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薄闇の温泉合宿(第1回/全3回)

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薄闇の温泉合宿(第1回/全3回)

リアクション

「ロイガーって、地球人ばかり目立ってるわよね。地球人ばかりが大きな顔をしているのは、面白くないのよね」
 ブリジット・パウエル(ぶりじっと・ぱうえる)はぶつぶつ文句を言いながら、森の中を歩いていた。
「ロイヤルガード……クイーン・ヴァンガードではないのですね。世の中も随分変ったようですが、騎士の務めは時代がいかように変ろうとも不変です」
 ブリジットを押しのけて前を歩きながら、カルラ・パウエル(かるら・ぱうえる)がそう言う。
「でもね……よく考えたら、代王二人とも地球人なのよねぇ。それにヴァイシャリーにいる方。セレスティーナだっけ? なんだか馬鹿っぽいし」
 ブリジットは、あまり興味が無かったので代王の名前も正確に覚えてはいなかった。
 ロイヤルガードを目指そうかと、合宿、及び盗賊退治に志願してみたものの、よく考えてみれば体制に疑問が沢山ある。
 いっそのこと、ラズィーヤが戴冠すればいいんじゃないかとブリジットは思い、ため息をつく。
「どちらにしても、無法者を放置しておくのも問題あるしね。さっさと片付けるわよ」
「ええ、私が必ず。女王陛下の御世を乱す賊を討つのは、騎士の務めですもの。それにこれは好機です」
「というか、アンタ邪魔よ」
 ブリジットが前をうろちょろしているカルラを退けて前へ出ようとするが、カルラは退きはしない。
「勲功を立て、ロイヤルガードになって、本物のパウエルの家を復興させるのです!」
 そしてランスを掲げる。
「この剣に賭けて!」
「……だからそれ、槍だって」
 ブリジットがつっこみを入れる。
「仲間同士で言い争っている場合じゃないぞ」
 金 仙姫(きむ・そに)の言葉に、ブリジットとカルラは互いに、相手にしていないと反論する。
「ほれ、賊の拠点がしそうじゃぞ」
 彼女達のずっと前を、賊達が駆けている。
 河原へと這い上がった賊を、恐れの歌で動揺させ、わざと逃がしたのだ。
 普通に追っては気付かれるため、上空から探っているメンバーと連携して賊を追っていた。
 彼らが向かった先は、川が2つに分かれた先の、滝だった。

 アジトの位置の情報をパートナーから得た篠宮 真奈(しのみや・まな)は、小型飛空艇で双眼鏡を手に、高い位置から拠点を調べていた。
 滝はいくつか存在するが、泳がしている賊を追っていくことで、場所を特定することができた。
「サージュ、情報の伝達お願いね」
 すぐに、真奈はパートナーのサージュ・ソルセルリー(さーじゅ・そるせるりー)に、連絡をして自分はそのまま上空から状況を見守ることにした。
「皆、無茶しないといいけど……」
 暴れてスカットしたいと思っていた真奈だけれど、まだ戦い慣れしていないこともあり、ロイヤルガードの面々から偵察の方を依頼されたのだった。
『真奈姉様、あたし達大丈夫ですよぉ。ちゃんと悪いおじちゃん達の事調べてくるんですぅ。もし見つかりそうでも、盗品に紛れ込んで鎧の姿に化けて、只の鎧ごっこすればいいんですぅ』
 携帯電話からは、サージュの無邪気な声が流れてくる。
『只の鎧ごっこをしていれば、悪いおじちゃん達のひそひそ話も聞けて、後で姉様達に教えられるですぅ』
「でも……」
『あたしも、姉様達の役に立ちたいんですぅ!』
「わかった。気をつけてね」
 パートナー達には斥候をしてくれと言っておいたけれど、無茶なことをするのではないかとういう、不安もあった……。

 仲間達に情報を伝えた後、真奈のパートナーのモリガン・バイヴ・カハ(もりがん・まいぶかは)サージュ・ソルセルリー(さーじゅ・そるせるりー)著者不明 エリン来寇の書(ちょしゃふめい・えりんらいこうのしょ)の3人は、一足先に賊のアジトへと向かった。
「この岩の上を渡って、滝の裏側に入るのね。そこが入り口ってわけね」
 エリンは、周辺をデジカメで撮影していく。
「泳いでいくことも出来るようだ。僕が見ていた限りでは、6人の男が滝の裏側に向かったよ」
 そっと接近し、そう話しかけてきたのはこの周辺を探っていたクライス・クリンプト(くらいす・くりんぷと)だ。
「手負いのようですから、6人だけであれば自分達だけでも大丈夫かと思いますが」
 パートナーのローレンス・ハワード(ろーれんす・はわーど)も共に行動している。
「慎重に行きましょう。中に留まっている者もいるでしょうから」
 モリガンがまず、足を踏み出して滝の裏側へと進む。
 途端。
 滝の中から銃弾飛んで来た。
 すぐに全員、岩陰へ隠れる。
「お嬢さん達、下がってな!」
 同じくアジトを探していた西シャンバラ側のカオルが、空飛ぶ箒に乗って現れる。碧血のカーマインを撃ちながら、正面から滝の中に突っ込んでいく。
 ……滝の中は空洞になっているが、何もなかった。
 逃げてきた賊の1人が銃を撃ち、残りの5人が剣を手に、カオルに斬りかかってくる。
「一人じゃキツイか……!?」
 そう思うも、カオルは妖刀村雨丸を抜いて、斬り込んでいく。
「一人じゃないさ! 行くよ!」
 クライスがレッサーワイバーンに乗り、飛び込んでくる。
 ワイバーンの背から飛び降りると、ヴァーチャースピアでライトニングランス。賊2人の脇腹を打つ。
「うわああっ」
「落ちろー!」
 銃を、剣を賊はクライスに繰り出していくが、クライスはオートガード、オートバリアで護りながら、ラスターエスクードでその全てを受ける。
「ここは私が防ぎます」
 更にその前に、ローレンスが飛び出して、女王のカイトシールドを構え防御体制をとる。
「よし、頼んだ!」
 カオルは銃で盗賊の手足を狙っていく。
「加勢します」
 モリガン、サージュ、エリンも滝の裏側へと飛び込んでくる。
「ここなら火事の心配なさそうよね!」
 エリンが火術を発動。
「えぇいっ」
 サージュはランスを繰り出して、身体を焼かれた賊の足を突いた。
「通していただきます」
 モリガンもチェインスマイトで、連続して賊の身体を貫く。
 しかし、狭い空間であるため、盾をすり抜けた敵の攻撃が、契約者達の身体を傷つけていく。
「私の後ろに下がって下さい。足元には十分注意を!」
 ローレンスは注意を呼びかけ、リカバリで皆を癒す。
 ローレンス、クライスの盾の後ろから、弾丸や槍が次々に繰り出され、賊は打ち倒されていく。
「通してもらうよ!」
 クライスの鋭い一撃が、賊の持つ剣を遠くへと飛ばした。
 即座に槍を横に振るい、賊の脇腹を打って倒す。
「お前で最後だ!」
 刀を一閃し、カオルが最後の1人を斬った。
「縛りあげよう!」
 クライスはすぐに、ロープを手に重傷を負い倒れた賊達を縛っていく。
 そして皆で協力して手早く拘束し、隅へと移動させる。
「この岩、動くんだろうけれど……流石に潜入は無理そうかな」
 入り口を塞いでいると思われる岩を見ながら、カオルが言う。
「どかしている最中、もしくはどかした途端に銃弾が雨のように浴びせられる可能性もあるしね……」
 クライスも岩を眺めながら考え込む。
「……連絡を入れますね」
 モリガンは携帯電話を取り出して、真奈を通じて討伐隊に連絡を入れることにした。