
 一緒にこの世界に連れて来られたカスケード・チェルノボグ(かすけーど・ちぇるのぼぐ)が叫んだ。
「それに巻き込まれるワシの身になれってもんじゃ! ワシは別に変態でもないし巻き込まれる言われなどないわい! ちょっと鋼の肉体を持つナイスなお兄さんじゃ!!」
「……お前はお前で何か変態っぽいけどな」
 昌毅はううむと唸った。
「まぁ俺のイコンへの愛がどういう形であれ認められるのは嬉しいけど、この程度で変態ってなぁ……イコン好きならこれくらい当然だろ?」
 それとも皆実は大したことないのだろうか?
「いや、そんな事はねぇだろ。別にイコン愛じゃなくてもいい。俺より愛に溢れた奴は……俺よりも変態な奴はもっといるはずだ。全力で行くから誰か俺に敗北を教えてくれ」
 昌毅は魔鎧カスケードを装着する。
 ガンメタリックなイコンに似た全身鎧に包まれ、その姿は小さなイコンとなった。
 イコン愛に溢れた彼らは、2人合わせてレアリティ【レア】だ。
「な、なんじゃこれは!?」
 素っ頓狂な声に振り向くと、三船 甲斐(みふね・かい)がこっちを見ていた。
 彼女は口をあんぐり開けて酷く驚いた様子だった。
「い、イコンじゃ! SSサイズのイコンじゃ!」
「あん?」
 甲斐は錬金術や秘術にも傾倒している異端の科学者。
 将来的にSSサイズの装着型イコンを作りたい……と考えていたのだが、まさに思い描いたそれが目の前にあるではないか。
 胸に去来するのは先を越された悔しさ、しかしそこは科学者、すぐに好奇心のほうが勝った。
「なぁに、ゆうても所詮、ゲームの世界の出来事じゃ。現実世界での一番乗りは俺様じゃろうて」
「おい、勝手にぺたぺた触んなよなっ」
「そう固いこと言うな。どういう仕組みになっとるのかちぃと見せてくれ」
「はぁ? なんなんだよ、お前は?」
「俺様か?」
 ニヤリと笑った。
「にっしっし、俺様が一番技術の変態じゃよ! 革新的な技術っちゅーもんはどこまで変態的にのめりこめるかってーので生まれるもんなんじゃ! 」
 白衣の裏から無数の工具を取り出す。
「ちゅーわけで分解させろ! なあ! モルモットだ! モルモットだろう!! なぁモルモットだろうおまえさん!!」
「なんだこいつ!」
「なぁに、神風シンクタンクたる俺様に任せておけばなにも問題はないのじゃよ!」
「寄るな! 来るな! 近寄るな!」

 空京を模した町の通りで、高らかに笑う白衣の男があった。
 彼の名は……。
「フハハハ! 我が名は世界征服を企む悪の秘密結社オリュンポスの大幹部、天才科学者ドクター・ハデス(どくたー・はです)!」
 怪しく光るその眼鏡は企みに満ちていた。
「ククク、ここがゲーム『変コレ』の中か。これより、我らオリュンポスはこのゲーム世界の征服に乗り出す! この変コレのヴァーチャル世界は、既に多くのユーザーを取り込み、現実世界に強い影響力を持っている。よって、この世界を制圧することは現実世界を制圧することに等しいのだ!」
 数多くのユーザーが捕えられているゲーム世界を支配することで、現実世界の征服の材料としようという魂胆のようだ。
「さて、というわけで、早速ゲームの攻略に入るとしよう! 行くぞ、我が部下たちよ! この世界を征服するために、他の変ムスたちと『変ムス対決』をおこない、勝ち抜いていくのだ! すべての変ムスをコンプリートした暁には、この世界の支配権は我らのものとなるであろう!」
「わかりました、ハデス先生っ! 変態さんたちと勝負して、勝利してみせますっ!」
 素直に返事をするペルセポネ・エレウシス(ぺるせぽね・えれうしす)
 しかし、もう一人の高天原 咲耶(たかまがはら・さくや)はと言うと。
「ちょ、ちょっと、兄さん! 人のことを変ムスとか呼ばないでくださいっ!」
「むぅ?」
「変態ということなら兄さんじゃないですか。どうして兄さんじゃなく、私達が戦闘をするんですか……」
 それは、その方が読者サービス……げふげふ、ハデスは司令官の立場だからである。
 そこにちょうどよく、昌毅と甲斐が言い合いをしながらこっちに来るのが見えた。
「おおっ! 第一変態発見だ! 行け、オリュンポスに勝利をもたらすのだ!」
「……仕方ありません、変態さんたちにお仕置きして、この世界を元に戻してあげます!」
 2人に変ムス対決を挑む。
 スリッパ片手に突っ込んでくる咲耶に目をぱちくりさせた昌毅だったが、すぐに織天使化でエナジーウィングのように翼を出し、機晶スナイパーライフルで迎撃を始めた。
「スリッパ愛好家かなんだか知らねぇが……いいぜ、見せてみな。お前の愛って奴を!」
『……揉め事は避けたいところじゃが、誰が危険な変ムスかわからんし、しょうがあるまい』
「いくぞカスケード。俺が……俺達がイコンだ!!」
魔鎧でしょ!
 すぱぁん! と咲耶のスリッパ突っ込みが昌毅の脳天に炸裂。
「ま、魔鎧とか言うなし! 水差すんじゃねぇよ! 俺達は今イコンに……」
ただのコスプレでしょ!
 すぱぁん! ともう一発。
「うおおおおっ! 人が言われたくないことをズケズケと!」
 レアリティ【コモン】の彼女の攻撃では物理的ダメージは皆無だが、精神的ダメージは計り知れなかった。ツッコミ特化の変ムスなのだ。
 そしてペルセポネも……。
「機晶変身っ!」
 ハデスの命令に従い、変身ブレスレットからパワードスーツに変身する。変態ムスメならぬ変身ムスメだ。
「行きます、変態さん!」
 しかし、これは変ムス対決。普通の戦法が通用すると思ったら大間違いだ。
 レアリティ【アンコモン】の甲斐にレアリティ【コモン】のペルセポネの攻撃は通らない。
「えええっ!?」
「……なんじゃハデスんとこの連中か。奴とは同志じゃが挑んでくるなら容赦はせんぞ。どれそのスーツ、俺様がオモシロおかしく改造してやる!」
「や、やめてくださいっ!」
ハデスは戦況を見つめ、ふむ……と唸った。
「咲耶のツッコミ能力ならば、歴戦の変ムスにも通用するであろうが……、ペルセポネだと変ムス対決には、ちと不安か。ここは変ムス強化システムの出番だな! この『変ムス:露出魔』の変ムス属性をペルセポネに付与。さあ、純情な露出魔というレアキャラに生まれ変わるがいい!」
 ぽちっとな。
「きゃ、きゃあっ、装甲が勝手にっ!」
 ハデスの指示を受け取ったパワードスーツのAIは、装甲をパージし、露出度の高い高機動モードになった。
 これによりペルセポネのレアリティが上が……らなかった!
「ん?」
 ハデスの耳に、ピロリロリン♪ とあのSE。ハデスのレアリティが【コモン→アンコモン】になった。
 AIはハデスのほうを変態と捉えたようだ。ペルセポネ、無駄脱ぎである。
「そ、そんなぁ! ハデス先生ぇ!」
「こういうこともある」

「ここは……どこだ?」
 七刀 切(しちとう・きり)が目覚めたのは見知らぬ場所だった。
 どこか建物の屋上、見える景色は空京のようにも見えたが、何かが違うように思えた。
 どこなのかわからないし、ここに来るまでの経緯もまるで思い出せなかった。
 だが、ただ一つだけ。一つだけ分かっている事がある。
「そう、それは……ワイが三種の神器の『玉』を司る変態だという事だ!」
 股間に備わる二つの宝玉が朝の光のようにまばゆい光を放つ。
「ワイの股間が爛々と、否、絢爛に輝いている! これが三種の神器の一つ『ゴールドボール』! 例え服を着ていても褪せる事のないワイの変態としての誇りと矜持が形となった黄金の輝き!」
 金玉の光が一条の光となって空を指した。
「これは……更なる変態へと昇華するための道標! この光の指し示す先に三種の神器が……ワイの同志が待っている! 同志たちと出会った時にワイはもう一つ先の変態になれるはずだ! さぁ、今いくぞ同志……クド! 鬼羅!」