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リアクション
★ ★ ★
「作戦の第二段階は終了した。各機を集合させろ」
遺跡の前に立って、隊長が部下のメイドに命じた。その背後で、森は燃えていた。
★ ★ ★
「なんの音ですう?」
大気を震わせる音を聞いて、メイベル・ポーター(めいべる・ぽーたー)が空を見あげた。その上を、一機のS−01が通りすぎていく。かなり遠くに行ってから、地上形態に変形して森の中に着地したようだ。
「なぜイコンが……」
「この火事と関係あるのかなあ。それとも消火隊?」
フィリッパ・アヴェーヌ(ふぃりっぱ・あべーぬ)とセシリア・ライト(せしりあ・らいと)も、ちょっと腑に落ちないという顔を見合わせる。
メイベル・ポーターたちはメイちゃんたちと撲殺談議をしようとオベリスクを目指していたのだが、突然の山火事に遭遇してしまってそれどころではなくなったという状態だ。
「とにかく、今は、避難路を作って火にまかれないようにするですぅ。叩いて叩いて叩きまくるですぅ」
「分かったよ」
「急ぎましょう」
メイベル・ポーターたちは、愛用のバットで行く手の大木を木っ端微塵に打ち砕きながら、世界樹の方向へと進んで行った。
★ ★ ★
隊長のミキストリを目印に、傭兵たちのイコンは続々と集合しつつあった。
すでに、茨ドームはすべて焼け落ち、集結場所近くの危険な燃えかすはイコンによって排除されている。
命令に違わないで放火を楽しんでいる宇留賭羅・ゲブー・喪悲漢と戦神アレスとツェルベルスは、アルヴィトルから連絡を受けたツィルニトラらが回収にむかった。
途中で合流した荒人は最初警戒されたが、隊長と共にいたと言うことで、援軍であると識別コードを発行されて難なきを得ている。
最後に、閃崎静麻のシュツルム・フリューゲHが戻ってきた。
「ちょうどここの反対側にセンチネルが一機擱坐していたが、流れ弾に当たって壊れたらしい。パイロットは脱出した後のようだった」
いちおう、さっき発見したカレーゴーレムのことを報告する。閃崎静麻が放置されたカレーゴーレムを発見したときには、すでに日堂真宵たちは遺跡の中へ避難した後であった。
「壊れたイコンなら問題は無いだろう。パイロットが助かっていたとしても、遺跡の中には入れないはずだ。たとえ入ったとしても、排除すればいい」
そう告げると、隊長は遺跡の壁を調べだした。
「ここか」
遺跡の壁の呪紋を調べていた隊長が、見つけだした魔法陣の上で特殊な順番でサインを描いていった。その指先の軌跡通りに光が走り、まったく同様の巨大な文様がすぐ横の壁に走った。
何もないと思われていた壁面にくっきりと魔法陣が浮かびあがり、次の瞬間、それが二つに割れた。左右にスライドする形で、巨大なハッチが姿を現す。大きさから言って、複数のイコンが同時に出入りできるほどのものだ。
「見つけたぞ。最大の入り口だ。各機、中へ入れ!」
隊長の指示で、イコンが順次遺跡の中へと入っていった。
「ここは……、イコンデッキ!?」
ヴェルリア・アルカトルが周囲を見回して言った。
「確かによく似てはいるが……、広いな」
柊真司が周囲に注意しながら進んで行った。
「見てみて、イコンがたくさん!」
セルファ・オルドリンに教えられて、御凪真人がパラスアテナのアサルトライフルを即座にそちらへとむけた。
「動かないようですね。ここは格納庫でしようか?」
イコンが無人だと分かると、御凪真人がライフルを下ろした。
「ここにあるイコンは無人だ。各機、遺跡内に入ったらイコンを降りろ。ここからは徒歩で探索する」
隊長の指示で、パイロットたちがイコンから降りてきた。
「見たことのない形のイコンなんだもん。たくさんあるけど、これが未知の新型イコン?」
壁のアルコーブに半ば埋まるようにして収納されたイコンを見て、セルファ・オルドリンが言った。前面しか見えないので詳細は分からないが、見た目はセンチネルをスマートにして装飾過多にしたようなイコンだ。
「目的のイコンはこれではない。これは、おまけみたいなものだ。最終目標は、おそらく、この遺跡の中央部分にあると思われる。ここからは、手分けして探すことになるが、第一発見者にはボーナスを出そう」
隊長の言葉に、ドクター・ハデスと宇都宮祥子がおおと声をあげて目を輝かせた。
「だが、すでにこの遺跡はわずかながらも内部機構が起動していると考えられる。防御機能がないとはいえない、いや、必ず抵抗してくるだろう。だが、詳細が分からない以上、破壊は最小限にとどめろ。何かを壊したことによって遺跡その物が爆発でもしたら全滅だ。くれぐれも、行動は慎重に頼む」
チラリとゲブー・オブインの方を見て、隊長が釘を刺した。
「イコンじゃ、この先は行けないの?」
危ないんなら、イコンで行った方がいいんじゃないのかと麻上翼が聞いた。
「あの扉をイコンで通れるならばな。とりあえず、今壁で輝いている魔法陣がハッチ開閉のスイッチとなっている。誰か、あれを指で回す仕種をしてみろ」
隊長に言われて、壁際にいたエクス・シュペルティアが言われた通りに魔法陣をなぞってみた。すると、今入ってきた扉が、再び閉まっていった。
「これで、誰かがついてきていたとしても、簡単には入れない。外の魔法陣の動かし方は複雑だからな」
「詳しすぎるほどに詳しいのだな」
「ああ、クライアントからの情報は完璧だったらしい」
ちょっと皮肉っぽく訊ねる讃岐院顕仁に、隊長がしれっと答えた。
「ここでイコンを見つければ、それを求めて玉霞もやってくるというのですかね」
『可能性はあるでしょう。強奪犯たちも、この場所を調べていたようですから』
ちょっと懐疑的な紫月唯斗のつぶやきに、彼をつつみ込んでいるプラチナム・アイゼンシルトがささやき返した。
だが、そうだとしたら、同じ物に興味を持っているクライアントとは……。わきあがってくる疑問に、紫月唯斗は気を引き締めつつ、あらためて素性の分からない隊長の方を振り返った。
「では時間がもったいない。各自探索に出発しろ。発見の報告と共に、全員でそこへむかえ。回収方法は、発見場所の状態によって決定する。場合によってはイコンの使用もありえるので、準備は怠るな。では、出発!」
指示を与えると、隊長はイコンデッキ奧にある扉の一つにむかった。他の者たちも、いくつかのグループに分かれて、それぞれ見つけた扉に入っていく。この空間が広い分、出入り口は複数あるようであった。
探索隊が出発すると、残された者は少数だった。
「解けー、解きなさいよー」
今だ簀巻きにされたままのシルフィスティ・ロスヴァイセが、床の上をゴロゴロと転がりながら叫んだ。
「おっと」
シュツルム・フリューゲHからこっそりと降りてきた服部保長が、転がってきたシルフィスティ・ロスヴァイセをあわてて避けた。森の中で密かにシュツルム・フリューゲHに拾ってもらい、周囲に複数の未確認イコンがいることを閃崎静麻に報告した後、今度は遺跡内での諜報活動をするために、イコンの中に身を潜めていたのである。
「お願いだから、そこの人、これを解いてー」
これが最後のチャンスとばかり、シルフィスティ・ロスヴァイセが服部保長に懇願した。
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