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パラくる!!

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パラくる!! パラくる!! パラくる!! パラくる!!

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アウトローと、科学の力

タシガン空峡のとある空域にて。

リネン・ロスヴァイセ(りねん・ろすヴぁいせ)は、
恋人にして相棒のフリューネ・ロスヴァイセ(ふりゅーね・ろすう゛ぁいせ)とともに、
思い出の場所を訪れていた。
「うん、ここで間違いないわ。
目印なんてなくても絶対忘れない。
フリューネと初めて一緒に戦った戦場」
風を読み、リネンはこの場所に再びたどり着いた。
「今では、だいぶ平和になっているけど、
当時は大勢の空賊が人を襲っていたわ」
フリューネが周囲を見渡し、言った。

「誰と戦ったのですか?」
ジークリンデの問いに、リネンが答える。
「相手は『バッドマックス空賊団』って凶暴な連中でね。
今の私たちのいる空域に来たところを逆に襲って……あら?」

そこに、騎竜とともに、ヘリワード・ザ・ウェイク(へりわーど・ざうぇいく)が乱入してくる。
「作戦は奇を以ってよしとすべし、よ。覚えてる?」
まるで、当時、リネンたちが、バッドマックス空賊団と戦ったときのような状況を作る演出であった。

「当時は本当に入れ食いだったわね」
義賊として、空賊を狩っていた、ヘリワードたちは、
戦う相手には事欠かなかった。
「確かにね。
おおかたの空賊は契約者の皆と退治してしまったから。
それでも、罪のない人を襲う馬鹿者はいなくなったりはしないんだけど」
フリューネがうなずく。
「まあね。
でも、今はごらんのとおり、
あたし一人でも十分、ってわけ」
ヘリワードは、リネンとフリューネの結婚後は、単独で行動することが多くなっている。

「じゃあ、気をつけるのよ。
もっとも、この面子じゃ心配無用とは思うけどね」

ヘリワードの去っていく様子を見て、リネンはつぶやく。
「空ではいつも気を抜くなってことね。
平和な世界になっても、
まだ空賊をするものはいるもの」
「ええ。これからも力を合わせて戦いましょう」
リネンとフリューネは、今後も続く戦いへの決意を新たにしたのだった。



一行は、タシガン空狭の沿岸、港町カシウナから
小型飛空艇で半日ほどの場所にある、島へと訪れる。

ここは、空賊の間では有名な、蜜楽酒家という酒場である。
酒場は中立地帯で、たとえ敵対関係にあっても、
この酒場での争いは避けるのが、空賊たちの掟である。

「ここも平和になったわよね……女将さんには、悪いことしちゃったかもだけど」
リネンが感慨深げにつぶやく。
「そうかしら?
平和な空の仕事が増えれば、そのほうがいいはずよ。
商船の護衛任務とか、
モンスターからも、飛空艇を守らないといけないもの」
フリューネが言う。
「だといいんだけど。
女将さんは、フリューネのこともすごく気にかけてくれていて、
いつも、ここで引き合わせてくれていたものね」
リネンは、今日も店を守る、女将【マダム・バタフライ】に会釈する。

「ご主人様、お帰りなさいませぇ。お席の用意はこちらですよぉ」
リネンのパートナーのミュート・エルゥ(みゅーと・えるぅ)が、
食事の用意された席へと、リネンたちを案内する。

「あ、そうそう【空賊の大号令】知ってますかぁ?
あの鐘、この酒場にあるんですよ」
「その鐘を鳴らすと、
空賊が全員で協力して、一致団結して敵と戦うという、鐘のことですね」
ジークリンデがうなずいた。
「まぁ、もう2度は鳴らないと思いますけど……ね?」
ミュートが言う。
そのような、大きな危機は、きっともう、起こらないだろう、と。

「それなら、さっきも言った通り、
よけいに私たちがちゃんとしないとね」
「ええ、フリューネ。
私たちの空を守るために、これからも戦いましょう」
フリューネとリネンが口々に言うと。

酒場で食事をしている、変熊 仮面(へんくま・かめん)と目が合った。
「……なにしてるの?」
リネンが突っ込む。
「もごもごもごもご!」
「……食べてからでいいから」

さっき、シャンバラ刑務所につかまっていたはずの変熊だが。
「あなた、いつのまに脱獄したの?」
「ここは中立地帯なんだろう? だったらいいではないか!」
理子に指摘され、変熊が言い返す。

「まあ、今日はそうしておきましょうか」
「そうね。リネン」
リネンとフリューネは笑みを交わす。



酒場を出ると、2人は、空を見上げた。

空は、まだ、ずっと遠く、
行ったことのない場所まで、広がっている。